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虎無双、虎無双。  作者: BB
4章

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51/113

第51話「虎が、ビッグゴッグを目指す」

船が、

沖に出て二日目の朝だった。


ドムが、

甲板から遠くの海を見つめていた。


ドム「……この辺りかもしれません」

虎「何がだ」

ドム「イカヅチマグロです。私は、船を出すたびに、狙っているんですよ」


ステラ「イカヅチマグロ、ですか」

ドム「雷を宿した、巨大なマグロです。この海域を、季節ごとに回遊しているんです。私は、実は漁師でもありまして」


虎「マグロ漁師だったのか」

ドム「はい。ビッグゴッグでも、私の獲るイカヅチマグロは、評判がいいんですよ」


虎(面白そうだ)


虎(船に乗るだけの旅より、いい)


虎「手伝おう」

ドム「え、いいのですか」

虎「面白そうだからな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


昼過ぎから、

空模様が変わり始めた。


黒い雲が、

遠くから近づいてくる。


ドム「……来ましたね」

ステラ「嵐、ですか」

ドム「いえ、イカヅチマグロの気配です。あの魚が近くにいると、必ずこういう天候になるんです」


クリスが、

杖を構えて、

魔力の流れを読んだ。


クリス「……確かに、雷の魔力反応がある。かなり強い」


雲が、

船の上を覆い始めた。


雷鳴が、

遠くで轟いた。


ドム「準備をしましょう。銛を持ってきます」


ドムが、

船倉から、

巨大な一本銛を持ってきた。


虎の身長ほどの長さがある。


虎「それで突くのか」

ドム「はい。ただ、あの魚は、雷を纏っています。近づくだけでも、一苦労なんです」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


雨が、

降り始めた。


海面が、

激しく波打っている。


そのとき。


海中から、

巨大な影が、

浮かび上がってきた。


体長は、

船の半分ほどある、

巨大なマグロだった。


体の表面に、

稲妻のような模様が走り、

時折、

実際に電光が走っている。


ドム「……来ました!」


イカヅチマグロが、

尾びれを振った。


雷が、

海面を走った。


船が、

大きく揺れた。


ステラ「虎様!」

虎「わかっている」


虎は甲板から、

海に飛び込んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


水中は、

雷光が走るたびに、

一瞬明るくなった。


虎(電気が来るな。だが……)


虎(体の頑丈さ修行の成果で、耐えられる範囲だ)


イカヅチマグロが、

虎に向かって突進してきた。


虎は正面から、

その体を受け止めた。


ばちばちばち。


電流が、

全身を駆け巡った。


虎(痛い。だが、耐えられる)


虎は、

マグロの体を掴んで、

そのまま海面に押し上げた。


水面から、

巨大な体が、

半分ほど飛び出した。


ドムが、

船の上から銛を構えた。


ドム「今です!」


虎が、

マグロの動きを、

さらに抑え込んだ。


雷が、

まだ弱く走っていたが、

先ほどより勢いが落ちていた。


虎「今しかない」


ドムが、

渾身の力で銛を投げた。


銛が、

マグロの急所に、

深く突き刺さった。


イカヅチマグロが、

大きく身をよじった後、

動きを止めた。


ドム「……獲った……!」


声が、

震えていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


雲が、

少しずつ晴れていった。


虎は、

イカヅチマグロを、

甲板に引き上げるのを手伝った。


巨大な魚体が、

甲板いっぱいに横たわった。


ドム「……こんな大物、久しぶりです。虎さんのおかげです」

虎「お前が仕留めたんだろ」

ドム「いえ、あなたが弱らせてくれたから、突けたんです」


ステラが、

虎の体を確認した。


ステラ「……虎様、電流の痕がありますね」

虎「痛かったが、大したことはない」

クリス「……体の頑丈さ、また試されたな」

虎「そうだな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夕方、

海が凪いだ頃、

ドムが甲板で調理を始めた。


イカヅチマグロの身を、

大きく切り分けていく。


赤身の断面が、

わずかに光を帯びていた。


ドム「雷を宿した魚は、身にも独特の刺激が残ります。新鮮なうちに、刺身でどうぞ」


虎は一切れ食べた。


虎「……」


口に入れた瞬間、

舌にぴりりとした、

かすかな電流のような刺激が走った。

だがそれは、

不快なものではなく、

旨みを、

より鮮烈にする刺激だった。

赤身の濃厚な味が、

その刺激と混ざり合って、

今まで食べたどのマグロとも違う、

独特の余韻を残した。


虎「……うまい。それに、刺激がある」

ドム「わかりますか。この刺激が、イカヅチマグロの魅力なんです」


ステラも、

一切れ食べた。


ステラ「……本当だ。舌が、少し痺れます」

クリス「……面白い味だ。三千年生きていても、初めての感覚だ」


ドムが、

嬉しそうに見ていた。


ドム「あなたたちのおかげで、いい大物が獲れました。ビッグゴッグに着いたら、みんなに自慢できます」


虎「良かったな」

ドム「はい」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夜、

甲板で、

虎は横になった空を見上げた。


ステラが、

隣に来た。


ステラ「虎様」

虎「何だ」

ステラ「あの刺激、まだ舌に残っていますか」

虎「少しな」

ステラ「不思議な味でした」

虎「ああ」


クリスが、

杖を膝に置いて座った。


クリス「……ビッグゴッグは、もうすぐか」

ドム「明日の昼には、港が見えてくるはずです」


虎(新しい国、新しい食べ物、新しい相手)


虎(面白くなってきた)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「イカヅチマグロ、獲れましたね」

虎「刺激的な味だった」

ステラ「ドムさんも、喜んでいましたね」

虎「いい大物だったからな」

ドム「本当に、感謝しています」

虎「気にするな」

ステラ「明日には、ビッグゴッグが見えてくるそうです」

虎「巨人の国、か」

ステラ「……どんな街並みでしょうか」

虎「見てみればわかる」

ステラ「……おおむね、想像がつきません」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です。この目で見るのが、一番早いですね」

虎「次の予告をしろ」

ステラ「次回、『虎が、巨人の国に着く』」

虎「いよいよだな」

ステラ「はい。楽しみです」

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