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虎無双、虎無双。  作者: BB
3章

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39/112

第39話「虎が、守護者を止める」

亀裂が、

守護者の全身に広がっていった。


虎は力を緩めなかった。


どごん。


守護者の腕が、

砕けた。


守護者「……ここまで、か」


体全体に亀裂が走り、

守護者はゆっくりと膝をついた。


守護者「……久しぶりに、面白いものを見た」


そのまま、

光となって消えていった。


部屋が、

静かになった。


ステラ「……終わりましたね」

虎「ああ」

ラシード「……本当に、あれを倒したのか」


祭壇の上に、

何かが浮かび上がった。


台座から、

石のようなものが現れた。


人の頭蓋骨の形をした、

透明なクリスタルだった。


ステラ「……これが、宮殿の財宝ですか」

虎「クリスタルスカル、か」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ラシードが、

それを見た瞬間、

表情が変わった。


ラシード「……ようやくだ」


声が、

今までと違った。


低く、

冷たい声だった。


虎「……お前」

ラシード「案内人のふりも、疲れたよ。俺はグリンドのリーダーだ。あんたらが宮殿を突破するのを、ずっと待っていた」


……なるほど


虎(漁師に紹介された時点で、こうなる可能性はあった)


ラシード「そのクリスタルスカル、いただく」


ラシードが手を伸ばした。


クリスタルスカルが、

淡く光った。


ラシード「……なんだ、この光」


光が、

ラシードの体を包んだ。


ラシード「……頭が、痛い」


ラシードが膝をついた。


しばらくして、

光が消えた。


ラシードが、

ゆっくりと顔を上げた。


その目が、

さっきまでと全く違っていた。


ラシード「……あれ。俺は、何を」

ステラ「……人格が、変わりましたか」


次の瞬間、

ラシードの体が、

光に包まれた。


ラシード「え、待——」


光が弾けて、

ラシードの姿が消えた。


虎「……ワープさせられたのか」

ステラ「宮殿の外に飛ばされたようです」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


静かになった部屋に、

声が響いた。


クリスタルスカル『……驚かせたね』


虎とステラは、

クリスタルスカルを見た。


クリスタルスカル『私が話している。宮殿の最後の管理機構だ』


虎「……喋るのか」

クリスタルスカル『喋る。ただし、この宮殿では嘘は重い罪だ。私は嘘をつかない』


ステラ「……先ほどの男は」

クリスタルスカル『欲に目がくらんでいた。だから浄化した。良い人格に上書きした後、外へ送った。悪意を持つ者を、宮殿の中に置いておくわけにはいかない』


虎「浄化、か」

クリスタルスカル『そうだ。この宮殿では、悪意も嘘も重罪だ』


虎「一つ聞きたい」

クリスタルスカル『何でも聞くといい。私は嘘をつかない』


虎「この宮殿は、いつからある」

クリスタルスカル『三千年前だ。月文明によって建てられた』

ステラ「……月文明、ですか」

クリスタルスカル『月にあった文明の遺構だ。彼らは、様々な技術をこの地上にも残した』


虎「人格を変えるほどの刑がある理由は」

クリスタルスカル『月文明は、資源が有限だった。限られた資源の中で文明を維持するには、悪意や争いを許容できなかった。そうでなければ、彼らの文明は存続できなかったのだろうな』


なるほど


虎(限られた場所で、限られた資源で生きる。それには、そういう仕組みが必要だったのか)


ステラ「……月には、今も文明がありますか」

クリスタルスカル『わからない。私が作られてから、連絡は途絶えている』


しばらく、

沈黙があった。


クリスタルスカル『……お前たちは、嘘をついていないな』

虎「ついていない」

クリスタルスカル『わかる。だから、話しやすい』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


虎はホールの床に座った。


虎「腹が減った」

ステラ「準備します」


ステラが荷物を開いた。


残っていた保存食と、

砂漠で買ったトウモロコシを取り出した。


ステラ「調理します」


トウモロコシの皮を剥いた。


ステラ「……皮は剥きやすいですね」


緑の皮が、

するするとほどけていく。


中から、

白いひげ根が大量についた黄色い実が出てきた。


ステラ「ひげ根が多いですね」

虎「甘みが強い証拠だと、街の屋台の主が言っていた」


ステラはひげ根を丁寧に取って、

芯を折ろうとした。


ステラ「……包丁では、芯が固くて切りにくいですね」

虎「貸せ」


虎が両手でトウモロコシを持って、

力を込めた。


バキッ。


きれいに折れた。


ステラ「……そういうやり方もあるのですね」

虎「芯は固い。包丁より、折った方が早い」


ステラが小鍋に水を張って、

火魔法で沸かした。


トウモロコシを入れると、

いい匂いが立ち上がった。


しばらくして、

ステラが引き上げた。


虎は一口かじった。


虎「……」


茹でたての粒が、

プチプチと弾けた。


甘い汁が、

口の中に広がる。


昨日の焼きトウモロコシとも、

蒸したものとも違う。


茹でることで、

甘みが水に少し溶け出して、

全体がまろやかになっていた。

粒の食感だけは、

鮮やかなままで、

一粒ごとにプチッとはじける感触が続いた。


虎「……うまい。茹でると、また違うな」

ステラ「三種類の調理法で、全部食べましたね」

虎「焼き、蒸し、茹で。どれも違う」

ステラ「一番はどれですか」

虎「甲乙つけがたい」


クリスタルスカルが、

ふわりと浮いて、

虎の近くに来た。


クリスタルスカル『……その果実、少し分けてもらえるか』


虎「……食べるのか」

クリスタルスカル『私にも、味を感じる機構がある。月文明の技術だ』


ステラ「……クリスタルスカルも、食べるんですね……」


ステラは少し戸惑った顔をした。


虎はトウモロコシの一粒を、

クリスタルスカルに近づけた。


粒が、

スカルの中に吸い込まれるように消えた。


クリスタルスカル『……』


しばらく、

沈黙があった。


クリスタルスカル『……うまい』

虎「そうか」

クリスタルスカル『三千年ぶりの味だ。これは、うまい』


ステラが少し笑った。


ステラ「……感想が、虎様と同じですね」

クリスタルスカル『似た者同士かもしれない』


虎はもう一粒、

クリスタルスカルに近づけた。


虎「もう少し食うか」

クリスタルスカル『……もらう』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


しばらく食事をした後、

虎はクリスタルスカルに聞いた。


虎「お前は、これからどうする」

クリスタルスカル『……わからない。私の役目は、宮殿を守ることだった。守護者はもういない。宮殿を守る意味は、あるのかどうか』


ステラ「……私たちと来ますか」


クリスタルスカルが、

少し揺れた。


クリスタルスカル『……それは、可能なのか』

虎「持っていけばいいだけだ」

クリスタルスカル『……そうか』


しばらく、

クリスタルスカルは黙っていた。


クリスタルスカル『……考えさせてくれ。三千年、ここにいた。すぐには決められない』

虎「急がなくていい」


夕日が、

クリスタルの壁を通して、

ホールに差し込んでいた。


虹色の光が、

床に落ちていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「ラシードさんは、ワープさせられました」

虎「良い人格になったらしいが」

ステラ「街で見つかるでしょうか」

虎「グリンドの残りはどうなるか、わからないな」

ステラ「クリスタルスカルさんも、まだ決めかねているようです」

虎「そうだな」

ステラ「三千年は、長い時間ですね」

虎「俺の一万年よりは短い」

ステラ「……虎様が言うと、説得力が違います」

虎「そうか」

ステラ「次回、『虎が、宮殿を出る』」

虎「決着がつくか」

ステラ「クリスタルスカルさんの答え次第です」

虎「面白い答えだといいな」

ステラ「……おおむね、どんな答えでも面白いと思います」

虎「おおむね、か」

ステラ「虎様が絡むと、たいてい面白くなりますので」

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