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虎無双、虎無双。  作者: BB
5章

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52/112

第52話「虎が、巨人の国に着く」

船が、

港に着いた。


『ようこそ!「シーアリス」へ!!』


甲板から見えたのは、

今までとは全く違う街並みだった。


低い建物の上に、

さらに三倍ほどの高さの建物が重なっている。


ステラ「……不思議な構造ですね」

虎「二段になっているのか」


ドムが、

帆を下ろしながら説明した。


ドム「低層はノーマルサイズの人間向け、上層はビッグ人向けです。同じ建物を、両方が使えるようにしているんですよ」


港に降りると、

その光景は、

さらにはっきりした。


大通りを、

ビッグ人が悠々と歩いている。


その脇に、

細い路地があり、

そこをノーマルサイズの人間が、

近道のように歩いていた。


虎「……道も、二種類あるのか」

ドム「ビッグ人用の大通りと、ノーマル用の裏道です。この街では、当たり前の風景ですよ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ビッグ人の一人が、

肩に、

小さな人間を乗せて歩いていた。


ステラ「あれは」

ドム「送迎です。ビッグ人が、ノーマルの人を肩に乗せて、目的地まで運ぶんです。この街では、よくある仕事です」

虎「面白い分業だな」


逆に、

別の場所では、

小さな人間が、

ビッグ人の落とし物らしき、

巨大な鍵を運んでいた。


ドム「あれも、専門の仕事なんですよ。ビッグ人の忘れ物や落とし物を届ける、小さな仕事人たちです」


虎(役割が、うまく噛み合っている)


虎(一万年前には、想像もしなかった共存の形だ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


港の広場で、

ドムが立ち止まった。


ドム「私は、ここでお別れです。この街に、家族がいますので」

虎「そうか」


虎は、

懐から袋を取り出した。


虎「これを受け取れ」

ドム「……これは」

虎「イカヅチマグロを一緒に獲った報酬だ。それに、ここまで運んでくれた礼だ」


ドムは、

少し驚いた顔をした。


ドム「……いいのですか」

虎「当然だ」

ドム「……ありがとうございます」


ステラが、

ドムに頭を下げた。


ステラ「お世話になりました」

クリス「船旅、楽しかった」


ドムが、

少し目を細めた。


ドム「こちらこそ。皆さんと過ごした時間、忘れません。もしよければ、ビッグレスリングの興行、見に行ってみてください。この街の名物です」

虎「ビッグレスリング」

ドム「魔法禁止の、体術だけの格闘興行です。ビッグ人もノーマルも、対等に競える珍しい競技ですよ」


虎(面白そうだ)


虎(覚えておく)


ドムは、

そのまま街の人混みに消えていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


三人で、

街を歩いた。


大きな看板が、

あちこちに立っている。


その一つに、

巨大な人物同士が組み合う絵と、

『ビッグレスリング開催中』

という文字が描かれていた。


ステラ「先ほど、ドムさんが言っていましたね」

虎「魔法禁止、体術だけか」

クリス「珍しいルールだな。魔法が使えるなら、使った方が早いだろうに」


虎(何か理由があるんだろう)


虎(気になるな)


しばらく歩くと、

食堂が並ぶ通りに出た。


一軒の店は、

ノーマルサイズの人間向けで、

小さなテーブルが並んでいた。


その隣の店は、

天井が高く、

巨大な椅子とテーブルが置かれていた。


ステラ「両方、見てみましょう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


まず、

ノーマル向けの店に入った。


出てきたのは、

普通のサイズのシチューだった。


虎は一口食べた。


虎「……」


具材が細かく刻まれていて、

食べやすく調理されている。

味付けは、

繊細で、

香辛料の使い方に、

丁寧さが感じられた。


虎「……普通にうまいな」

ステラ「食べやすいサイズですね」


次に、

ビッグ人向けの店を覗いた。


店主が、

巨大な鍋から、

シチューを取り分けていた。


一皿の量が、

虎たち三人分よりも、

はるかに多かった。


虎は、

分けてもらった一口を食べた。


虎「……」


具材が大きく、

豪快に煮込まれていた。

繊細さはないが、

その分、

素材の味がそのまま出ていて、

力強い旨みがあった。


虎「……こっちも、悪くない」

クリス「同じ料理でも、こんなに違うのか」

ステラ「作り方の哲学が、違うんでしょうね」


虎(繊細さと、豪快さ。両方が、この街には共存している)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


食後、

街のさらに奥へ進むと、

巨大な建物が見えてきた。


看板に、

『ディメンションチェンジャー』

と書かれている。


ステラが、

案内板を読んだ。


ステラ「……三日間限定で、体のサイズを変換できる装置だそうです。ビッグ人が普通サイズに、ノーマルの人がビッグ人サイズになれると」

虎「面白い技術だ」

クリス「……月文明の技術に、似た香りがする」


虎はクリスを見た。


虎「何か感じるのか」

クリス「はっきりとはわからない。だが、この規模の変換技術、そう簡単には作れないはずだ」


虎(クリスの直感は、当たることが多い)


虎(覚えておこう)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夕方、

宿を取った。


窓から、

街の灯りが見えた。


低層と上層、

両方の建物に、

灯りがともっている。


ステラ「虎様」

虎「何だ」

ステラ「ビッグ化、体験してみますか」

虎「するか」

ステラ「……即答ですね」

虎「面白そうだからな」


クリスが、

窓の外を見た。


クリス「私も、大きくなってみたい。三千年、ずっと同じ大きさだったからな」


虎「明日、行ってみるか」

ステラ「はい」


窓の外で、

ビッグ人とノーマルの人間が、

一緒に夜道を歩いていた。


その光景を、

虎はしばらく眺めていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「シーアリス、面白い街でしたね」

虎「共存の仕方が、独特だった」

ステラ「食べ物も、両方うまかったですね」

虎「繊細さと、豪快さ。両方あった」

クリス「明日は、ビッグ化を体験するのだな」

虎「そうだ」

ステラ「……おおむね、楽しみです」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です。大きくなった虎様も、見てみたいです」

虎「そうか」

ステラ「次回、『虎が、ビッグ化を体験する』」

虎「どんな感覚になるか、想像がつかないな」

ステラ「行ってみればわかります」

虎「そうだな」




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