↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虎無双、虎無双。  作者: BB
3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/112

第35話「虎が、サンドポートに着く」

砂漠を夜通し歩いて、

夜明けにサンドポートが見えてきた。


ステラ「……見えましたね」

虎「ああ」


丘の上から見下ろすと、

街が広がっていた。


左に砂漠、

右に海。


その境目に、

街が挟まれていた。


ステラ「不思議な場所ですね。砂と海が、こんなに近くにある」

虎「一万年前にも、こういう場所はあった。だが、あの頃は通り過ぎただけだった」

ステラ「今回は違いますか」

虎「ゆっくり見る」


街に入ると、

砂漠の乾いた空気と、

海の潮の匂いが混ざっていた。


建物が、

白い石造りで統一されている。

砂漠の熱を反射するためだろう。


道行く人間が、

様々な格好をしていた。


砂漠の民らしき、

布をまとった人々。

海の民らしき、

軽装の人々。


ステラ「……混ざっていますね、文化が」

虎「ナイトポップシティーとは別の混ざり方だ」

ステラ「どう違いますか」

虎「あっちは光が混ざっていた。こっちは風が混ざっている」


ステラは少し考えた。


ステラ「……なるほど」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


まず、

ギルドに寄った。


受付が虎の登録証を見て、

少し目を止めた。


受付「……虎様、ですか。こちらの支部にもお噂が届いています」

虎「そうか」

受付「アイスフェニクスとミスリルリザードの討伐記録、本部から共有されています。ランクの更新手続きをお願いします」


受付が書類を出してきた。


ステラ「ランクが上がりましたね、虎様」

虎「そうか」

受付「Bランクへの昇格です。条件を大幅に超えた討伐実績として処理されています」

虎「わかった」


手続きをしながら、

虎は受付に聞いた。


虎「この辺りで、砂漠の廃墟に出入りしている集団がいると聞いた」

受付「……ああ、それはグリンド盗賊団ですね」

虎「グリンド」

受付「黒い外套に、緑の刃を使うことで知られています。最近、この地域で活動が活発化していて、ギルドでも警戒しています」

ステラ「黒牙、ではないのですか」

受付「黒牙とは別の組織です。グリンドは純粋に金目的の盗賊団で、規模は小さいですが、廃墟から何かを持ち出そうとしているようです」


虎(黒牙ではなかった、か)


虎(だが、廃墟に何があるのかは気になる)


受付「ギルドでもグリンドの調査依頼が出ています。Bランク向けの案件です。よろしければ」

虎「後で考える」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ギルドを出て、

街を歩いた。


港の方向に、

賑やかな市場があった。


魚介類が並んでいる。


その隣に、

見慣れないものがあった。


黄色い、

大きな穂のようなものが山積みになっていた。


虎「……これは何だ」

ステラ「トウモロコシです。この街の名産のようです。砂漠の端に灌漑農業で作られた畑があって、そこで育てているようです」

虎「灌漑農業か」

ステラ「砂漠に水路を引いて農業をする技術です。この街の人々が、長い年月をかけて整備したようです」


屋台の主が声をかけてきた。


屋台の主「旅人か。トウモロコシ、食べてみるか。焼きたてだよ」


太いトウモロコシが、

炭火で焼かれていた。


表面が、

ところどころ焦げて香ばしい匂いがする。


虎は一本受け取って、

かじった。


虎「……」


甘みが、

強い。


砂漠の強い日差しで育ったからか、

糖度が高かった。

噛むと、

粒がぷちっと弾けて、

甘い汁が出てきた。

焦げた部分は香ばしくて、

甘みと香ばしさが交互に来る。

後味は、

すっきりしていた。


虎「……うまい」

屋台の主「砂漠育ちのトウモロコシは甘さが違うんだよ。水が少ない分、甘みが凝縮されるんだ」

虎「そういうことか」


ステラも一本受け取って、

かじった。


ステラ「……粒が、弾けますね」

屋台の主「そうそう。新鮮なやつじゃないと、この感触は出ないんだよ」

ステラ「……うまいです」

屋台の主「ありがとう、人形さん」


虎は二本目を受け取った。


ステラ「虎様、食が進んでいますね」

虎「うまいからだ」

ステラ「……シンプルな理由ですね」

虎「それ以外の理由が必要か」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


港の方へ歩いた。


海が見えてきた。


砂漠側から来ると、

海の青さが余計に際立って見えた。


ステラ「……砂漠と海が、こんなに近いのは珍しいですね」

虎「ああ」

ステラ「砂の色と、海の色が、並んでいる」


漁師が、

網を広げていた。


虎「この街は、長い街だな」

ステラ「どういう意味ですか」

虎「歴史が長い。建物の石が、色々な時代のものが混ざっている。古い部分と新しい部分が、自然に並んでいる」

ステラ「……虎様は、そういうことに気づくのですね」

虎「一万年いると、石の古さでだいたいわかる」


ステラは街を見渡した。


ステラ「……確かに。端末の地図データより、実際の建物の方が古い部分が多いですね」

虎「ここは昔から、砂漠と海の境目だったんだろ。どちらの民も、ここに集まってきた」


漁師の一人が虎を見て、

手を止めた。


漁師「……でかい虎だな。旅人か」

虎「そうだ」

漁師「どこから来た」

虎「遠いところだ」

漁師「砂漠を越えてきたのか」

虎「夜に歩いた」

漁師「……そりゃあ大変だったな。飯は食ったか」

虎「トウモロコシを食べた」

漁師「それだけか。うちの今日の漁、持っていくか。余ってるから」


漁師が、

魚を二匹渡してきた。


銀色の、

大きな魚だった。


虎「ありがとう」

漁師「この街の魚は砂漠の風が当たるから、身が締まってうまいぞ」


ステラが魚を受け取った。


ステラ「……夕食にします」

漁師「人形が料理するのか」

ステラ「はい」

漁師「……変わった旅人だな」


漁師が笑った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


宿を取ってから、

宿の庭で火を起こした。


ステラが魚を捌いて、

砂漠の香辛料と塩で味付けして、

炭火で焼いた。


虎は一口食べた。


虎「……」


身が、

締まっていた。


漁師の言った通りだった。

嚙むと、

弾力がある。

砂漠の香辛料が、

海の魚の旨みを引き立てていた。

砂漠と海の味が、

一枚の魚に混ざっていた。


虎「……この街らしい味だ」

ステラ「そうですね。砂漠の香辛料と、海の魚が合わさっています」

虎「土地の味がする」

ステラ「……虎様は、そういう言い方をしますね」

虎「そうか」

ステラ「土地の味、という感覚は、長く旅をしないとわからないのかもしれません」


夜風が吹いた。


砂漠の乾いた風と、

海の湿った風が、

交互に来た。


虎「明日、廃墟の方を調べる」

ステラ「グリンド盗賊団の件ですね」

虎「黒牙ではないが、廃墟に何があるかは気になる」

ステラ「……同じ廃墟でも、黒牙が関係しているとなると、話が変わりますか」

虎「そうだな。今のところ無関係だろうが、確認しておきたい」

ステラ「わかりました。明日、情報を整理します」


虎は魚の骨を丁寧に外しながら、

夜の空を見た。


砂漠の星は、

多かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「サンドポートに着きました」

虎「面白い街だ」

ステラ「砂漠と海が隣にある、というのが独特ですね」

虎「土地の味がした」

ステラ「……虎様の感想は、いつも料理に帰着しますね」

虎「うまかったからだ」

ステラ「次回は廃墟の調査ですが」

虎「ああ」

ステラ「グリンド盗賊団と、遭遇するかもしれません」

虎「そうだろうな」

ステラ「……おおむね、穏やかにはならないと思います」

虎「おおむね、か」

ステラ「次回、『虎が、廃墟を調べる』」

虎「何があるかわからないのが、面白い」

ステラ「……虎様が面白いと言う場所は、たいていそうなりますね」

虎「そうか」

ステラ「おおむね、そうです」

虎「おおむね、か」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。