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虎無双、虎無双。  作者: BB
3章

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36/112

第36話「虎が、廃墟を調べる」

翌朝、

砂漠の方角に向かった。


街を出ると、

すぐに砂が始まった。


ステラ「廃墟まで、徒歩でおおむね二時間です」

虎「そうか」

ステラ「砂漠は昼になると熱くなります。早めに動いて正解でした」


朝の砂漠は、

まだ涼しかった。


風が砂を運んで、

足元を流れていく。


虎(静かだ)


虎(この静けさは、エンド島の静けさと少し似ている)


ステラ「虎様、グリンド盗賊団についてもう少し調べました」

虎「何がわかった」

ステラ「規模は三十人前後。武器は短剣と弓が中心で、緑の刃は特殊な鉱石を加工したものだそうです。盗賊団としては組織立っていて、統制が取れているようです」

虎「厄介な相手か」

ステラ「個人の強さというより、連携が厄介なようです。ギルドの討伐失敗例を見ると、数で押し込まれているケースが多い」

虎「そうか」


ステラ「廃墟については、こんな記録があります。数百年前に砂漠に埋もれた古代都市の一部だそうです。内部に謎の石碑と、複数の部屋が確認されていますが、構造が複雑で全貌は不明と」

虎「謎の石碑、か」

ステラ「古代語で書かれているようで、解読できた者がいないと」


虎(古代語か)


虎(一万年前の俺なら、読めるかもしれない)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


二時間ほど歩くと、

砂漠の中に、

石造りの構造物が見えてきた。


半分砂に埋もれていたが、

入り口らしき開口部が残っていた。


虎「ここか」

ステラ「はい。グリンドの痕跡も、この周辺に集中しています」


入り口の周りを見た。


砂の上に、

足跡があった。


複数の人間が、

最近出入りした跡だった。


虎「中に入るか」

ステラ「……罠がある可能性があります」

虎「そうだな。どんな罠だ」

ステラ「古代の遺跡によくある石板を踏むと床が抜けるもの、重さに反応するもの、光や音に反応するものなど、様々です」

虎「お前が感知できるか」

ステラ「魔力反応がある罠は感知できます。物理的な罠は……見た目で判断するしかありません」

虎「俺が先に行く。お前は後ろから」

ステラ「……わかりました」


中に入った。


通路が続いていた。


石の壁に、

何かが刻まれている。


ステラが近づいて見た。


ステラ「……文字です。古代語ですか、虎様」

虎「そうだ。読める」

ステラ「何と書いてありますか」

虎「……三つの鍵、一つの扉、順を誤れば戻れない、と書いてある」

ステラ「謎かけですね」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


通路を進むと、

三又に分かれた。


それぞれの入り口の上に、

古代語で文字が刻まれていた。


虎「左は水、中は火、右は風と書いてある」

ステラ「三つの鍵、というのがこれですか」

虎「おそらく。順番があると書いてあった」

ステラ「どの順番で入るのが正解でしょうか」

虎「……砂漠の遺跡だ。砂漠に関係する順番じゃないかと思う」

ステラ「砂漠と言えば、まず風が砂を運び、水が湧き、火が……」

虎「砂漠では火は最後だ。火おこしは水と風があってからになる」

ステラ「風、水、火の順ですか」

虎「試してみる」


右の通路に入った。


風の通路は、

壁に風車のような装置が並んでいた。


進むたびに、

装置が回転した。


奥に、

緑色の石があった。


ステラ「……これが鍵ですか」

虎「そうだろう」


石を手に取ると、

光った。


次に左の通路へ。


水の通路は、

床に浅い水が張っていた。

壁に、

水の流れを示す溝が刻まれている。


奥に、

青い石があった。


それも取った。


最後に中央の通路へ。


火の通路は、

壁に松明が並んでいたが、

全て消えていた。


虎「暗いな」

ステラ「指先に火を灯します」


ステラの指先に、

小さな炎が現れた。


通路が照らされた。


奥に、

赤い石があった。


三つ揃えると、

遠くで、

何かが動く音がした。


ステラ「……扉が開いたようです」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


三又の分岐点に戻ると、

中央奥に新しい通路が現れていた。


その入り口に、

三つの石をはめる窪みがあった。


虎が順番にはめると、

通路の奥が開いた。


中に入ると、

広い部屋があった。


中央に、

大きな石碑が立っていた。


そしてその横に、

黒い外套に緑の装飾をした人間が、

三人いた。


グリンド盗賊団だった。


男「……来たか。謎を解いて入ってきたのか」


男が緑の刃を抜いた。


男「いい度胸だ。だが、ここまで来たのはお前たちが最初じゃない。俺たちも解いて入った」


虎「何を探している」

男「石碑に書いてある場所だ。砂漠の奥に、埋蔵財宝があると書いてある。それを読もうとしているが、古代語が読めなくてな」


虎はちらりと石碑を見た。


虎(……確かに、古代語で何かが書いてある)


虎(場所が書いてあるのは本当のようだ)


男「お前、古代語が読めるのか」

虎「読める」

男「じゃあ、教えてくれ。報酬は出す」

虎「断る」

男「……なぜだ」

虎「お前たちが何に使うかわからないからだ」


男の目が、

細くなった。


男「なら、力ずくで」


三人が動いた。


虎は一歩前に出た。


どごん。


一人目が吹き飛んだ。


ステラが残り二人の間に入り込んで、

一人の手首を取って投げ、

もう一人の刃を外して肘で打った。


三人が床に転がった。


ステラ「……終わりました」

虎「早かった」

ステラ「慣れています」


男が床から虎を見上げた。


男「……なんだ、お前」

虎「虎だ」

男「……それ以上は?」

虎「それだけだ」


男は少し黙ってから、

起き上がった。


男「……わかった。引く。ただ、一つだけ教えてくれ。石碑に何が書いてある」

虎「砂漠の西に眠る水源の場所が書いてある。財宝ではない」

男「……水源か」

虎「砂漠の民が昔、争いを避けるために隠した場所だろう。財宝目的で掘り返すものじゃない」


男はしばらく虎を見た。


それから、

仲間を連れて出て行った。


ステラ「……よかったのですか。逃がして」

虎「情報が目的なら、もう来ない。財宝がないとわかったからだ」

ステラ「……そうですね」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


石碑を改めて読んだ。


虎「……面白いことが書いてある」

ステラ「何ですか」

虎「この遺跡を作った民は、砂漠と海の両方を治めていた。水源を守ることが、街を守ることだったと」

ステラ「今のサンドポートの先祖ですか」

虎「そうだろう。灌漑農業の技術も、ここから来ているのかもしれない」


ステラは石碑を見た。


ステラ「……この街には、長い歴史があるのですね」

虎「昨日そう言っただろ」

ステラ「……言いました。石の古さでわかると」

虎「その通りだった」


二人は遺跡を出た。


昼の砂漠は、

熱かった。


ステラ「急いで街に戻りましょう。日差しが強くなっています」

虎「ああ」


ステラが荷物から、

布を取り出した。


ステラ「街を出るときに買っておきました。砂漠用の日除けです」

虎「用意がいいな」

ステラ「いつものことです」


虎に布をかけた。


砂漠の風が、

布を揺らした。


街への道を、

二人で歩いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


街に戻ると、

ステラが市場の屋台に寄った。


トウモロコシを蒸して、

砂漠の香辛料と海塩で味付けしたものが売られていた。


昨日の焼きトウモロコシとは違う調理法だった。


虎は一口食べた。


虎「……」


蒸されたことで、

粒がふっくらしていた。

甘みは昨日より落ち着いていて、

その分、

塩と香辛料の旨みが前に出てきた。

砂漠の香辛料の複雑な香りが、

海塩の塩気と混ざって、

深みのある味になっていた。


虎「……昨日と同じ素材なのに、違う味だ」

ステラ「調理法が変わると、引き出される味が変わりますね」

虎「そうだな」

屋台の主「焼くと甘みが出て、蒸すと旨みが出るんだよ。どっちも好きな人が多いね」

虎「両方うまい」

屋台の主「それが正解だよ!」


ステラも食べた。


ステラ「……確かに、違いますね。昨日の方が好きですか、今日の方が好きですか」

虎「甲乙つけがたい」

ステラ「……そういう答えも、虎様らしいですね」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「廃墟の謎、解けましたね」

虎「古代語が読めてよかった」

ステラ「一万年前の知識が役に立ちましたね」

虎「そういうこともある」

ステラ「グリンド盗賊団は、退きましたね」

虎「財宝がないとわかれば来ない」

ステラ「……黒牙ではなかったですが」

虎「そうだな」

ステラ「黒牙の件は、また別の機会に」

虎「ああ」

ステラ「次回、『虎が、サンドポートの海に出る』」

虎「船か」

ステラ「海の民に誘われたようです」

虎「そうか」

ステラ「……おおむね、何かあります」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です。砂漠の次は海ですから」

虎「変化があっていい」

ステラ「虎様が変化を喜ぶのは、旅が合っている証拠だと思います」

虎「そうかもしれない」

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