第64話「虎が、大都市へ入る」
街道の先に、
巨大な門が見えてきた。
門の上に、
大きな看板が掲げられている。
『ようこそ、ビッグビッグシティーへ』
ステラが、
自転車を漕ぎながら、
その大きさに、
目を見張った。
ステラ「……門だけで、これほどの大きさとは」
虎「シーアリスよりも、さらに一回り、大きいな」
門の脇に、
ビッグ人の案内係が、
立っていた。
大きな声で、
虎たちに向かって、
呼びかけてきた。
……………………………………………………………………………………………
案内係「ようこそビッグビッグシティーへ! この街はサイズも大きければ、人としての器も大きい! 気も大きいのが玉に瑕だけどね……」
虎「気が大きい、とは」
案内係「まあ、来ればわかるさ! うちの街の連中は、みんな豪快でね。細かいことは、気にしないんだ!」
案内係が、
大声で笑った。
その笑い声だけで、
少し、
地面が震えた気がした。
虎(賑やかな街だな)
虎(それに、この街の空気、悪くない)
……………………………………………………………………………………………
門をくぐると、
街の全貌が、
見えてきた。
シーアリスと同じように、
低層と高層が、
組み合わさった建物が並んでいる。
だが、
その規模が、
比べ物にならないほど、
大きかった。
大通りには、
巨大な噴水があり、
その水しぶきが、
街全体に、
うっすらと霧のようにかかっていた。
ステラ「……街全体が、一つの生き物のようですね」
クリス「活気が、すごいな」
……………………………………………………………………………………………
歩いていると、
すぐに、
街の住民たちの、
豪快さがわかった。
一人のビッグ人の商人が、
虎たちを見て、
声をかけてきた。
商人「おお、旅人か! 珍しいもんが並んでるな! まあいい、これ全部、持っていきな!」
商人が、
店先の果物を、
両手いっぱいに、
差し出してきた。
虎「……いいのか、こんなに」
商人「気にすんな! うちは、そういう店なんだ!」
ステラが、
少し戸惑いながら言った。
ステラ「……本当に、気前がいいですね」
……………………………………………………………………………………………
別の場所では、
道端で、
二人のビッグ人が、
言い争っているように見えた。
だが、
よく聞くと、
何でもない世間話を、
大声で、
交わしているだけだった。
住民A「昨日の飯、うまかったよなぁ!!」
住民B「だろ! あの店、当たりだぜ!!」
虎(喧嘩かと思ったが、違うのか)
虎(声の大きさが、感情の大きさに、比例しているんだろう)
……………………………………………………………………………………………
昼過ぎ、
大通りの中心にある、
食堂に入った。
店主が、
巨大な鉄板の上で、
豪快に、
肉を焼いていた。
店主「腹が減ってるなら、これ食え! うちの名物、ビッグステーキだ!」
分厚い肉の塊が、
虎たちの前に置かれた。
一枚が、
テーブルの半分ほどを、
占めていた。
虎は一口食べた。
虎「……」
肉の繊維が、
太く、
噛むほどに、
力強い旨みが溢れ出てきた。
味付けは、
豪快なタレだったが、
甘みと塩気のバランスが、
しっかり取れている。
一口食べるごとに、
体の中に、
力が満ちていくような感覚があった。
虎「……うまい。この街の飯は、豪快だな」
店主「だろ! 小さくまとまってちゃ、この街じゃやってけないんだよ!」
ステラも一口食べた。
ステラ「……確かに、豪快な味です」
クリスが、
肉を噛みながら、
感心したように言った。
クリス「……この街の食べ物、量も味も、性格が出ているな」
……………………………………………………………………………………………
食事の後、
店主が、
街の中心部を、
指差した。
店主「あそこに、見えるだろ。あれが、この街の自慢だ」
虎が、
その方向を見ると、
遠くに、
一際大きな建物が、
そびえ立っていた。
石造りの、
巨大な塔のような建物だった。
店主「ビッグビッグライブラリー。世界最大の図書館だ。あそこには、世界中の記録が、集まってるって話だぜ」
虎(あれが、目指していた場所か)
虎(思ったより、街の中心にある)
ステラが、
その建物を、
見つめながら言った。
ステラ「……あれが、月文明の手がかりを、探す場所ですね」
虎「ああ」
クリスが、
杖を、
その方向に向けた。
クリス「……何か、感じる。あの建物の中に、確かに、古いものの気配がある」
……………………………………………………………………………………………
夕方、
宿を取って、
一日の疲れを、
落ち着けることにした。
窓から、
ビッグビッグライブラリーの、
灯りが見えた。
夜になっても、
明かりが消えることのない、
巨大な建物だった。
ステラ「虎様」
虎「何だ」
ステラ「いよいよ、明日ですね」
虎「ああ」
虎(一万年前には、こんな場所を、想像もしなかった)
虎(あの中に、俺たちが探しているものが、あるといいが)
夜風が、
街の喧騒を、
運んでいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ステラ「次回予告です」
虎「ああ」
ステラ「ビッグビッグシティー、賑やかな街でしたね」
虎「気前もいいし、声も大きい」
ステラ「肉料理も、豪快でした」
虎「体に力が満ちる味だった」
クリス「明日は、いよいよ図書館だな」
虎「そうだ」
ステラ「……おおむね、期待通りの規模でした、この街」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です。中身は、まだこれからですが」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、図書館を訪ねる』」
虎「世界最大の図書館、か」
ステラ「はい。何が見つかるでしょうか」
虎「行ってみればわかる」




