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虎無双、虎無双。  作者: BB
5章

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57/112

第57話「虎が、真実を知る」

翌朝、

虎たちは、

再び練習場に向かった。


ガロンは、

すでに来ていた。


だが、

今日は、

あの装置は見当たらなかった。


虎「ガロン」

ガロン「……ああ、来たか」


虎は、

まっすぐに聞いた。


虎「昨日の装置のことだ」

ガロン「……」

虎「興行会の規則を、調べた。外部からの魔力注入による強化は、禁止されているはずだ」


ガロンの表情が、

硬くなった。


ガロン「……知っていたのか」

虎「調べた」


ガロンは、

しばらく黙っていた。


それから、

小さく息を吐いた。


ガロン「……場所を変えよう。ここでは、話しづらい」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


案内されたのは、

興行場の裏手にある、

古い倉庫だった。


中には、

使われなくなった道具や、

古い興行のポスターが、

積まれていた。


ガロンが、

壁にもたれかかった。


ガロン「……あの装置、外部強化装置だ。違法なものだ」

虎「なぜ、使っている」

ガロン「……焦りだよ、前に話した通りだ」


ガロンが、

天井を見上げた。


ガロン「俺は、この街で、ノーマル出身のデュエリストとして、頂点を目指してきた。だが、ビッグ人の選手たちとは、根本的な体力差がある。ビッグ化で体は大きくなっても、生まれ持った基礎体力までは、変わらない」


ステラが、

静かに聞いた。


ステラ「それで、装置を」

ガロン「……半年前、知り合いから、その装置を紹介された。使えば、一時的に、力が跳ね上がる。それで、今の地位を、掴んできた」


虎(力の跳ね上がり、か)


虎(それが、あの練習場での装置だったんだな)


虎「体には、影響はないのか」

ガロン「……正直、わからない。使うたびに、少しずつ、体の中で、何かが引っかかるような感覚がある。だが、やめられなかった」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


クリスが、

ガロンに近づいて、

杖を軽くかざした。


クリス「……少し、確認してもいいか」

ガロン「……何を」

クリス「お前の体の中の、魔力の流れだ」


ガロンは、

少し迷ったが、

頷いた。


ガロン「……好きにしてくれ」


クリスの杖の先が、

青白く光った。


クリスが、

ガロンの体を見つめる。


しばらくして、

表情が険しくなった。


クリス「……これは」

虎「何かわかったか」

クリス「魔力の流れが、不自然に歪んでいる。装置による強制注入が、体の魔力回路に、蓄積している」


ガロンの顔が、

青ざめた。


ガロン「……そんなに、深刻なのか」

クリス「今すぐに、命に関わるわけではない。だが、この蓄積が続けば、いずれ、制御できなくなる可能性がある」


虎「制御できなくなる、とは」

クリス「……体が、魔力に振り回される、ということだ。もし、大量の魔力が、一気に流れ込むようなことがあれば」


クリスは、

言葉を切った。


クリス「……暴走する。体が、耐えきれずに」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


倉庫の中に、

沈黙が落ちた。


ガロンが、

両手で顔を覆った。


ガロン「……俺は、間違っていたのか」


虎は、

しばらく、

ガロンを見ていた。


虎「間違っていた、というより」

虎「一人で、抱えすぎていたんだろう」


ガロンが、

顔を上げた。


ガロン「……」

虎「焦りは、誰にでもある。だが、それを、誰かに相談することもなく、一人で解決しようとした。それが、間違いの始まりだったんじゃないか」


ステラが、

静かに続けた。


ステラ「ガロンさん。あなたが、頂点を目指す気持ちは、悪いことではありません。ただ、その方法が、あなた自身を、傷つけていました」


ガロンは、

しばらく黙っていた。


やがて、

小さく頷いた。


ガロン「……もう、使うのはやめる」

虎「それでいい」

ガロン「だが、装置は、もう体の中に、蓄積してしまっている。三日後の試合まで、それが、どうなるかわからない」


クリスが、

考え込むように言った。


クリス「……蓄積した魔力を、少しずつ、外に逃がす方法があるかもしれない。私が、月文明の技術を使えば」

虎「できるのか」

クリス「試してみないと、わからない。だが、やる価値はある」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


倉庫を出て、

街の広場に戻った。


ガロンは、

少し落ち着いた様子だった。


ガロン「……あんたたちに、話してよかった」

虎「隠しているより、いい」

ガロン「試合、まだやるつもりか」

虎「お前がやる気なら、俺は乗る」

ガロン「……ありがとう」


虎(体の状態が、心配だが)


虎(クリスが、何とかしてくれるなら)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


昼過ぎ、

虎たちは、

街の食堂に寄った。


疲れた気持ちを、

少し休めるためだった。


ステラが、

市場で買ってきた、

ビッグ人向けの巨大な麺料理を注文した。


太い麺が、

どんぶりからあふれるほど、

盛られていた。


虎は一口食べた。


虎「……」


麺は、

もちもちとした食感で、

噛むほどに、

小麦の香りが立ってきた。

スープは、

濃厚で、

肉の旨みが、

しっかりと染み込んでいる。

食べるごとに、

体に力が戻ってくるような感覚があった。


虎「……うまい。今日は、少し重い話をしたが、飯はうまいな」

ステラ「はい」


クリスも、

一口食べた。


クリス「……体を使う仕事の後は、こういう味が、ありがたい」

虎「そうだな」


ステラが、

虎を見た。


ステラ「虎様、ガロンさんのこと、心配ですね」

虎「ああ」

ステラ「三日後の試合、どうなるでしょうか」

虎「クリスが、対処してくれれば、大丈夫だと思いたいが」


虎(もし、それでもダメだったら)


虎(その時は、俺が、何とかするしかない)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夕方、

再びガロンと合流した。


クリスが、

杖を使って、

ガロンの体から、

少しずつ、

蓄積した魔力を、

引き抜く処置を試みた。


ガロン「……」


魔力の粒子が、

光となって、

体の外に出ていくのが見えた。


しばらく続けた後、

クリスが、

額に汗をかきながら言った。


クリス「……これで、少しは、良くなったはずだ。だが、完全には取り切れていない」

ガロン「……どのくらい、残っている」

クリス「まだ、多くはない。だが、試合中に、大きな衝撃が加われば、それが、引き金になる可能性はある」


虎(試合中に、暴走が起きるかもしれない、ということか)


虎「わかった」


虎は、

ガロンを見た。


虎「試合は、慎重にやる。何かあれば、俺が止める」

ガロン「……頼む」


夜の街に、

興行場の灯りが、

静かに輝いていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「ガロンさんの事情、わかりましたね」

虎「装置の蓄積が、まだ残っている」

ステラ「試合中に、何か起きるかもしれません」

虎「注意しておく」

クリス「……私も、できる限り、様子を見ている」

虎「頼む」

ステラ「……おおむね、無事に終わるといいのですが」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です。試合が、本当に無事に終わりますように」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、暴走を止める』」

虎「その時が来たら、迷わず動く」

ステラ「……お願いします」

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