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虎無双、虎無双。  作者: BB
1章

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10/13

第10話「虎が、遺跡へ入る」

虎「井戸の中、か」


神殿裏の井戸を覗き込んだ。

石の内壁に、足場が切ってある。

下から、かすかに空気が流れてくる。

かなり深い。


ステラ「梯子代わりの足場が掘られています。人が降りることを想定した造りです」

ミオ「……昔から、ここが入り口だったんだろうな」

キール「あの、降りるんですか」

虎「そうだ」

キール「……わかりました」


キールは井戸を覗き込んで、

少し青くなった。


キール(深い。かなり深い……)


虎「怖いなら上で待っていていい」

キール「……い、行きます」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


四人で、

順番に降りた。


ステラ「底まで、おおむね十五メートルほどです」

ミオ「……空気が、変わった」


底に降り立つと、

石造りの通路が続いていた。


虎(古い。かなり古い。一万年前にも、こういう場所があったかもしれない)


ミオ「……灯りが必要だな」

ステラ「対応します」


ステラの指先に、

小さな炎が灯った。

通路の壁が、

薄く照らされる。


石の表面に、

何かが刻まれている。

文字のような、

紋様のような。


ミオ「……読めるか」

ステラ「古代語です。解読には時間がかかります」

虎「後でいい。先に進む」


通路を歩き始めた。


キール「……静かですね」

虎「ああ」

キール「黒牙は、もう中にいるんでしょうか」

虎「気配はない。まだ来ていない」

キール「……そうですか」


キールは少し安堵したように、

息を吐いた。


虎(情報屋のわりに、肝が細いな)


虎(まあ、怪我人だからな)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


通路が広くなった場所で、

ミオが立ち止まった。


ミオ「……少し止まれ。確認したいことがある」


四人が壁際に寄った。


ミオ「キール。黒牙が今夜ここに来るとして、何人くらい動かすと思う」

キール「……末端の情報だと、十人前後かと。鍵を運ぶのに、それ以上は必要ないはずです」

ミオ「幹部は来るか」

キール「……わかりません。でも、来るかもしれない、とは聞いています」


ミオが虎を見た。


ミオ「……どうする」

虎「十人なら、問題ない」

ミオ「幹部が来た場合は」

虎「それはそれで、面白い」


ミオが小さく息を吐いた。


ステラが荷物から小さな包みを取り出した。


ステラ「出発前に用意しておきました。携帯食です。干し果実と、固めたナッツを混ぜたものです。動く前に少し食べておいてください」


四人に配られた。


虎は一口食べた。


虎「……」


干し果実の凝縮された甘みが、

ナッツの油脂と混ざって、

じんわりと力になる感じがした。

小さいが、

密度がある。


虎「……悪くない」

ステラ「長丁場になるかもしれないので」

ミオ「……気が利くな」

ステラ「いつものことです」


キールが包みを見た。


キール「……これ、美味しいですね」

ステラ「ありがとうございます。街の乾物屋で材料を買って、昨晩作りました」

キール「手作りなんですか」

ステラ「はい」

キール「……すごいな」


キールは少し、

表情が柔らかくなった。


ミオ「……食べ終わったら動くぞ」

虎「ああ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


通路の先に、

大きな扉があった。


石造りの、

分厚い扉だ。

扉の中央に、

窪みがある。


ステラ「……鍵穴です。形状から見て、あの木箱の中にあったものが合うはずです」

ミオ「つまり、ここが核心か」

ステラ「はい。この扉の向こうに、古代兵器があると思われます」


四人が扉の前に立った。


キール「……街一つが消えるかもしれない、って、ここに来ると実感しますね」

虎「消えたら困る」

キール「……そりゃそうですよね」

虎「うまい飯屋がなくなる」

キール「……それが理由ですか」


キールが少し、

呆れたような顔をした。


ミオ「……虎はそういう奴だ」

キール「……そうなんですね」


そのとき。


ステラ「気配があります。上から降りてくる人間が、複数」

ミオ「……来たか」

虎「何人だ」

ステラ「……八人。それと、もう一人」


ステラが少し間を置いた。


ステラ「もう一人の気配が、他と違います」


虎は通路の奥に目を向けた。


足音が聞こえてきた。

複数の、

揃った足音。


その中に一つ、

別のリズムの足音が混じっている。


長い。

落ち着いている。

だが、

重さが違う。


虎(……来たな)


口の端が、

上がった。


暗い通路の奥から、

黒外套の男たちが現れた。

八人。


その後ろに、

一人。


黒い長髪が、

ステラの炎の光を受けて揺れている。

高い背丈。

切れ長の目が、

暗がりの中でも鋭く光っていた。

顔立ちは整っているが、

どこかカラスを思わせる、

鋭い印象がある。


男は四人を見た。


それから、

視線が虎のところで止まった。


男「……邪魔が入ったな」


声は低く、

よく通った。


ミオ「お前が幹部か」

男「カイエルという。よろしく」


ミオが剣の柄を握った。


ミオ「……よろしくじゃない」

カイエル「まあ、そう言わずに」


カイエルは虎から視線を離さなかった。


カイエル「虎。お前と少し、やり合いたい」

虎「理由は」

カイエル「時間稼ぎだ。正直に言う」


虎「……正直だな」

カイエル「嘘をついても仕方ない。その間に、扉の中の仲間が起動準備を完了させる」

カイエル「鍵は一つお前らが持っているようだが、全て揃わなくても軌道は可能だ」

カイエル「最後の鍵は俺が持っている、最後にそれをブッ刺せば、この街はボン!ってわけだ」


ミオ「……させない」


カイエルが八人の部下に目配せした。

部下たちがミオとステラの前に立ちふさがる。


カイエル「お嬢さんたちはそちらで手が塞がる。俺は虎だけを見る」


虎「……面白い奴だ」

カイエル「そうか。では」


カイエルが一歩、前に出た。


通路の空気が、

変わる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「カイエルという男が来ました」

虎「正直な奴だった」

ステラ「時間稼ぎだと宣言してきましたね」

虎「ああ。嫌いじゃない」

ステラ「……虎様は敵味方を問わず、そういう評価をしますね」

虎「正直な奴は正直だと言う。それだけだ」

ステラ「おおむね、筋は通っています」

ステラ「次回、『虎が、カイエルと戦う』」

虎「楽しみだ」

ステラ「ミオさんとの方も、手が塞がりそうです」

虎「ミオは大丈夫だろ」

ステラ「……私もいますので」

虎「そうだな。心強い」

ステラ「虎様に言われると、複雑です」

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