↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虎無双、虎無双。  作者: BB
5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
55/114

第55話「虎が、ガロンと出会う」

試合は、

結局、

時間切れの引き分けとなった。


審判「両者とも、見事な戦いだった! 本日は、引き分けとする!」


会場から、

大きな拍手が起きた。


虎は、

リングの上で、

息を整えながら、

ステラとクリスを見た。


虎「……いい試合だった」

ステラ「……はい。おおむね、満足のいく結果です」

クリス「三千年ぶりに、体を使い切った気がする」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


控室に戻ると、

入り口に、

がっしりとした体格の男が立っていた。


昨日、

観客席から見ていた男だった。


男「……お疲れさん」

虎「お前は」

男「ガロンだ。今日の試合、見させてもらった」


ガロンが、

虎に手を差し出した。


虎は、

その手を握った。


ガロン「……硬い手だな」

虎「お前もな」


ガロン「あんたと、いつか戦ってみたいと思っていた。噂は聞いていたが、実物は想像以上だ」

虎「噂、とは」

ガロン「サンドポートで、砂漠の宮殿の守護者を倒したって話が、ここまで届いてる。冒険者の間じゃ、ちょっとした有名人だぞ」


虎(そういえば、ランクも上がっていたな)


虎(噂というのは、思ったより早く伝わるものだ)


ステラが、

ガロンを見た。


ステラ「あなたが、注目のデュエリストですか」

ガロン「ああ。この街で、一番勢いがあるって言われてる」

クリス「今日は、試合に出なかったのか」

ガロン「今日は休みだ。それより、あんたらの試合を見に来た」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ガロンが、

控室の椅子に座った。


ガロン「なあ、この後、時間あるか。飯でも食いながら、話さないか」

虎「乗った」


ガロンが、

案内したのは、

興行場の近くにある、

デュエリスト御用達の食堂だった。


ガロン「ここは、選手が集まる店だ。量が多くて、うまい」


店に入ると、

何人かのビッグ人が、

食事をしていた。


ガロンが、

店主に声をかけた。


ガロン「いつもの、四人前くれ」

店主「あいよ!」


しばらくして、

巨大な鉄板に、

肉と野菜が山盛りに焼かれて出てきた。


湯気とともに、

香ばしい匂いが立ち上る。


ガロン「デュエリスト飯だ。試合前後に、みんなこれを食う」


虎は一口食べた。


虎「……」


肉が、

分厚く、

噛むたびに、

力強い旨みが広がった。

野菜と一緒に焼かれることで、

甘みと肉の旨みが、

うまく絡み合っている。

リングで消耗した体に、

染み渡るような味だった。


虎「……うまい。今日の疲れが、抜けていく気がする」

ガロン「だろ? これ食わないと、次の試合まで、体が持たないんだよ」


ステラも一口食べた。


ステラ「……力強い味ですね」

クリスも食べながら、

杖を膝の上に置いた。


クリス「体を使った後の飯は、また違う味になるものだな」

ガロン「わかるやつだな、お前」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


食べながら、

ガロンが、

自分のことを話し始めた。


ガロン「俺は、この街の生まれだ。ノーマルサイズで生まれて、ずっとビッグ人相手のレスリングに憧れてた」

虎「なぜだ」

ガロン「……小さい頃、ビッグ人の兄貴分に、憧れてたんだよ。あんなふうに、堂々と戦えるようになりたいって」


ガロンが、

少し遠くを見た。


ガロン「ビッグ化を使えば、体格差は埋まる。だが、それでも、生まれ持った体の限界ってのは、あるんだ」

虎「限界か」

ガロン「俺は今、この街の中堅どころだ。上には、まだまだ強い連中がいる。あんたみたいな奴を見ると、正直……焦る」


虎(焦り、か)


虎(一万年前の俺には、なかった感情だ)


虎「焦る必要があるのか」

ガロン「……どういう意味だ」

虎「強さは、比べるものじゃないだろう。自分がどう強くなるか、それだけだ」


ガロンは、

しばらく黙っていた。


ガロン「……そうかもな。だが、俺には、目標がある。この街の頂点に立つ、デュエリストになることだ」

虎「いい目標だ」

ガロン「あんたも、そうやって、強くなってきたのか」

虎「俺は、面白いものを探して、強くなってきただけだ」

ガロン「……単純だな」

虎「よく言われる」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


食事が進むにつれて、

ガロンの表情が、

少しずつ和らいでいった。


ガロン「なあ、今度、正式な試合で、俺と当たってくれないか」

虎「いいのか、俺は飛び入りの旅人だぞ」

ガロン「関係ない。この街のレスリングは、強さと面白さがあれば、誰でも上に上がれる。あんたとの試合、絶対に盛り上がる」


虎(面白そうだ)


虎「わかった」


ガロンが、

嬉しそうな顔をした。


ガロン「よし、決まりだ。興行会に話を通しておく」


ステラが、

少し心配そうに言った。


ステラ「虎様、また試合ですか」

虎「面白そうなら、断る理由がない」

ステラ「……おおむね、いつも通りですね」


クリスが、

肉をもう一切れ食べながら、

ガロンを見た。


クリス「ガロン、あなたの強さの秘訣は、何なんだ」

ガロン「……秘訣、か」


ガロンの表情が、

一瞬、

陰った気がした。


ガロン「……鍛錬だ。それだけだよ」


虎(今の間、少し気になるな)


虎(何か、隠しているのか)


だが、

虎はそれ以上、

深くは聞かなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


食事を終えて、

店を出た。


夜の街に、

興行場の灯りが、

遠くに見えていた。


ガロン「今日は、ありがとうな。楽しかった」

虎「こちらこそだ」

ガロン「試合の日程、決まったら知らせる」


ガロンが、

街の路地に消えていった。


ステラが、

その背中を見送りながら言った。


ステラ「……いい人でしたね」

虎「そうだな」

クリス「……だが、何か抱えているように見えた」

虎「俺もそう感じた」


虎(焦り、というのは、時に危険なものになる)


虎(あいつが、それに飲まれないといいが)


夜風が、

街を通り抜けていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「ガロンさん、いい人でしたね」

虎「面白い奴だった」

ステラ「正式な試合、決まりましたね」

虎「楽しみだ」

クリス「……ガロンの様子、少し気になった」

虎「俺もだ」

ステラ「……何か、抱えているのでしょうか」

虎「わからない。だが、注意しておく」

ステラ「……おおむね、平和に試合が終わるといいのですが」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です」

虎「次の予告をしろ」

ステラ「次回、『虎が、試合を待つ』」

虎「地道な回になりそうだな」

ステラ「準備期間も、大事です」

虎「そうだな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。