第65話「虎が、図書館を訪ねる」
翌朝、
虎たちは、
ビッグビッグライブラリーへ向かった。
近づくにつれて、
その大きさが、
はっきりとわかってきた。
塔のような建物が、
何棟も連なっていて、
一つの街のようだった。
入り口で、
案内係のビッグ人が、
出迎えてくれた。
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案内係「ビッグビッグライブラリー! ビッグビッグシティーの図書館だから、ビッグビッグライブラリー! さ!」
虎「そのままの名前だな」
案内係「わかりやすいだろ!」
案内係が、
胸を張った。
案内係「ビッグビッグライブラリーは、世界最大サイズ! ギネスに挑戦してるんだ」
ステラ「……ギネス、ですか」
案内係「世界一を、記録に残す仕組みでね。毎年、蔵書数が更新されるたびに、記録が塗り替わってるのさ」
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建物の中に入ると、
天井が見えないほど、
高く広がっていた。
無数の本棚が、
何層にも重なっている。
だが、
よく見ると、
本の大きさが、
一様ではなかった。
巨大な本もあれば、
普通サイズの本も、
混ざっていた。
ステラ「……本の大きさが、まちまちですね」
案内係「そう、そこがポイントだ!」
案内係が、
声を張った。
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案内係「ビッグビッグライブラリーといっても、本が全部大きいわけじゃないのねぇ……」
虎「なぜだ」
案内係「本を書いたのが、ビッグ人とは限らないからさ。ノーマルサイズの著者の本は、ノーマルサイズのまま、保管されてる。逆に、ビッグ人の著者の本は、それなりの大きさになる」
虎(なるほど。理にかなっている)
クリスが、
本棚を、
見渡しながら言った。
クリス「……この規模の蔵書、月文明の記録も、どこかに眠っているかもしれない」
虎「探すのは、骨が折れそうだな」
案内係「安心しな、司書のお姉さんが、案内してくれるはずだ」
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しばらく歩くと、
受付らしき場所に、
一人の女性が座っていた。
ノーマルサイズの、
落ち着いた雰囲気の司書だった。
司書「いらっしゃいませ。何をお探しですか」
ステラが、
説明した。
ステラ「月文明について、書かれた記録を、探しています」
司書「……月文明、ですか」
司書が、
少し驚いた顔をした。
司書「それは、かなり古い、専門的な分野です。一般の書架には、ほとんどないと思います」
虎「詳しく調べられる場所は」
司書「地下に、禁書蔵書室があります。貴重な記録や、危険な内容を含む本は、そちらに保管されています。ただ、あそこは、正式な許可がないと、入れません」
虎(すぐには、無理か)
虎(とりあえず、できることから始めよう)
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司書が、
話を続けた。
司書「まずは、一般の書架を、ご案内しましょう。実は、この図書館には、もう一つ、面白い仕組みがあるんです」
虎「面白い仕組み」
司書が、
一冊の本を、
棚から取り出した。
表紙が、
淡く光っている。
司書「これは、『入れる本』と呼ばれるものです。読むと、物語の世界に、実際に入り込むことができます」
ステラ「……本の中に、入る」
司書「はい。この図書館の、大きな観光名物の一つです。普通の書架にも、こういう本が、たくさん混ざっています」
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クリスが、
興味深そうに、
その本を、
覗き込んだ。
クリス「……不思議な魔力を、帯びているな」
司書「ええ。安全に管理された、特殊な魔法がかけられています。危険はありません」
司書が、
続けて説明した。
司書「面白いのは、その世界の食べ物を、持ち帰ることができることです。ただし」
虎「ただし?」
司書「時間が経つと、消えてしまいます。それに、栄養価は、ほとんどありません。でも、味だけは、本物です」
ステラ「……不思議な仕組みですね」
司書「街の名物グルメの一つになっているんですよ。この図書館に来たら、一度は、体験してみる価値があります」
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虎(面白そうだ)
虎(月文明の手がかりも探したいが、これも試してみたいな)
虎「今度、試してみたい」
司書「ええ、ぜひ。今日は、まず、月文明に関する、一般公開されている資料から、確認してみましょう」
司書が、
先導して、
歩き出した。
虎たちは、
その後を、
ついていった。
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一般の書架の中で、
古い時代の、
天文学に関する本を、
何冊か見つけた。
ステラが、
一冊を開いて、
確認した。
ステラ「……月に関する記述はありますが、月文明そのものについては、書かれていませんね」
虎「そうか」
司書が、
申し訳なさそうに言った。
司書「やはり、地下の禁書蔵書室に、専門的な記録が、あるかもしれません。もしよろしければ、許可申請の、手続きを進めましょうか」
虎「頼む」
司書「わかりました。数日、時間がかかるかもしれませんが、しっかり進めておきます」
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昼過ぎ、
司書に礼を言って、
一旦、
外に出た。
図書館の近くに、
軽食を出す屋台が、
並んでいた。
ステラが、
その一つを、
見つけた。
ステラ「あれは」
屋台の看板に、
『本の世界の味、体験できます』
と書かれていた。
店主が、
淡く光る、
紫色の果実を、
見せてくれた。
店主「昨日、お客さんが持ち帰った、童話の世界の毒リンゴだよ。まだ、少し時間があるから、食べられる」
ステラ「……毒、なのですか」
店主「見た目だけさ。物語の設定上、そう呼ばれてるだけで、実際には、何の害もない。この図書館の食べ物は、全部、安全なものしか、持ち帰れない決まりになってる」
虎は一口かじった。
虎「……」
普通のリンゴよりも、
甘みが、
際立って強かった。
噛むと、
シャクシャクとした食感の奥に、
どこか背徳的な、
妖しい甘さが、
広がっていく。
紫色の果肉は、
見た目通りの、
少し危うい魅力を、
味にも纏わせていた。
虎「……不思議な味だ。うまいが、少し、癖になりそうな甘さだな」
店主「その通り。だから、街の連中は、これを、デザート感覚で、楽しんでるんだ」
ステラも一口食べた。
ステラ「……確かに、妖しい甘さです」
クリスが、
興味深そうに、
かじった。
クリス「……こういう食べ物も、あるのか。面白い」
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夕方、
宿に戻る道すがら、
虎は、
図書館を振り返った。
虎(月文明の手がかりは、地下にありそうだ)
虎(許可が下りるまで、少し、この街を楽しむのもいいかもしれない)
ステラが、
虎の隣で言った。
ステラ「虎様、屋上に、大きな庭園があるそうです」
虎「庭園」
ステラ「明日、行ってみますか」
虎「ああ」
夜の街に、
図書館の灯りが、
また、
静かに輝いていた。
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ステラ「次回予告です」
虎「ああ」
ステラ「図書館、想像以上の規模でしたね」
虎「本が全部大きいわけじゃない、というのも、面白かった」
ステラ「本の世界に入れる仕組み、興味深いです」
虎「持ち帰った味も、悪くなかった」
クリス「……禁書蔵書室の許可、早く下りるといいが」
虎「司書が、進めてくれている」
ステラ「明日は、屋上庭園ですね」
虎「屋上も世界最大級らしい」
ステラ「……おおむね、楽しみな予定です」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、屋上庭園を歩く』」
虎「世界最大の庭園、か」
ステラ「はい。楽しみですね」




