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虎無双、虎無双。  作者: BB
5章

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58/113

第58話「虎が、暴走を止める」

三日後、

興行場は、

満員だった。


観客席に、

ビッグ人とノーマルの人間が、

入り混じって座っている。


アナウンス「本日のメインカード! 虎、対、ガロン!」


歓声が、

会場全体を揺らした。


虎は、

リングに上がりながら、

ガロンの様子を確認した。


虎(少し、顔色が悪いな)


虎(だが、それでも、立とうとしている)


ガロンが、

反対側から、

リングに上がった。


ガロン「……ここまで来たら、やるしかない」

虎「無理はするな」

ガロン「あんたと戦うのは、俺が決めたことだ」


審判が、

両者の間に立った。


審判「魔法禁止、体術のみ。それでは、始め!」


ゴングが、

鳴った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


最初は、

普通の試合だった。


ガロンの拳が、

虎の腹に入る。


虎は、

それを受けながら、

反撃した。


虎(体術は、しっかりしている。焦りに飲まれていない)


観客席から、

歓声が上がった。


観客A「いい試合だ!」

観客B「両方、力が強い!」


だが、

数分が経った頃、

ガロンの動きが、

急に変わった。


ガロン「……っ」


ガロンが、

拳を止めて、

胸を押さえた。


虎「……ガロン」


ガロンの体の周りに、

不自然な魔力の光が、

見え始めた。


ステラが、

観客席の端から叫んだ。


ステラ「虎様、来ます!」


ガロンの体が、

急激に膨張した。


体表に、

稲妻のような光が、

何本も走った。


審判「な、なんだ、これは……!」


ガロンが、

両手で頭を抱えて、

うめいた。


ガロン「……止まれ、止まってくれ……!」


だが、

魔力の暴走は、

止まらなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ガロンの体が、

一段と膨れ上がった。


リングを踏み抜くほどの、

巨体になった。


観客席が、

悲鳴に包まれた。


観客A「逃げろ!」

観客B「くそ、大きすぎる……!」


ガロンが、

自我を失ったような目で、

興行場の壁に、

拳を叩きつけた。


どごん。


壁が、

大きく崩れた。


ガロンは、

その隙間から、

街の方へ、

飛び出していった。


虎「追うぞ」

ステラ「はい」

クリス「私も」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


街に出たガロンは、

建物の壁を、

足場のようにして、

移動していた。


窓枠を掴み、

屋根を蹴り、

巨体とは思えない速さで、

街を駆け抜けていく。


その進路上に、

ノーマルサイズの住民たちが、

逃げ惑っていた。


ステラ「あの人たち、危険です!」

虎「ステラ、クリス、住民の避難を頼む!」

ステラ「わかりました!」


ステラが、

低い姿勢から、

一気に住民たちの元へ駆けつけた。


ステラ「こちらへ!」


小さな子供を抱え上げて、

路地の奥へと運んだ。


クリスも、

杖を振って、

魔法で軽い防御壁を、

建物の間に作った。


クリス「これで、しばらくは、瓦礫が飛んでこないはずだ」


道の脇にいた老人を、

クリスが素早く抱え上げて、

安全な場所まで運んだ。


クリス「大丈夫か」

老人「あ、ああ……ありがとう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


虎は、

ガロンを追って、

街の大通りを走った。


ガロンが、

建物の壁を蹴って、

高く跳んだ。


そのまま、

別の建物の壁に、

張り付くように移動していく。


虎(動きが、速い。だが)


虎(読めないわけじゃない)


虎は、

足に力を込めて、

一気に跳躍した。


ガロンが着地する先を、

先回りして、

待ち構えた。


虎「ガロン、聞こえるか!」


ガロンの目は、

虚ろだった。


理性が、

残っていないように見えた。


ガロン「……ぐ、ぁあああ……!」


ガロンが、

虎に向かって、

拳を振り下ろした。


虎は、

それを両腕で受け止めた。


どごん。


衝撃が、

地面を揺らした。


虎(重い。だが、耐えられる)


虎(体の頑丈さ修行の成果が、ここでも生きている)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


虎は、

ガロンの腕を掴んで、

力を込めた。


虎「……お前、まだ意識はあるだろう」

ガロン「……ぐ……」


ガロンの目に、

一瞬、

理性の光が戻った。


ガロン「……虎……」


虎「暴れるな。俺が、止める」


だが、

ガロンの体の中の、

暴走した魔力は、

止まらなかった。


ガロンが、

再び拳を振るった。


虎は、

それを受けながら、

全力の体術で、

ガロンの動きを、

少しずつ、

封じ込めていった。


腕を捉え、

足を払い、

体勢を崩す。


虎(魔法は使えない。体術だけで、抑え込む)


虎(それが、この街のルールだ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方、

ステラとクリスは、

街の各所で、

住民たちの避難を続けていた。


ステラ「まだ、逃げ遅れている方がいます!」


ステラが、

崩れかけた建物の中に、

飛び込んだ。


中には、

小さな子供が、

うずくまっていた。


ステラ「大丈夫です、一緒に来てください」


子供を抱えて、

外に出た瞬間、

建物の一部が、

崩れ落ちた。


ステラは、

その瞬間、

体を捻って、

瓦礫から子供を守った。


ステラ「……危なかったです」


クリスも、

別の場所で、

魔法を使いながら、

住民を誘導していた。


クリス「こちらへ、安全な場所がある」


杖の先から、

淡い光が広がり、

道を照らした。


クリス(……街の人々を、守れている)


クリス(三千年前、私に、こんな力はなかった)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


虎は、

ガロンの巨体と、

何度もぶつかり合った。


腕で受け、

足で流し、

少しずつ、

ガロンの動きを、

鈍らせていく。


虎(もう少しだ)


虎(この暴走を、止められる)


ガロンが、

大きく振りかぶった。


虎は、

その拳を、

真正面から受け止めた。


どごん。


衝撃が、

辺りに広がった。


虎の足が、

地面に、

深くめり込んだ。


だが、

虎は、

崩れなかった。


虎「……もう、終わりだ」


虎は、

そのまま、

ガロンの体を、

地面に押さえつけた。


ガロンの体から、

少しずつ、

暴走した魔力の光が、

薄れていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


しばらくして、

ガロンの体が、

元の大きさに戻り始めた。


意識を失ったまま、

静かになった。


虎は、

それを見届けて、

息を吐いた。


虎「……終わったか」


ステラとクリスが、

駆けつけてきた。


ステラ「虎様、無事ですか」

虎「問題ない」

クリス「……ガロンは」

虎「気を失っている。命に別状はなさそうだ」


ステラが、

街の様子を見渡した。


いくつかの建物が、

壊れていたが、

住民は、

無事だった。


ステラ「……住民の避難、間に合いました」

虎「よくやった、二人とも」

クリス「……街を守れて、よかった」


夜の街に、

静けさが戻りつつあった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「暴走、止められましたね」

虎「体術だけで、何とかなった」

ステラ「街の人々も、無事でした」

虎「お前たちのおかげだ」

クリス「……ガロンが、目を覚ましたら、どうなるだろうか」

虎「話をする必要がある」

ステラ「……おおむね、これで一件落着だといいのですが」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です。ガロンさんの、これからも気になります」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、ガロンを救う』」

虎「まだ、終わっていないな」

ステラ「はい。目覚めるまで、見守りましょう」

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