作戦会議
「....」
静まり返る作戦会議室。
将軍や軍師の注目が、台車の上のハニワことタケルに集まる。
「姫、それが異世界からの...?」
素焼きの土器。
一メートル三十センチと小さく、どこか愛嬌のある物体。
「そ、そうで...じゃ!
これが妾が異世界より召喚した英雄タケルじゃ!」
ヤケクソ気味に言い張るジークフリート。
氷よりも冷たい周囲からの視線を気力で耐えながら、何とか話を進める。
「まずは現状を聞かせよ」
「!?」
目の前の土器が話したことに驚く幹部陣たち。
「この程度のことで騒ぐでないわ!」
机を両手で叩き、無理やり黙らせる。
「そ、それでは現状についてご説明いたします」
軍師、クリスが地図と資料をタケルに見せる形で説明を開始する。
結論から言うと、このまま抗戦したところで王国側に勝ち目は無い。
相手は大軍で味方は少数。
直近の戦いから敵は高速で進軍をしており、一週間後には王都を守る最後の要塞であるシルガイアに到達するとの見込み。
「....」
目の前に広がる地図と、現在の敵の位置の予想を示したコマ。
直近の戦いが行われたミヤクラの戦いの位置を、ジークフリートに台車を傾かせてもらいながらじっくりと見る。
「ひとつ聞く、敵の兵站はどうなっている?」
「兵站?」
タケルの問いかけに、キョトンとする軍師。
「何故、兵站を?
戦場で物を言うのは兵の数と質ですが?」
「...まさかとは思うが、貴国の軍は兵站を軽視していたのか?」
怒気を孕んだ声。
表情は変わらないが、心なしか、カタカタ音を立てて震えている気がする。
「そこのヒゲ男」
「ひっ髭男...」
髭男ことダルマン将軍が反応する。
「お前は空腹のままで敵と戦えるのか?!」
「そ、それは無理があります」
「軍師、武器も矢もない状況で、兵たちがまともに戦えると思うか?」
「...不可能です」
「何が言いたい?」
まどろっこしい質問の連続に、総司令官を務めるエネバーが結論を求める。
「簡単な話だ、我が話した状況に敵を追いやれば良い。
すなわち、敵の兵站を切断し、飢えさせ、武器を無くす」
「ま、待て、それは卑怯な戦い方ではないか?!」
机に両手を付き、前のめりになるダルマン。
正々堂々と戦いを挑み打ち勝つことを信条とする彼にとって、敵の窮状につけ込む作戦は認可できないらしい。
「わ、我々は先々代より騎士道精神を重んじ、正々堂々と戦ってきました。
そ、それを否定することなど…」
「では聞くが、騎士道精神とやらを重んじた結果、王国はどうなった?
陥落した都市の民たちはどうなった?」
「それは……」
言葉に詰まるダルマン。
「戦いにおいて重要なのは騎士道精神などではなく、勝つことだ。
勝たなければ無意味、役立たずのごく潰し。
敗者の生きる道など、無い」
タケルの発言に、場のすべてが凍り付いたように沈黙する。




