49.
降り注ぐような拍手。会場全体から響く拍手に味わったことのないほどの恍惚感を感じた。
お辞儀をすると、今度は拍手と共に会場のいろんなところから歓声や感想が聞こえた。
「ブラボー!最高に綺麗だったぞー!」
「リーシャ様ー!こっち見てー!!」
「デビューはいつなんだ!?応援するぞ!」
誰かの『言葉』が、舞台上にまで届く。
きっと他の演者たちもそうだったのかもしれないが、舞台裏では分からなかった。舞台の上に立つというのが、こんなにも気持ちのいいものだったなんて、知らなかった。
私はゆっくりと頭を上げる。視界いっぱいに広がる観客席。全員がこちらを見ている。
もう何も怖くはなかった。舞台に上がる前、この会場に来た時に感じていた緊張なんてまるでなかったかのように、胸の奥に残っているのは、ただ一つ。
――楽しかった、という感覚だけ。
軽くもう一度、一礼し、舞台袖へと戻る。足取りは自然と軽かった。
もう結果なんてどうでもいい。オーランドに勝ちたいと思っていたが、舞台に立った満足感にそんな感情は打ち消されていた。
***
演技を終えた生徒が案内される選手席へ移動すると、すぐにミレイアが飛びついてきた。
「リーシャ!!!やばいって!!なにあれ!!反則でしょ!!?」
「ちょ、ちょっと……苦しいです」
「いやほんとに!途中から会場ごと持ってってたじゃん!!同じ初心者とは思えない!本当に綺麗だったし、すごかった!!」
興奮したままに感想をまくしたてるミレイアに、思わず苦笑する。
しかし、嬉しかった。短い間とはいえ、共に研鑽を積んできた仲間からそう褒められるのは。
「本当に見事でした。あれほど『物語』がはっきり伝わるスタチュエットは、そうありません。ここまで頑張りましたね」
「ありがとうございます」
セレナ先輩も微笑みながら、声を掛けてくれる。
素直に頭を下げる。ずっと見てきてくれた先輩から、頑張りを認められるという初めての経験は、涙が出そうな程に嬉しかった。
「見違えたよ。最初のあの生意気な1年がこうまで変わるだなんてな。一緒に頑張ってくれて、本当にありがとう――って、何を泣いているんだ!?俺は酷いことを言ってしまったのか!!?」
「っちが……違います!嬉しくて、頑張ってよかったなって」
「そ、うか。頑張ったのは事実だからな。思うままに感情を表すと良い」
泣かれるのに慣れていないのがバレバレなモヒート先輩に、少し笑ってしまう。彼から差し出されたハンカチを有難く受け取り、出てきてしまった涙を拭いた。
モヒート先輩の後ろで、ガイゼル先輩も私に声を掛けようとしていたようだったが、モヒート先輩が全て持って行ってしまったようで、後ろの方であたふたしていた。
だが、これでスタチュエットの関係でこのメンバーで集まるのは最後だ。それに少し寂しさを感じながらも、全てを出し切った達成感でふわふわしていて、不思議な感覚だった。
きっとこれが『青春』というものなのだろう。そして、いつかこれも未来の自分の『思い出』になるのだろう――。
そんな和やかなやり取りをしていると、ふと視線を感じた。
視線の方向に注意を向けると、少し離れた席にオーランドがいた。
彼はこちらを見ている。無表情。感情は読めなかった。けれど――ほんの僅かに、目が細められていた。
評価しているのか、警戒しているのか、苛立っているのか、それとも別の何かか。分からない。
ただ、今までのように『見下すだけの視線』ではなかった。
それだけは、はっきりと分かった。
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