第68話「虎が、禁書蔵書室を訪ねる」
夜、
図書館は、
昼間とは違う、
静けさに包まれていた。
司書が、
入り口で、
虎たちを待っていた。
司書「こんばんは。禁書蔵書室へは、こちらからです」
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司書に案内されて、
図書館の奥へと、
進んだ。
普段は、
入れない区画らしく、
廊下には、
誰の姿もなかった。
ステラ「……静かですね」
司書「夜間は、一般の利用者は、入れませんから」
しばらく歩くと、
重厚な扉の前に、
出た。
扉には、
複雑な紋様が、
刻まれている。
司書「ここが、禁書蔵書室の入り口です。入室には、いくつか、手続きが必要になります」
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司書が、
懐から、
書類を取り出した。
司書「まず、こちらに、署名をお願いします。閲覧の目的、責任の所在を、明記していただきます」
虎は、
書類に、
目を通した。
虎「面倒な手続きだな」
司書「貴重な記録を、守るためです。過去に、無断で持ち出そうとした人もいたそうで」
虎(そういう理由なら、仕方ないな)
虎は、
慎重に、
署名を済ませた。
ステラとクリスも、
それぞれ、
必要な項目に、
記入していった。
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書類を確認した後、
司書が、
扉の紋様に、
手をかざした。
紋様が、
淡く光り、
重い音を立てて、
扉が開いた。
司書「これで、入室の準備が、整いました。ただし、いくつか、注意事項があります」
虎「聞かせてくれ」
司書「本の持ち出しは、禁止です。閲覧は、この部屋の中でのみ、行ってください。それと」
司書が、
少し声を落とした。
司書「一部の本には、強い魔力が、宿っています。むやみに、触れないよう、お願いします」
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扉の向こうに、
広がっていたのは、
今までの書架とは、
雰囲気の違う空間だった。
薄暗い明かりの中、
古びた本棚が、
静かに並んでいる。
空気そのものが、
どこか、
重かった。
ステラ「……独特な気配がしますね」
クリス「……この感じ、私には、覚えがある」
クリスが、
杖を軽くかざして、
周囲の魔力を、
確かめた。
クリス「宮殿にあった、古い記録と、似た気配を感じる本が、いくつかある」
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司書が、
先導して、
特定の区画へと、
案内した。
司書「月に関する記録は、この辺りに、集められています」
棚には、
古い巻物や、
革表紙の本が、
並んでいた。
虎は、
一冊ずつ、
手に取って、
確認していった。
虎(……古代語だ。だが、読める)
しばらく調べていくと、
一冊の、
特に古びた本に、
目が留まった。
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その本の表紙には、
月を模した紋様と、
何か文字が、
刻まれていた。
虎「……これは」
クリスが、
近づいて、
表紙を確認した。
クリス「……この紋様、私が眠っていた宮殿の、封印の紋様と、よく似ている」
虎は、
慎重に、
その本を、
開いた。
古い文字が、
びっしりと、
書き込まれていた。
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ステラが、
虎の手元を、
覗き込んだ。
ステラ「……何が、書かれていますか」
虎「少し、読ませてくれ」
虎は、
文字を、
一行ずつ、
読み進めていった。
虎「……これは、当時の、地上の人間が、書き残した、記録のようだ」
司書が、
興味深そうに、
聞いた。
司書「地上の人間の、記録、ですか」
虎「ああ。空から、何かが、降りてきたのを、目撃した、という記述がある」
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虎は、
さらに、
読み進めた。
虎「……ある夜、光る球体が、天から、降りてきた。地面が、揺れ、光を放つ、異形のものたちが、そこから現れた、と書いてある」
ステラ「……それが、月文明の、来訪の記録、ということですか」
虎「そう思われる」
クリスが、
静かに、
本を見つめた。
クリス「……私の記憶にも、断片的に、似たような話が、残っている。だが、これほど、詳しい記述は、初めてだ」
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虎は、
さらに、
文字を追った。
虎「……降りてきた場所について、記述がある。だが、地名が、今の呼び方とは、違うようだ」
司書が、
少し考えた。
司書「古い地名なら、対照表があります。明日、確認しましょうか」
虎「頼む」
虎(少しずつ、近づいている気がする)
虎(この記録の先に、何かが、あるはずだ)
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じっくりと、
時間をかけて、
調べ物を続けた後、
夜も、
更けてきた。
司書「今夜は、このあたりで、切り上げましょうか。夜食を、用意させています」
案内された部屋に、
軽食が、
用意されていた。
湯気の立つ、
温かいスープと、
パンだった。
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虎は、
スープを、
一口飲んだ。
虎「……」
野菜と、
香草の香りが、
優しく、
広がった。
夜遅くまで、
根を詰めた体に、
染み渡るような、
穏やかな味だった。
派手さはないが、
心が落ち着く、
そういう味だった。
虎「……うまい。静かな味だな」
司書「夜間の作業をされる方に、いつも、お出ししているものです」
ステラも、
一口飲んだ。
ステラ「……確かに、落ち着く味です」
クリスが、
パンを一口かじりながら、
言った。
クリス「……今日は、いい発見があった。この味も、それにふさわしい」
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食事を終えて、
再び、
古い記録の本を、
確認した。
虎「明日、地名の対照を、進めよう」
司書「はい。私の方でも、資料を、揃えておきます」
ステラが、
本を、
丁寧に、
棚に戻した。
ステラ「……この本の中に、次の手がかりが、あるかもしれませんね」
虎「ああ」
夜の禁書蔵書室に、
静かな明かりが、
灯り続けていた。
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ステラ「次回予告です」
虎「ああ」
ステラ「来訪の記録、見つかりましたね」
虎「地上の人間が、書き残したものだった」
ステラ「地名の対照が、必要ですね」
虎「明日、司書と、確認する」
クリス「……あの記述、私の記憶と、繋がる部分があった」
虎「少しずつ、進んでいる」
ステラ「……おおむね、手応えのある一日でした」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です。次は、もっと、具体的な場所が、わかるといいですね」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、来訪の記録を読み解く』」
虎「地道な作業になりそうだ」
ステラ「はい。楽しみですね」




