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虎無双、虎無双。  作者: BB
2章

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19/72

第19話「虎が、魔法火力修行を終える」

ノースピアの街が、

いつもと違った。


虎「……なんだ、この賑わいは」

ステラ「スノーピア祭です。年に一度の雪祭のようです」


大通りに、

屋台が並んでいた。

人が行き交って、

笑い声が聞こえる。

街の至る所に、

雪で作られた飾りが置かれていた。


コウ「あ、これ有名なやつだ。雪像大会があるんだよな」

虎「雪像大会」

コウ「チームで雪像を作って、出来栄えを競う。それで優勝するとすごい賞品が出るって聞いた」

ステラ「クリアメロンですね」

コウ「知ってるの?」

ステラ「調べておきました。白鷺の洞窟という、この地方随一の魔力洞窟に年に一個しかできない果実です。自身の魔力蜜で皮の代わりに自分をコーティングしていて、天然のフルーツ飴のような状態になっているとのことです。非常に珍しく、非常にうまいと記録があります」


虎「……魔力を持つ果実か」


虎(食べたい)


虎(いや、修行の素材としても有用だろう、そういうことだ)


コウ「出るか? 雪像大会」

虎「出る」

コウ「即答!?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


参加登録を済ませると、

会場の広場に案内された。


広場には、

すでに数チームが雪を集め始めていた。


コウ「見てよ、あのチーム。竜を作ろうとしてるな。でかい」

ステラ「こちらのチームは城を作っています。精巧ですね」

コウ「俺たちは何を作る?」


虎「ステラを作る」


コウ「……え」

ステラ「……え」


虎「一番見栄えがいい。ステラが一番いいだろう」


コウ「まあ……確かに?」

ステラ「……私を、雪像で」


ステラはしばらく黙った。


ステラ「……わかりました」

コウ「恥ずかしくない?」

ステラ「恥ずかしくはありません」


ステラは少し、

顎を上げた。


ステラ「自信があります」

コウ「……頼もしいな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


虎が雪を集め、

コウが形を整え、

ステラが細部を指示した。


ステラ「髪の流れは、もう少し右側に。エプロンの端はここで折れています」

コウ「細かいな」

ステラ「正確性が大事です」

コウ「自分の像に自分でダメ出しするの、なんか笑えるな」

ステラ「笑えません。完成度の問題です」


虎が黙々と雪を積み上げていく。


コウ(虎、なんか楽しそうだな……)


コウ(こういうの、好きなのかな)


虎(一万年前に雪を見たことはあった。だが、こうして形を作ったことはなかった)


虎(悪くない)


隣のチームが、

巨大な竜の雪像を完成させた。


コウ「すごいな、あれ。でも」


コウが自分たちの雪像を見た。


ステラの雪像が、

そこに立っていた。


白い防寒コート。

結い上げた紫の髪。

静かな目。

口の端が、

わずかに上がっている。


コウ「……これ、めちゃくちゃ似てるな」

ステラ「当然です」

コウ「俺たち、けっこういい線いくんじゃないか」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


審査が始まった。


審査員が各チームの雪像を見て回った。


竜の雪像。

城の雪像。

巨大な熊の雪像。

空飛ぶ魚の雪像。


そして、

ステラの雪像の前で、

審査員が止まった。


審査員「……これは」

審査員「本物がいるのか」


コウ「こちらです」


ステラが前に出た。


審査員が雪像とステラを、

交互に見た。


審査員「……精巧すぎる。細部まで完全に一致している」

ステラ「ありがとうございます」


審査員がしばらく黙った。


それから、

次へ進んだ。


結果発表。


司会「優勝、虎チーム。ステラ像。審査員全員一致の満点でした」


コウ「やった!!」

ステラ「……ふふ」


ステラは珍しく、

小さく笑った。


虎「満足か」

ステラ「……はい。自信がありましたので」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


賞品のクリアメロンが、

三人の前に置かれた。


透明な飴のような膜に包まれた、

白い果実だった。

内側から、

かすかに光が漏れている。


虎は一口、食べた。


虎「……」


最初に、

パキパキとした食感。

飴の甘みが来た。

魔力蜜が凝縮されたような、

深みのある甘さだ。

それが溶けると、

中の果実の瑞々しさが広がった。

メロンの香りだが、

それより遥かに濃い。

甘みと、

僅かな酸味と、

魔力特有のじんわりとした余韻が、

三層になって押し寄せてくる。


食べ終わった後も、

口の中に甘みが残った。


虎「……これは、別格だ」

コウ「うまい!! なんだこれ!!」

ステラ「……甘みが、何重にも重なっています」

コウ「天然のフルーツ飴って、本当だったんだな」


虎は目を閉じた。


虎(魔力が、体に入ってくる感触がある)


虎(これで、おおむね目処が立った)


口の端が、

上がった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夜になった。


祭の会場は、

相変わらず賑わっていた。


コウ「祭の最後は花火らしいぞ」

ステラ「打ち上げは街の職人が担当するようです」


虎「一つ、いいか」

ステラ「何でしょう」

虎「俺が上げる」


コウ「え、花火を?」


虎は空を見上げた。


それから、

右手に魔力を集めた。


クリアメロンで取り込んだ魔力が、

体の中で響いていた。


虎(これが、修行の総量だ)


虎(使ってみる)


虎は魔法を放った。


パシュゥ。


光が、

夜空に向かって飛んだ。


それが弾けた瞬間、

色とりどりの光が広がった。


街中から、

歓声が上がった。


コウ「……でかい。めちゃくちゃでかい花火だ」

ステラ「……虎様」

虎「どうだ」

ステラ「……魔力の出力が、修行前と別物です」


虎は空を見ながら、

もう一発放った。


また、

光が広がった。


コウ「すごいな……花火が虎の魔法になってる」

ステラ「修行の、成果ですね」


虎「ああ」


光が、

夜空に広がっていく。


北の星と、

虎の花火が、

混ざり合っていた。


コウ「……きれいだな」

ステラ「……はい」


虎は何も言わなかった。


だが口の端が、

また上がっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「魔法火力修行、終わりましたね」

虎「ひとまずは」

ステラ「次は魔力細部修行ですか」

虎「ああ。火力を上げても、細かい制御ができなければ意味がない場面がある」

ステラ「古代兵器の核心を壊したとき、ですか」

虎「あのとき、力の入れ方が雑だった。もう少し精密にできれば、早く終わっていた」

ステラ「なるほど。おおむね、修行の方針が見えてきました」

虎「おおむね、か」

ステラ「次回、『虎が、魔力細部修行をする』」

虎「地味になるぞ」

ステラ「構いません」

虎「なぜだ」

ステラ「虎様の修行を見ていると、地味な場面でも面白いので」

虎「……そうか」

ステラ「はい。今夜の花火も、そうでした」

虎「花火は修行じゃない」

ステラ「……わかっています」

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