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虎無双、虎無双。  作者: BB
5章

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63/112

第63話「虎が、カフェを発つ」

翌朝、

畑に、

人が集まり始めていた。


近隣の農家や、

街道を通りかかる旅人たちが、

少しずつ、

カフェの周りに、

集まってきている。


ミラ「収穫祭を、開くことにしたの。畑が守れたお祝いに」

虎「賑やかになりそうだな」


…………………………………………………………………………………………………


ゴードンが、

巨大な鍋を、

外に運び出していた。


ゴードン「今日は、朝から仕込みだ。手伝ってくれると助かる」

虎「任せろ」


虎は、

薪割りを引き受けて、

次々と、

鍋の下に、

火を起こしていった。


ステラは、

ミラと一緒に、

野菜の下ごしらえを、

手伝っていた。


ステラ「……この人参は、どう切りますか」

ミラ「乱切りでいいわ。煮込むと、どうせ角が丸くなるから」


ステラが、

包丁を動かしながら言った。


ステラ「昨日、教えていただいた切り方、実践してみます」

ミラ「あら、覚えてくれたのね」


…………………………………………………………………………………………………


クリスは、

祠のそばに植え替えた、

青白い植物の様子を、

確認しに行っていた。


戻ってきて、

虎に報告した。


クリス「……根付いたようだ。葉の色艶が、昨日より、良くなっている」

虎「そうか」

クリス「あの場所なら、これからも、月の気配を、うまく吸収できるだろう」


虎(一つ、心配事が片付いたな)


虎(畑も、あの植物も、これで落ち着くだろう)


…………………………………………………………………………………………………


昼過ぎ、

準備が整い、

収穫祭が、

始まった。


畑で採れた野菜が、

様々な料理になって、

テーブルに並んでいく。


近隣の農家の一人が、

虎に話しかけてきた。


農家「あんたたちが、あのネズミの件を、解決してくれたんだってな。噂で聞いたよ」

虎「たまたま、興味を持っただけだ」

農家「たまたまで、あそこまでやるもんかね」


農家が、

笑いながら、

杯を差し出した。


農家「まあ、一杯どうだ。祝いの席だ」


…………………………………………………………………………………………………


祭りの中心で、

ゴードンが、

大鍋から、

シチューを、

振る舞っていた。


野菜がごろごろと入った、

具沢山のシチューだった。


虎は一口食べた。


虎「……」


昨夜のスープとは、

また違う味わいだった。

じっくり煮込まれたことで、

野菜同士の甘みが、

一つに溶け合っている。

人参の角が、

ステラの言った通りに、

丸く柔らかくなっていて、

口の中で、

ほろりとほどけた。


虎「……うまい。昨日とは、また違ううまさだ」

ゴードン「祭りの日の飯は、格別だからな」


ステラも、

一口食べた。


ステラ「……野菜の甘みが、より、深くなっていますね」

ミラ「大人数で作ると、なぜか、味も豊かになる気がするのよね」


…………………………………………………………………………………………………


祭りが進むにつれて、

畑の作物を使った、

様々な料理が、

次々と振る舞われた。


トウモロコシを焼いたもの、

豆を煮込んだもの、

野菜たっぷりのパン。


クリスが、

焼きトウモロコシを、

かじりながら言った。


クリス「……この街道沿いの豊かさ、悪くない」

虎「そうだな」


子供たちが、

畑の周りを、

走り回っていた。


その様子を見ながら、

ミラが、

虎に言った。


ミラ「本当に、助かったわ。あなたたちが来てくれなかったら、今頃、畑は、めちゃくちゃだったでしょうね」

虎「たまたま、通りかかっただけだ」

ミラ「たまたまでも、感謝の気持ちは、変わらないわ」


…………………………………………………………………………………………………


夕方、

祭りが落ち着いた頃、

ゴードンが、

虎たちの元に来た。


ゴードン「そろそろ、旅立つのか」

虎「ああ。ビッグビッグシティーへ向かう」

ゴードン「あそこまでは、まだ、少し距離がある。焼いた保存食を、持たせるから、持っていってくれ」


ミラが、

布に包んだ、

何かを渡してきた。


ミラ「野菜パンよ。日持ちするように、焼いてあるから」

ステラ「ありがとうございます」


…………………………………………………………………………………………………


自転車の点検を、

最後にしてもらった。


ゴードンが、

タイヤの空気圧を、

確認しながら言った。


ゴードン「バルブも、ミルの部品も、これで、当分は大丈夫だろう」

ステラ「本当に、色々と、ありがとうございました」


虎が、

ゴードンに、

手を差し出した。


虎「世話になった」

ゴードン「こちらこそだ。あんたたちのおかげで、いい経験をさせてもらった」


クリスが、

祠の方角を見た。


クリス「あの植物、たまに、様子を見てやってくれ」

ゴードン「もちろんだ。月の気配を、大事にする植物ってのも、面白いからな」


…………………………………………………………………………………………………


街道に出ると、

夕日が、

田園風景を、

オレンジ色に染めていた。


ステラとクリスが、

自転車にまたがった。


ステラ「今度は、ふらつかずに、乗れそうです」

クリス「……少しは、上達した気がする」


虎は、

二人の横を、

ゆっくりと走り出した。


ゴードンとミラが、

カフェの前で、

見送っていた。


ミラ「気をつけてね!」

ゴードン「また、いつでも、寄っていってくれ!」


虎「ああ」


夕日の中、

三人の影が、

街道の先へと、

伸びていった。


…………………………………………………………………………………………………


虎(この道沿いにも、いい出会いがあった)


虎(一万年前には、こういう小さな街の営みに、目を向けることもなかった)


虎(今は、それが、面白い)


ステラが、

ペダルを漕ぎながら、

虎に言った。


ステラ「虎様、ビッグビッグシティーまで、どのくらいでしょうか」

虎「まだ、何日かはかかるだろうな」

ステラ「……楽しみです」

虎「そうだな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「カフェ、いい滞在でしたね」

虎「バルブの修理から、ここまで来るとは、思わなかった」

ステラ「ミラさんの野菜料理、忘れられません」

虎「収穫祭のシチューも、格別だった」

クリス「……あの月の植物、これからも、うまく育つといいが」

虎「ゴードンが、見てくれるだろう」

ステラ「街道も、まだ続きますね」

虎「ビッグビッグシティーまで、もう少しだ」

ステラ「……おおむね、順調な旅路です」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です。次は、いよいよ、大都市ですね」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、大都市へ入る』」

虎「世界最大級の図書館が、待っている」

ステラ「はい。楽しみですね」

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