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虎無双、虎無双。  作者: BB
5章

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61/112

第61話「虎が、コーヒーミルを直す」

朝、

カフェの奥にある作業場に、

案内された。


そこに、

二台の巨大なコーヒーミルが、

並んで置かれていた。


ゴードン「片方は、長年使ってきた古いミル。もう片方は、この間、新しく買ったばかりのやつだ」

虎「両方、調子が悪いのか」

ゴードン「そうなんだ。古い方は、時々、豆が詰まって、うまく挽けない。新しい方は、まだ一度も、うまく使えたことがなくてな」


ステラが、

古い方のミルを、

覗き込んだ。


ステラ「……確かに、動きが、少しぎこちないですね」

ゴードン「豆を入れると、途中で止まっちまうんだ。無理に回すと、変な音がする」


虎(機械の修理は、初めてだな)


虎(だが、面白そうだ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


まず、

古いミルから、

取り掛かることになった。


ゴードンが、

外側のカバーを、

外していく。


大きな歯車が、

中に、

何段も重なっていた。


ゴードン「見てくれ、この歯車」


一つの歯車の、

歯の一部が、

欠けていた。


虎「ここが、原因か」

ゴードン「そうだ。長年使ってると、こういう摩耗が出てくる。交換用の部品はあるんだが、俺一人じゃ、取り外すのに、手こずっていてな」


虎「力仕事なら、任せろ」


虎は、

歯車の周りの、

固定具に手をかけた。


虎(結構、固いな)


虎(だが、これぐらいなら)


虎は、

慎重に力を込めて、

固定具を緩めた。


ゴードンが、

目を丸くした。


ゴードン「……速いな。俺が一人でやると、半日かかる作業だぞ」

虎「そうか」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


歯車を、

取り外すと、

ゴードンが、

交換用の新しい歯車を、

持ってきた。


ゴードン「これに、付け替える」


虎が、

古い歯車を外している間、

ステラが、

内部の掃除を、

手伝っていた。


ステラ「……細かい部品が、多いですね」

ゴードン「ああ。だが、丁寧に扱えば、長持ちするもんだ」


クリスが、

歯車の動きを、

じっと観察していた。


クリス「……この機構、悪くない設計だ」

ゴードン「そうか?」

クリス「歯車の噛み合わせが、無駄なく、力を伝えている。作った人間は、腕がいい」


ゴードンが、

少し嬉しそうな顔をした。


ゴードン「実は、俺が、若い頃に作ったんだ。この街で、独学で覚えた技術だ」

虎「お前が作ったのか」

ゴードン「ああ。ミラと結婚する前からの、俺の相棒だ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


新しい歯車を、

組み込んで、

カバーを戻した。


ゴードンが、

豆を入れて、

試しに回してみた。


がりがり、

という音とともに、

豆が、

綺麗に挽かれていった。


ゴードン「……おお、直った!」

ステラ「よかったですね」

ゴードン「本当に助かった。ありがとう」


虎(一つ目は、これで終わりだな)


虎「次は、新しい方だな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


新しいミルを、

確認した。


ゴードンが、

豆を入れて、

回してみせた。


だが、

豆が、

うまく挽かれずに、

そのまま下から、

こぼれ落ちた。


ゴードン「見ての通りだ。全然、粉になってくれない」


ステラが、

ミルの側面を、

確認した。


ステラ「……この、大きさを調整する部分は、どうなっていますか」

ゴードン「ここに、挽く粗さを決める、ネジがあるんだが……買った時のまま、いじってはいないな」


虎が、

その部分を、

覗き込んだ。


……これは


虎「開ききっているな」


クリスが、

近づいて、

確認した。


クリス「……確かに。挽く隙間が、最大まで開いている。これじゃ、豆が、ほとんど潰れずに、通り抜けてしまう」


ゴードンが、

頭を掻いた。


ゴードン「……そうか、新品だから、初期設定が、緩いままだったのか」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


虎が、

調整用のネジを、

締めようとした。


だが、

少し動かしただけで、

ネジが、

固く止まってしまった。


虎「……これだけじゃ、足りないな」


クリスが、

ミル全体を、

見渡した。


クリス「……一度、全部、バラした方がいいかもしれない」

ゴードン「全部か」

クリス「組み立ての段階で、締め付けが、均等じゃなかった可能性がある。個別に調整するより、一度、全体を分解して、締め直した方が早い」


虎「わかった。やってみよう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


三人で、

ミルを、

丁寧に分解していった。


一つ一つの部品を、

ステラが並べて、

順番と向きを記録していく。


ステラ「……この配置、覚えておかないと、戻せなくなりますね」

虎「確かにそうだな」


クリスが、

内部の構造を、

確認しながら言った。


クリス「……ここの締め付けが、緩い。ここも、そうだ」

虎「一つずつ、締め直すか」


虎が、

力を込めて、

一つ一つのボルトを、

確実に締めていった。


ゴードンが、

それを見て、

感心した顔をした。


ゴードン「……そんなに、丁寧に締められるもんなのか」

虎「加減を、間違えなければいい」


しばらく作業を続けて、

すべての部品を、

締め直し終えた。


ステラが、

記録通りに、

部品を、

組み立て直していく。


ステラ「……最後の一つです」


全ての部品が、

元の位置に、

戻った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ゴードンが、

豆を入れて、

再び回してみた。


がりがり、

という音がして、

今度は、

きれいな粉が、

下から出てきた。


ゴードン「……おおっ!」

ステラ「うまくいきましたね」

ゴードン「ああ、本当に! ありがとう、みんな!」


虎(面白い作業だった)


虎(体を使うだけじゃなく、頭も使う。悪くない)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


修理が終わった後、

ミラが、

できたての粉で、

コーヒーを淹れてくれた。


新しいミルで挽いた豆と、

直した古いミルで挽いた豆、

両方を、

並べて出してくれた。


虎は、

まず、

古いミルの方を飲んだ。


虎「……」


いつもの、

深みのある味だった。

だが、

歯車が直ったせいか、

豆の粒がより均一になり、

雑味のない、

すっきりとした後味になっていた。


虎「……昨日より、飲みやすいな」

ミラ「あら、本当に。歯車を直しただけで、味まで変わるものなのね」


次に、

新しいミルの方を、

飲んだ。


虎「……」


こちらは、

より繊細な香りが立っていた。

挽き加減が、

ちょうど良く調整されたことで、

豆本来の、

軽やかな風味が、

はっきりと感じられる。


虎「……これも、うまい。全然、違う味だ」

ステラ「ミルの調整で、こんなに味が変わるとは、驚きです」


クリスも、

両方飲み比べて、

頷いた。


クリス「……道具を整えることの大切さが、よくわかる」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


食後、

ゴードンが、

虎たちに言った。


ゴードン「本当に助かった。お礼に、今夜、泊まっていってくれ」

虎「ありがたい」

ミラ「ゆっくりしていってね」


夕方になり、

畑の方から、

ミラが、

少し困った顔で、

戻ってきた。


ミラ「……また、やられたわ」

ゴードン「ネズミか」

ミラ「ええ。今度は、トマトの列が、ひどく荒らされて」


虎(今日の修理は、片付いた)


虎(次は、あのネズミの件だな)


虎「明日、その畑を、詳しく見せてくれ」

ミラ「……本当に、いいの?」

虎「気になっていた」


夜の風が、

畑を、

静かに揺らしていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「コーヒーミル、二台とも、直りましたね」

虎「歯車と、締め付け。原因は、違っていた」

ステラ「味の違いも、はっきりわかりました」

虎「道具は、大事なんだな」

クリス「……明日は、いよいよ、ネズミの調査だな」

虎「そうだ」

ステラ「畑のトマトが、また、やられたようです」

虎「今度こそ、原因を突き止める」

ステラ「……おおむね、簡単には終わらなそうです」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です。相手は、なかなか賢いネズミのようですから」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、ネズミを追う』」

虎「楽しみだ」

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