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虎無双、虎無双。  作者: BB
1章

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11/16

第11話「虎が、カイエルと戦う」

カイエルが一歩、前に出た。


長い黒髪が、

ステラの炎の光の中で揺れた。


カイエル「虎。一つ確認させてくれ」

虎「何だ」

カイエル「お前、本気で戦うつもりか」

虎「当たり前だろ」

カイエル「……よかった。手を抜かれると、つまらないから」


カイエルは上着を脱いだ。

その下に、

薄い黒の戦闘服。

長身が、

すっと伸びる。


カイエル「じゃあ、始めよう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


最初の一撃は、

速かった。


カイエルの右手に、

黒い刃が現れた。

魔法で生成した刃だ。

それが、

虎の首筋めがけて走った。


虎は半歩横にずれた。


刃が、

壁を削った。


石の粉が舞う。


カイエル「……避けるのか」

虎「当たる理由がない」

カイエル「そうか」


二撃目が来た。

今度は下から。


虎は腕で受けた。


ごん、という音。


カイエルが後退した。

手首を押さえている。


カイエル「……硬いな」

虎「そうか」

カイエル「普通、腕で魔法刃を受けようとは思わない」

虎「切れなかったろ」

カイエル「……切れなかった」


カイエルは手首を回して、

刃を作り直した。


今度は、

両手に。


カイエル「魔法刃を二本同時に扱えるのは、この辺りでは俺だけだと言われている」

虎「そうか」

カイエル「自慢話だ。聞いてくれ」

虎「聞いた」


虎は一歩、前に出た。


カイエルが両の刃を交差させて、

虎の正面に構えた。


虎(速い。人間にしては、かなり速い)


虎(一万年前には、こういう動きができる人間はいなかった)


虎の口の端が、

上がった。


どごん。


虎の右腕が、

交差した刃ごとカイエルを押した。


カイエルが石壁に叩きつけられた。


だが、

立っていた。


壁に手をついて、

体を支えている。

息が、荒い。


カイエル「……強い」

虎「そうか」

カイエル「本当に強い。化け物みたいだ」

虎「お前もかなり、やる」

カイエル「お褒めにあずかり光栄だね」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


少し離れたところで、

ミオとステラが八人の部下と対峙していた。


ミオ「……数が多い」

ステラ「六人担当します。残り二人はミオさんが」

ミオ「……わかった」


ステラが動いた。


音もなく三人の中に入り込んで、

一人を投げ、

一人の膝を折り、

もう一人の剣を奪った。


ミオが氷の魔法を足元に走らせた。

二人が転倒する。

その首筋に、

剣を当てた。


ミオ「……動くな」


残り三人がステラを囲んだ。


ステラ「少々お待ちください」


三人が同時に動いた瞬間、

ステラはその場にしゃがんだ。


三人の剣が、

互いをかすめた。


ステラが立ち上がりながら、

三人の手首を順番に打った。


剣が、

三本同時に落ちた。


ステラ「終わりました」

ミオ「……速すぎる」

ステラ「おおむね、全力です」


キールは壁際で、

その一部始終を見ていた。


キール「……人形が、ここまでできるとは」


キールの目が、

虎とカイエルの方に戻った。


キール(そして、あちらは)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


カイエルが、

戦い方を変えた。


一本の刃を消して、

残った一本を長く伸ばした。

リーチが、

倍以上になった。


カイエル「距離を取る。接近戦じゃ勝てないのはわかった」


長い刃が、

縦横無尽に走る。


壁を削り、

床を抉り、

通路の空気を切り裂く。


虎は全部、

体で受けた。


カイエル「……なんで避けない」

虎「避けるより、受けた方が早い」

カイエル「切れないのか、本当に」

虎「切れない」


カイエルが舌打ちした。


カイエル「……そうか。なら」


刃が消えた。


代わりに、

カイエルの全身から、

黒い霧のようなものが立ち始めた。


カイエル「魔法刃を空間に溶かす。見えない刃だ。どこから来るかわからない」


虎「……面白い」

カイエル「面白がってる場合か」


霧が、

虎に向かって収縮した。


どん、どん、どん。


連続した衝撃が、

虎の全身を叩いた。


見えない。

どこから来るかわからない。


虎は動かなかった。


全部、

受けた。


カイエル「……なんで」

虎「どこから来てもいい。受ければいいだけだ」


カイエルが息を呑んだ。


カイエル「……お前、痛くないのか」

虎「痛い」

カイエル「じゃあなんで」

虎「痛い程度なら、問題ない」


カイエルは少し黙った。


カイエル「……そうか」


霧が、

さらに濃くなった。


衝撃が、

さらに強くなった。


虎は一歩、

前に出た。


カイエル「……来るのか」

虎「ああ」


もう一歩。


衝撃が、

連続して叩いてくる。


虎は止まらなかった。


一歩、また一歩。


カイエルとの距離が、

縮まっていく。


カイエルが後退した。


カイエル「……やめろ」

虎「なぜだ」

カイエル「近づかれると、困る」

虎「知ってる」


もう一歩。


カイエルが壁に背をつけた。


虎の手が、

カイエルの黒い長髪の脇の壁に、

どすん、と置かれた。


霧が、

消えた。


カイエルの息が、

荒い。


二人の目が、

至近距離で合った。


しばらく、

誰も動かなかった。


カイエル「……負けだ」


虎「そうか」


カイエルが、

ふっと笑った。


カラスのような印象の顔が、

一瞬だけ、

どこか少年っぽく見えた。


カイエル「……強かった。本当に」

虎「お前もな」

カイエル「……俺が?」

虎「これだけ手間をかけさせた人間は、久しぶりだ」


カイエルは少し目を細めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そのとき。


扉が、開いた。


石の扉が、

重い音を立てて、

内側から押し開けられた。


ミオ「……扉が」

ステラ「鍵が使われました。中に、別の黒牙がいたようです」


虎がカイエルを見た。


カイエルは、

虎の視線を受けながら、

ゆっくりと右手を動かした。


懐から、

小さな石のかけらを取り出した。


虎「……それが、最後の鍵か」


カイエル「ああ、そしてこれが、最後の技だ」


暗闇が全力の刃を、放つ。

それはカイエルの一撃。

黒い旋風が、避けた虎の腕を傷つけた。


カイエルが虎の脇をすり抜けた。


一瞬の隙だった。

戦いが終わった、

その一瞬の。


カイエルは扉の中に向かって、

石のかけらのような鍵を投げた。


カイエル「受け取れ」


扉の奥から、

手が伸びて、

それを掴んだ。


ミオ「……くそ」


ミオが走った。

だが扉が、

また閉まり始めた。


重い石の扉が、

ゆっくりと。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


地面が、

揺れた。


ステラ「……振動を感知しました」

ミオ「何だ」

ステラ「扉の奥から、魔力の反応が急激に上昇しています」


石の壁に刻まれた紋様が、

光り始めた。


ぼうっとした、

赤い光だ。


キールが、

壁際で息を呑んだ。


キール(……起動した)


光が、

通路全体に広がっていく。


カイエルが虎を見た。


カイエル「……お前でも、止められるかどうか」


虎「やってみる」


カイエルが、

少し目を細めた。


カイエル「……楽しみにしてる」


地面が、

また揺れた。


今度は、

さっきより大きく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「古代兵器が、起動しました」

虎「そうだな」

ステラ「止められますか」

虎「やってみなければわからない」

ステラ「……虎様がそう言うのは、珍しいですね」

虎「初めて見るものだからな」

ステラ「一万年生きていても、初めてがあるのですね」

虎「ある」

ステラ「……それは、おおむね、よいことだと思います」

虎「おおむね、か」

ステラ「次回、『虎が、古代兵器を止める』」

虎「カイエルはどうする」

ステラ「……どうするのでしょうね」

虎「あいつ、面白がっていた」

ステラ「……虎様と同じ目をしていましたね」

虎「そうか」

ステラ「おおむね、厄介なことになりそうです」

虎「楽しみだ」

ステラ「一人だけ楽しそうで、複雑です」

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