第67話「虎が、ワルたちと戦う」
先頭の男が、
拳を鳴らしながら、
名乗った。
先頭の男「俺は、ゴリアス。この庭園を仕切ってる者だ」
虎「虎だ」
ゴリアス「知ってるよ、案内係が、さっき言ってただろ」
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ゴリアスの後ろに立つ、
別のビッグ人が、
腕を組んで言った。
その男は、
妙に芝居がかった口調だった。
詩人風の男「おお、旅の獣よ! 貴様がこの庭園の静寂を乱す者か! 我が名は、バロード! 言葉の刃で、貴様を切り裂いてくれよう!」
虎(……何を言っているんだ、こいつは)
ゴリアスが、
うんざりした顔をした。
ゴリアス「バロード、普通に喋れよ」
バロード「これが、我が流儀だ!」
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もう一人、
落ち着きなく、
辺りを見回している男がいた。
小柄な体格の割に、
声が甲高かった。
神経質な男「お、おい、大丈夫か、これ。相手、なんか、強そうじゃないか」
ゴリアス「ビビるなよ、コソット」
コソット「い、いや、だって……」
コソットが、
虎の様子を、
不安げに、
何度も確認していた。
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最後の一人は、
何も言わずに、
腕を組んで立っていた。
無口な男「……」
ゴリアス「こいつは、ドムラ。喋らないが、四人の中で、一番の力自慢だ」
ドムラが、
軽く拳を握って、
虎に見せつけた。
虎(面白い連中が、揃っているな)
虎(それぞれ、癖はあるが、動きが、噛み合っていない)
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ゴリアスが、
腕を振り上げた。
ゴリアス「四対一だ。庭園を汚す前に、大人しく退散しな」
虎「四対三の間違いだろ」
ステラとクリスが、
虎の両脇に、
並んだ。
ステラ「私たちも、いますので」
クリス「……久しぶりに、体を動かせそうだ」
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虎は、
ステラに、
小さく声をかけた。
虎「合体モードだ」
ステラ「はい」
魔力鎖が、
光の粒から現れて、
ステラの腰と、
虎の背を、
繋いだ。
ドムラが、
それを見て、
初めて口を開いた。
ドムラ「……面白い」
その一言だけで、
先に、
突っ込んできた。
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ドムラの拳が、
虎に向かって、
振り下ろされた。
虎は、
それを片手で受け止めた。
虎(力は強い。だが、単調だ)
ステラが、
虎の背から、
魔力を細く走らせて、
ドムラの足元に、
絡みつかせた。
ステラ「動きを、制限します」
ドムラ「……くっ」
虎は、
その隙に、
ドムラを、
軽く弾き飛ばした。
ドムラが、
庭園の端まで、
吹き飛んで、
倒れ込んだ。
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バロードが、
それを見て、
声を張り上げた。
バロード「おのれ! 仲間の仇! 我が言葉の刃、受けてみよ!」
バロードが、
両手を大きく広げて、
突進してきた。
だが、
その動きは、
派手なだけで、
軌道が読みやすかった。
虎は、
軽く身をかわして、
すれ違いざまに、
腕を掴んだ。
虎「言葉より、動きに、無駄が多いな」
バロード「な、なんだと!」
虎は、
そのまま、
バロードを、
近くの茂みに、
投げ飛ばした。
バロード「……ぐわあっ」
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コソットが、
それを見て、
後退りした。
コソット「……お、俺は、いいです。降参、降参で」
ゴリアス「情けねえこと言うな、コソット!」
ゴリアスが、
コソットの背中を、
押し出した。
コソット「ちょ、待って!」
コソットが、
慌てて、
虎に向かって、
拳を振った。
だが、
その動きは、
明らかに、
及び腰だった。
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クリスが、
軽やかな動きで、
コソットの懐に入り込んだ。
クリス「……そんなに、戦いたくないなら」
クリスが、
軽くコソットの体を、
押した。
コソットが、
バランスを崩して、
近くの本棚に、
倒れ込んだ。
そこは、
先ほど図書館に戻る途中、
持ち込まれていた、
『入れる本』の展示コーナーだった。
コソット「うわっ、な、何だここ……」
コソットの体が、
淡く光る本の表紙に、
触れた瞬間、
光に包まれて、
消えていった。
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ステラが、
少し驚いた顔をした。
ステラ「……本の中に、入りましたね」
虎「怪我はしないんだろう」
クリス「ああ、安全な仕組みだ。しばらくすれば、戻ってくる」
ゴリアスが、
それを見て、
舌打ちした。
ゴリアス「くそ、コソットまで……」
残っているのは、
ゴリアスだけだった。
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ゴリアスが、
拳を構えた。
ゴリアス「……一人になっても、俺は、退かねえ」
虎「そうか」
虎は、
一歩、
前に出た。
ゴリアスが、
渾身の力で、
拳を振るった。
虎は、
それを、
真正面から受け止めた。
どごん。
衝撃が、
庭園に、
響いた。
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虎(体の頑丈さ修行の成果、まだ生きているな)
虎は、
ゴリアスの腕を、
掴んで、
そのまま、
地面に、
押さえつけた。
ゴリアス「……くっ、動けねえ」
虎「終わりだ」
ゴリアスが、
しばらく、
もがいていたが、
やがて、
力を抜いた。
ゴリアス「……参った」
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騒ぎを聞きつけて、
図書館の警備員たちが、
駆けつけてきた。
先ほどの案内係も、
慌てて、
戻ってきた。
案内係「大丈夫か!」
虎「問題ない」
警備員が、
倒れているドムラと、
バロードを、
確認した。
警備員「……こいつら、また、絡んでたのか」
しばらくして、
コソットが入った本から、
光と共に、
コソットが、
戻ってきた。
コソット「……あれ、俺、戦ってなかったっけ」
案内係「戦って、負けたんだよ」
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戦いが落ち着いた後、
案内係が、
ほっとした様子で言った。
案内係「本当に、助かったよ。あいつら、いつも、庭園の客に絡んでてな」
虎「そうか」
案内係「お礼と言っちゃなんだが、休憩スペースで、何か食べていってくれ」
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再び、
先ほどのカフェスペースに、
案内された。
今度は、
店員が、
新しいメニューを、
持ってきた。
ステラ「セコイアの木の下で採れる、キノコのスープだそうです」
運ばれてきたのは、
濃厚な白いスープだった。
虎は一口飲んだ。
虎「……」
キノコの旨みが、
凝縮されていて、
飲むごとに、
体の奥に、
染み渡っていった。
戦いの後の体に、
ちょうどいい、
滋味深い味だった。
虎「……うまい。体を使った後は、こういう味が、ありがたいな」
ステラも一口飲んだ。
ステラ「……確かに、温かみのある味です」
クリスが、
スープを飲みながら、
静かに言った。
クリス「……久しぶりに、動いたが、悪くなかった」
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食事を終える頃、
図書館の司書が、
息を切らして、
やってきた。
司書「大変です、聞きました! ワルたちを、退治してくださったそうで」
虎「たまたま、絡まれただけだ」
司書が、
少し嬉しそうな顔をした。
司書「実は、そのお礼も兼ねて、報告があります。禁書蔵書室の入室許可が、下りました」
虎(……ついに、か)
虎「本当か」
司書「はい。今夜からでも、ご案内できます」
ステラが、
虎を見た。
ステラ「虎様」
虎「行くぞ」
夕暮れの庭園に、
セコイアの木が、
静かに、
影を伸ばしていた。
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ステラ「次回予告です」
虎「ああ」
ステラ「ワルたち、個性的でしたね」
虎「バロードの喋り方は、印象的だった」
ステラ「コソットさん、本の中から戻ってきましたね」
虎「無事だったなら、それでいい」
クリス「……禁書蔵書室、いよいよだな」
虎「そうだ」
ステラ「許可が、下りましたね」
虎「これで、月文明の手がかりに、近づける」
ステラ「……おおむね、順調な展開です」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、禁書蔵書室を訪ねる』」
虎「夜の図書館か」
ステラ「はい。楽しみですね」




