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虎無双、虎無双。  作者: BB
5章

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53/112

第53話「虎が、ビッグ化を体験する」

翌朝、

三人はディメンションチェンジャーに向かった。


建物の入り口で、

受付の職員が対応した。


職員「ビッグ化体験ですね。三日間限定となります。よろしいでしょうか」

虎「ああ」

職員「では、こちらの円盤の上に立ってください」


大きな金属の円盤が、

床にはめ込まれていた。


三人がその上に立つと、

職員がレバーを操作した。


職員「では、始めます」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


光が、

円盤全体を包んだ。


虎(……体が、伸びていくような感覚だ)


視界が、

急速に高くなっていく。


天井が、

どんどん近づいてきた。


しばらくして、

光が収まった。


虎は、

自分の手を見た。


普段の何倍もの大きさになっていた。


虎「……」


ステラも、

クリスも、

同じように大きくなっていた。


天井すれすれに、

三人の頭があった。


職員「変換完了です。皆さん、無事に大きくなられましたね」


虎(……見える景色が、全然違う)


虎(一万年前にも、こういう感覚はなかったな)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


建物を出ると、

街の光景が、

一変していた。


昨日まで見上げていたビッグ人の建物が、

今は目線の高さにあった。


逆に、

ノーマルサイズの人間たちが、

足元を、

小さく歩いていた。


ステラ「……不思議な感覚です」

虎「そうだな」


歩くたびに、

地面が揺れるような気がした。


虎(力の加減が、いつもと違うな)


虎(普段の感覚で歩くと、踏み込みすぎるかもしれない)


クリスが、

自分の腕を見ながら、

不思議そうにしていた。


クリス「……骨が、大きくなっている。杖まで、伸びたようだ」

虎「魔力量は、変わっていないんじゃないか」

クリス「……そうか。体は大きくなったが、中身は同じか」


ステラが頷いた。


ステラ「案内板に書いてありました。ビッグ化しても、魔力量そのものは変わらないそうです。体積が増える分、魔力密度が薄くなると」

虎「だから、レスリングで魔法禁止なのか」

ステラ「おそらく。体が大きくなっても、魔力が薄まるだけで、魔法の威力はむしろ落ちるのかもしれません」


虎(純粋な体術が、一番信頼できる、というわけか)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ビッグ人サイズの街を、

三人で歩いた。


普段は見上げていた店の看板が、

目の前にあった。


ビッグ人向けの食堂に入ると、

店主が驚いた顔をした。


店主「おや、ビッグ化体験の方ですね。珍しいお客さんだ」

虎「うまいものをくれ」

店主「任せてください」


しばらくして、

巨大な皿に、

肉料理が盛られて出てきた。


普段の虎の体格でも、

持ち上げるのに苦労しそうな量だった。


虎は一口食べた。


虎「……」


肉の繊維が太く、

噛むたびに、

濃厚な肉汁が広がった。

ビッグ人向けの調理法らしく、

味付けは大胆で、

香辛料が強めに効いている。

体が大きくなった分、

味覚も、

それに合わせて変化しているのか、

昨日食べたものより、

今の自分にちょうど良く感じられた。


虎「……うまい。体に合った味付けだ」

ステラも一口食べた。


ステラ「……確かに、大きな体だと、この濃さがちょうどいいですね」


クリスが、

肉を一切れかじった。


クリス「……大きくなった分、味覚も変わるものなのか」

虎「そうかもしれない」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


食後、

街を歩いていると、

大きな声で呼び止められた。


ビッグ人「おい、そこのでかい虎!」


振り返ると、

筋骨隆々のビッグ人が、

興味深そうにこちらを見ていた。


胸に、

『ビッグレスリング興行会』

と書かれた印がついている。


ビッグ人男「珍しいな、虎のビッグ化体験者は。俺は、興行会のスカウトをしている者だ」

虎「スカウト、か」

スカウト「今日、飛び入り参加枠が余っててな。よかったら、リングに上がってみないか」


虎(面白そうだ)


虎「乗った」

ステラ「……即答ですね」


スカウトが、

にやりと笑った。


スカウト「話が早いな。ルールは知っているか」

虎「魔法禁止、体術だけと聞いた」

スカウト「その通りだ。ビッグ化しても、魔力量は変わらないから、魔法を使うと逆に体が制御しにくくなる。だから、この街のレスリングは、純粋な力比べになってるんだ」


ステラとクリスを見て、

スカウトが続けた。


スカウト「そっちの二人も、出るか。実は今日、ハンデ戦の枠も空いててな。一対二で組ませてもらえると、興行的にも面白いんだが」


ステラが、

虎を見た。


ステラ「……虎様、私たちも出るのですか」

虎「面白そうなら、乗るしかないだろ」

クリス「……久しぶりに、体を動かすのも悪くない」


ステラは、

少し考えた後、

頷いた。


ステラ「……わかりました」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


スカウトが、

興行場までの案内をしながら、

説明を続けた。


スカウト「今日の大会には、注目のデュエリストも出場する。まだ若いが、この街で一番勢いのある奴だ」

虎「デュエリスト、か」

スカウト「ビッグレスリングの選手を、こう呼ぶんだ。ノーマル出身で、ビッグ人相手にも互角に渡り合う。名前は、ガロンって言う」


虎(ガロン、か)


虎(後で、対戦するかもしれないな)


ステラが、

少し緊張した面持ちで言った。


ステラ「……本当に、私とクリスさんで、虎様に挑むのですね」

虎「手加減はしない」

ステラ「……望むところです」


クリスが、

杖を軽く握った。


クリス「魔法禁止、体術のみ、か。久しぶりに、単純な戦いだ」


三人は、

興行場へ向かって歩き出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「ビッグ化、初めての経験でした」

虎「体も、味覚も、全部違って感じた」

ステラ「明日は、いよいよリングに上がりますね」

虎「魔法禁止、体術だけの勝負だ」

クリス「私とステラで、虎様に挑むことになるとは」

虎「本気で来い」

ステラ「もちろんです」

ステラ「……おおむね、負けるつもりはありません」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です」

虎「次の予告をしろ」

ステラ「次回、『虎が、リングに上がる』」

虎「楽しみだ」

クリス「デュエリスト、ガロンという者も気になる」

虎「対戦するかもしれない」

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