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虎無双、虎無双。  作者: BB
3章

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32/109

第32話「虎が、巨大ヒューマノイドと戦う」

夜明け前の街は、

静かだった。


虎「……来るぞ」

ステラ「はい。感知しています」


街の外れから、

地響きが聞こえてきた。


レモン「……検出されました。感染ヒューマノイドが、街の北端で合体を始めています」

ドラゴン「合体、か。やはりそうなったか」

アップル「どのくらいの大きさになる?」

ドラゴン「……数によっては、ビルを超える」


全員が、

北の方角を見た。


暗い空の向こうに、

何かが立ち上がっていく影があった。


ミカン「……でかい」

カシス「これが、ウイルスの最終手段か」


巨大ヒューマノイドが、

完全に立ち上がった。


高さは、

周囲のビルと同じくらいだった。


目が赤く光っている。


アップルが虎を見た。


アップル「……虎」

虎「わかってる」


虎はステラを見た。


虎「合体モードだ」

ステラ「はい」


魔力鎖が、

光の粒から現れた。


鎖がステラの腰と、

虎の背を繋いだ。


ミカン「合体モード!!」

カシス「……お前たちは歌え。私たちは歌で支援する」

アップル「わかった! 虎、ステラちゃん、行って!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


虎は走った。


ステラが背に乗ったまま、

鎖が揺れた。


虎(でかい。だが、でかいだけなら問題ない)


巨大ヒューマノイドが、

腕を振り下ろした。


ビルの角が、

砕けた。


虎は跳んだ。


ステラ「上に行きます」

虎「ああ」


ステラが魔力を走らせた。


虎の背に、

風魔法の羽が現れた。


大きな、

白い羽だった。


虎(……これが、合体モードの魔法か)


虎(ステラが式を組んで、俺が力を流す)


羽が広がって、

二人が空に上がった。


ミカン「飛んだ!! 虎が飛んだ!!」

アップル「行けーー!!」


プリンシパルプリンシパルが歌い始めた。


六人の声が、

夜明け前の街に響いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


空から見ると、

巨大ヒューマノイドの全体像がわかった。


無数の感染ヒューマノイドが、

絡み合って一つの体を作っていた。


ステラ「……核心がどこかを探します」

虎「ああ」

ステラ「合体した個体の中心に、ウイルスの密度が最も高い場所があるはずです。そこを壊せば」

虎「崩れる、か」

ステラ「はい」


巨大ヒューマノイドが、

こちらに気づいた。


腕が、

空に向かって伸びてきた。


虎「来るぞ」

ステラ「わかっています」


羽を畳んで、

急降下した。


腕が空を切った。


すれ違いざまに、

虎は腕の表面を蹴った。


どごん。


巨大ヒューマノイドが、

わずかによろけた。


ステラ「……核心の位置が見えました。胸の中央、やや左です」

虎「届くか」

ステラ「届かせます。魔法式を組みます」

虎「頼む」


虎は羽を広げて、

正面に向かった。


巨大ヒューマノイドが、

両腕を広げた。


前後から、

挟み込もうとしてくる。


虎「ステラ」

ステラ「……もう少しです」


腕が迫る。


虎は速度を上げた。


腕と腕の間を、

すり抜けた。


どごん、どごん。


腕が後ろで閉じた。


胸の中央が、

目の前にあった。


ステラ「式が完成しました。虎様、魔力を」

虎「流す」


光が、

集まった。


ステラの式に、

虎の魔力が流れ込んだ。


ズバァァァ。


光が、

弾けた。


巨大ヒューマノイドの胸に、

穴が開いた。


赤い光が、

急速に薄れていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


巨大ヒューマノイドが、

崩れ始めた。


無数の感染ヒューマノイドが、

ばらばらになって落ちていった。


赤い目が、

一つずつ消えていった。


地面に落ちた個体から、

ヒューマノイドたちの声が聞こえてきた。


ヒューマノイド「……私、何を」

ヒューマノイド「……体が、動かない」

ヒューマノイド「……あれ、なんで外にいるの」


戻っていった。


全員が、

戻っていった。


虎とステラは、

ゆっくりと地面に降りた。


羽が消えた。


鎖が、

静かに消えた。


ステラ「……倒れた個体の確認をします。死者はいません。おおむね、軽傷以下です」

虎「そうか」


東の空が、

白くなり始めた。


夜が、

明けていった。


ステラ「……夜が、明けますね」

虎「ああ」


アップルが走ってきた。


アップル「虎!! ステラちゃん!!」


五人が、

全員走ってきた。


ミカン「やった!! やったよ!!」

レモン「……感染ヒューマノイドの反応が、全て消えました。ウイルスの活動が停止しています」

ドラゴン「……本当に、倒したのか」

カシス「……倒した」


カシスが、

珍しく、

空を見上げた。


カシス「……終わった」


朝の光が、

街に差し込んでいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


広場に、

人が集まってきた。


戦いを遠くから見ていた市民たちだった。


警備隊員「……終わったのか」

虎「ああ」

警備隊員「……全員、戻ってるのか? 感染していた奴らは」

ステラ「確認しています。全員、戻っています」


広場に、

じわじわと歓声が広がった。


アップルがステラの手を握った。


アップル「ステラちゃん、ありがとう。来てくれて、ありがとう」

ステラ「……いいえ」


ステラは少し間を置いた。


ステラ「私も、ここに来てよかったです」


ミカンが泣いていた。


ミカン「よかったーー!! 本当によかったーー!!」

レモン「……ミカン、泣いてます」

ミカン「泣くでしょ!! こんな状況!!」

ドラゴン「……私も、少し泣きそうだ」

カシス「……うるさい」


カシスの目が、

少し赤かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


広場の観客から、

声が上がった。


観客「アンコール!!」

観客「もう一曲!!」


アップルが振り返った。


アップル「……もう一曲、やろうか」

カシス「……そうだな」


アップルが虎を見た。


アップル「虎も、一緒に歌おう」

虎「俺は歌わない」

アップル「え、なんで」

虎「歌ったことがない」

ミカン「それ言ったらステラちゃんも最初そうだったじゃん!!」

虎「俺は違う」


ステラが虎の隣に来た。


ステラ「虎様」

虎「何だ」

ステラ「……一緒に歌いましょう」


虎はステラを見た。


ステラが、

笑っていた。


普段より、

少し大きな笑顔だった。


虎「……」


虎は少し黙った。


虎「……仕方ないな」

ミカン「やった!!!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


七人がステージに立った。


朝の光が、

ステージを照らしていた。


音楽が流れた。


七人が歌い始めた。


虎の声は、

低くて、

少しぶっきらぼうだった。


だが、

七人の声に混ざった。


ミカンが虎の隣で、

こっそり笑っていた。


カシスが珍しく、

口の端を上げていた。


ステラが虎の隣で歌いながら、

虎を見た。


ステラ(……虎様が、歌っている)


ステラ(一万年前の虎には、こういう場面はなかっただろう)


ステラ(今は、ある)


朝の光が、

街全体に広がっていった。


観客の歓声が、

空に響いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「歌いましたね、虎様」

虎「……一回だけだ」

ステラ「また歌いますか」

虎「しない」

ステラ「……そうですか」

虎「何だ」

ステラ「いいえ。ただ、よかったです」

虎「何がだ」

ステラ「虎様の笑顔が見られたので」

虎「笑っていたか」

ステラ「……おおむね、笑っていました」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です」

虎「次の予告をしろ」

ステラ「次回、『虎が、ナイトポップシティーを去る』」

虎「そうなるな」

ステラ「アップルさんたちと、別れます」

虎「ああ」

ステラ「……寂しくないですか」

虎「また会うだろ」

ステラ「根拠は」

虎「この世界は、面白い奴が集まってくる」

ステラ「……それは、コウさんに言ったのと同じですね」

虎「そうだったか」

ステラ「そうでした」

虎「……じゃあ、また会う」

ステラ「はい。また会いましょう」

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