↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虎無双、虎無双。  作者: BB
4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/112

第42話「虎が、証拠を集める」

翌朝、

役場に町長を訪ねた。


町長「おはようございます。昨夜も、被害が出たようですな」

虎「ああ。攻撃は効かなかった」

町長「聞いております。となると、証拠集めから始めていただくしかありませんな」


ステラ「暴走ゴーストについて、記録はありますか」

町長「正体は、まだわかっておりません。姿がはっきりせず、誰も近くで見た者がいないのです」


クリスが、

役場の資料棚に目を向けた。


クリス『……古い書類は、あそこか』

町長「よく気づかれましたな。あちらに、街の古い記録があります」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


三人で、

資料棚を漁った。


古い土地台帳や、

住民名簿が積まれていた。


ステラ「……暴走ゴーストが荒らしている場所を、地図に印をつけてみます」


ステラが、

被害箇所を線で結んでいった。


ステラ「……特定の区画に、集中していますね」

虎「同じ場所ばかり狙っているのか」

ステラ「はい。畑の一角と、その周辺の建物です。町の中心部や、他の畑には手を出していません」


クリスが、

台帳を一枚めくった。


クリス『……この土地、名義が変わっている』

虎「見せろ」


台帳には、

以前の所有者の名前が、

線で消されて、

新しい所有者の名前が書かれていた。


町長「……ああ、それは。数年前に、あの一帯を街の再開発計画に組み込んだのです。畑を潰して、新しい住宅街を作る予定でして」

虎「畑を潰す、か」

町長「はい。人口が増えていましてな。土地が足りず……」


虎(暴走ゴーストが荒らしているのは、その計画の対象地だ)


虎(偶然か、それとも)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


役場を出て、

街を歩いた。


畑の近くに住むゴーストたちに、

話を聞いてまわった。


老いたゴースト「ああ、暴走ゴーストのことかい。あれは、可哀想な話だよ」

虎「知っているのか」

老いたゴースト「詳しくは知らないが……昔、あの畑にいた農夫の話を、聞いたことがある」


ステラ「農夫、ですか」

老いたゴースト「もう三十年以上前になるかね。あの畑を耕していた男が、いたんだよ。名前は、忘れちまったが」


虎「その男は、どうなった」

老いたゴースト「畑を守ろうとして、亡くなったと聞いた。詳しいことは、街の墓地に行けばわかるかもしれないね」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


街の外れの墓地は、

静かだった。


ゴーストと人間の墓が、

一緒に並んでいる。


ステラ「……ゴーストにも、墓があるのですね」

虎「肉体がなくても、記録として残すんだろう」


古い墓石を、

一つずつ確認した。


クリスが、

一つの墓石の前で止まった。


クリス『……ここだ』


墓石には、

名前が刻まれていた。


「ダンカン・ホロウ」


虎「ホロウ、というのは」

ステラ「この街の名前、ホロウベルと同じですね」

虎「創設者の一族か」


墓石には、

続けて刻まれていた。


『この地を愛し、この地に眠る』


クリスが、

墓石にそっと触れた。


クリス『……これだ。私が感じた気配は、ここから来ている』

虎「間違いないか」

クリス『間違いない。骨が、そう言っている』


虎「……骨が言っている、というのは、比喩か」

クリス『比喩でもあり、事実でもある。私は骨だからな、こういう場所では感覚が鋭くなる』


ステラが、

少し口の端を上げた。


ステラ「……クリスさん、それは骨まで染みる話ですね」

クリス『……うまいことを言う』

虎「お前もか」


クリスがふわりと揺れた。


クリス『骨が折れる調査だったが、無駄ではなかったな』

虎「……お前、その手のことを言うようになったのか」

クリス『三千年ぶりに骨を使った冗談を言った。骨肉の争いにならないよう、気をつけよう』

虎「……肉を切らせて骨を断つ、か」

クリス『それは私の得意分野だ』


ステラが、

小さく笑った。


ステラ「……二人とも、楽しそうですね」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


墓地から戻る途中、

街の食堂に寄った。


ステラ「昼にしましょう。調査で疲れました」


店内は、

半透明のシェフが調理していた。


シェフ(ゴースト)「いらっしゃい。今日のおすすめは、霊製パスタだよ」


町長が言っていた、

もう一つの名物だった。


運ばれてきたのは、

薄い青白い光を帯びた麺だった。


虎は一口食べた。


虎「……」


もちっとした食感の後、

魔力特有の、

じんわりとした旨みが広がった。

普通の小麦の味とは違う、

不思議な深みがある。

ソースの旨みと絡んで、

食べるたびに新しい味が来るような感覚だった。


虎「……うまい」

シェフ(ゴースト)「ありがとう。ゴーストの魔力を練り込んでるから、生きてる頃の想いが味に出るんだ」


ステラも一口食べた。


ステラ「……確かに、独特の深みがありますね」


クリスが、

麺の一部を吸い込んだ。


クリス『……これも、いい』

虎「気に入ったか」

クリス『三千年前は、こんな味を知らなかった。世界は、進化している』


虎(一万年前の俺と、似たようなことを言っている)


虎(時間の重みは違うが、感じることは近い)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


食事を終えて、

宿に戻った。


ステラ「虎様、今日わかったことをまとめます」

虎「頼む」

ステラ「暴走ゴーストは、おそらくダンカン・ホロウという農夫です。三十年以上前に、畑を守ろうとして亡くなりました。今、彼が守っていた土地が、再開発計画の対象になっています」

虎「畑を守るために暴れている、というわけか」

ステラ「はい。未練の正体は、おそらく『畑を守りたい』という想いです」


クリスが、

窓の外を見た。


クリス『……問題は、どう伝えるかだ。彼は、畑がなくなろうとしていることに怒っている。だが、街の発展も、必要なことだ』

虎「対話でしか、解決できないな」

ステラ「明日、ダイヤル式電話を使う準備をしましょう」


夜霧の向こうで、

また轟音が響いた。


ステラ「……今夜も」

虎「ああ。だが、もう少しだ」


三羽のカラスが、

夜空を横切っていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「暴走ゴーストの正体が、わかってきましたね」

虎「ダンカン・ホロウ、か」

ステラ「畑を守りたいという想いが、未練になっているようです」

虎「対話で解決できるといいが」

ステラ「クリスさんが、通話役になりますね」

クリス『……緊張するな、これは』

虎「お前でも緊張するのか」

クリス『三千年ぶりに、誰かの想いと真剣に向き合う。緊張しないわけがない』

ステラ「次回、『虎が、電話をかける』」

虎「ついに対話か」

ステラ「はい。おおむね、準備は整っています」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です。あとはクリスさん次第です」

クリス『……任せてくれ』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。