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虎無双、虎無双。  作者: BB
5章

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59/112

第59話「虎が、ガロンを救う」

ガロンが、

目を覚ましたのは、

翌朝だった。


宿の一室に、

簡易的な治療施設が、

用意されていた。


ガロンが、

うっすらと目を開けた。


ガロン「……ここは」

虎「宿だ。お前が暴走した後、ここに運んだ」


ガロンが、

上体を起こそうとして、

顔をしかめた。


ガロン「……体が、重い」

クリス「無理に動くな。魔力の暴走の後遺症が、まだ残っている」


ガロンは、

しばらく、

天井を見上げていた。


ガロン「……街は」

虎「一部、壊れた。だが、住民に、けが人はいない」

ガロン「……そうか」


ガロンが、

両手で顔を覆った。


ガロン「……俺は、街を、壊すところだった」

虎「壊すところだった、だ。実際には、止まった」


ステラが、

静かに言った。


ステラ「ガロンさん。あなたのせいではありません。装置に頼らせたのは、あなた自身の焦りかもしれませんが、その焦りは、誰にでもあるものです」


ガロンは、

しばらく黙っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


クリスが、

装置の残骸を、

持ってきていた。


暴走の際に、

ガロンの体から外れて、

壊れたものだった。


クリス「……この装置、少し調べさせてもらった」

虎「何かわかったか」

クリス「……月文明の技術が、使われている」


虎「……本当か」


クリスの目が、

真剣な光を帯びた。


クリス「解析した部品の一部に、私が眠っていた宮殿と、同じ紋様が刻まれていた。誰かが、月文明の遺物を元に、この違法な強化装置を作ったんだろう」


虎(月文明、こんなところにも繋がっているのか)


虎(世界のあちこちに、その痕跡が、散らばっているんだろうな)


ガロンが、

驚いた顔をした。


ガロン「……そんな古い技術が、あの装置に使われていたのか」

クリス「そうらしい。この装置を作った人物を辿れば、月文明のさらなる痕跡が、見つかるかもしれない」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


数日後、

ガロンの体調は、

すっかり回復していた。


街の広場では、

騒動の後片付けが終わり、

復興を祝う縁日が、

開かれていた。


ガロンが、

虎たちを、

その縁日に誘った。


ガロン「街のみんなが、開いてくれたんだ。今回のことへの、お詫びと、感謝を込めて」


広場には、

たくさんの屋台が、

並んでいた。


ビッグ人向けの屋台と、

ノーマル向けの屋台が、

互い違いに立っている。


ステラ「賑やかですね」

虎「そうだな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一軒の屋台から、

湯気が立ち上っていた。


看板に、

『ビッグ玉こんにゃく』

と書かれている。


店主が、

巨大な串に刺さった、

丸いこんにゃくを、

出してくれた。


一つが、

虎の拳ほどの大きさだった。


虎は一口かじった。


虎「……」


味噌だれが、

こんにゃくにしっかり染み込んでいる。

弾力のある食感で、

噛むたびに、

甘辛い味が、

口いっぱいに広がった。

熱々の湯気が、

体の中を、

じんわりと温めていく。


虎「……うまい。縁日の味だな」

ステラ「素朴で、いいですね」


ガロンが、

別の屋台を指差した。


ガロン「あっちも、うまいぞ」


そこには、

『ビッグ焼き鳥』

の看板があった。


店主が、

太い串に刺した、

巨大な肉の塊を、

炭火で焼いていた。


一本が、

虎の前腕ほどの長さがある。


虎は、

一本受け取って、

かじった。


虎「……」


炭火の香ばしさが、

肉全体に、

染み渡っていた。

噛むごとに、

肉汁が溢れ出て、

濃厚な旨みが広がる。

甘辛いタレが、

その旨みを、

さらに引き立てていた。


虎「……これも、うまいな」

ガロン「だろ。この街の縁日は、飯がいいんだ」


クリスも、

一本かじった。


クリス「……力強い味だ。街の復興の、活気を感じる」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


広場の一角では、

子供たちが、

輪投げに興じていた。


ノーマルサイズの子供が、

小さな輪を投げ、

ビッグ人の子供が、

大きな輪を投げている。


子供A「やった、入った!」

子供B「僕も、やってみる!」


その隣で、

子供たちが、

かき氷を食べ比べていた。


子供C「これ、いちご味!」

子供D「僕のは、メロン味! 交換しよう!」


子供たちが、

スプーンを交換して、

互いの味を確かめ合っていた。


子供C「……うわ、メロンも甘い!」

子供D「いちごも、いい!」


虎は、

その光景を、

しばらく眺めていた。


虎(賑やかな街だ)


虎(大変な出来事の後でも、こうして、笑顔が戻る)


ステラが、

虎の隣に立った。


ステラ「虎様」

虎「何だ」

ステラ「いい光景ですね」

虎「ああ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夜、

広場の端で、

ガロンが、

虎に話しかけた。


ガロン「……あの装置、興行会に、正式に届け出た。二度と、使わない」

虎「それでいい」

ガロン「これから、地道に、鍛え直すつもりだ。焦らずに、な」


虎「その方が、長く続くだろう」

ガロン「……あんたに、感謝している。本当に」


虎「礼はいらない。面白い試合だった、それだけだ」


ガロンが、

少し笑った。


ガロン「……そういうところ、変わらないな、あんた」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌日、

虎たちは、

街を出る準備をした。


ステラ「ビッグビッグシティーへは、陸路で向かいます」

虎「船じゃないのか」

ステラ「はい。シーアリスから先は、舗装された道が続いていて、景色もいいそうです」


街の入り口に、

自転車の貸出所があった。


大小、

様々なサイズの自転車が、

並んでいる。


ステラ「せっかくですので、私とクリスさんは、レンタル自転車で行こうと思います」

クリス「……自転車、というものか。乗ったことがない」

ステラ「私も、初めてです。いい機会かと」


虎「俺はどうする」

ステラ「虎様は、走った方が速いと思います」

虎「そうだな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


貸出所の店主が、

二台の自転車を用意した。


店主「街道は、しっかり舗装されているから、走りやすいはずだ。景色も、なかなかのもんだよ」


ステラが、

サドルにまたがって、

少しふらついた。


ステラ「……思ったより、難しいですね」

クリス「……こつが、掴めない」


二人が、

何度かよろけながら、

練習を始めた。


虎は、

それを見ながら、

少し口の端を上げた。


虎「面白そうだな」

ステラ「……見ていないで、手伝ってください」

虎「見ている方が、面白い」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


街の門まで、

ガロンが見送りに来た。


ガロン「本当に、行くのか」

虎「月文明の手がかりを、探す旅だ。図書館を目指している」

ガロン「……図書館なら、ビッグビッグシティーだな」

虎「そうだ」


ガロンが、

何かを思い出したように言った。


ガロン「そういえば、あの装置を作った人物、興行会が調べているらしい。何か情報が出たら、伝える」

虎「頼む」


クリスが、

静かに言った。


クリス「月文明の技術が、こんなところにまで、流れている。誰かが、意図的に、広めているのかもしれない」

虎「気になるな」


ステラが、

ガロンに頭を下げた。


ステラ「お世話になりました」

ガロン「こっちこそだ。本当に」


ガロンが、

自転車にまたがったステラとクリスを見て、

少し笑った。


ガロン「……その乗り方、まだぎこちないな」

ステラ「練習中です」

ガロン「気をつけてな。街道は、景色がいい分、脇見して転ぶ奴も多い」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


門を出ると、

街道が、

遠くまで続いていた。


石畳が丁寧に敷かれていて、

両脇には、

緑豊かな並木が並んでいる。


ステラが、

ゆっくりとペダルを漕ぎ始めた。


ステラ「……あ、進みました」

虎「順調そうだな」


クリスも、

少し遅れて、

ペダルを漕ぎ出した。


クリス「……体があると、こういう乗り物も、楽しめるものなんだな」

虎「そうだな」


虎(この街も、いい街だった)


虎(大きさも、種類も違う人々が、支え合って生きていた)


虎は、

二人の自転車に合わせて、

ゆっくりと走り出した。


ガロンが、

その背中に、

声をかけた。


ガロン「また、いつか、リングで会おう!」

虎「ああ」


シーアリスの街が、

少しずつ、

遠ざかっていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「ガロンさん、元気になりましたね」

虎「地道に、鍛え直すそうだ」

ステラ「装置に、月文明の技術が使われていたのは、驚きでした」

クリス「……誰かが、意図的に、広めている可能性がある」

虎「気になるところだ」

ステラ「街道の景色、楽しみですね」

虎「自転車、まだ慣れないだろ」

ステラ「……練習します」

クリス「私も、もう少し上達したい」

ステラ「……おおむね、大きな発見があるといいですね」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、シーアリスを発つ』」

虎「新しい道だな」

ステラ「はい。楽しみです」

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