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シュナと余命10年の騎士  作者: ぽこ
最終章
50/54

それから

女神が消えたその直後、大人達は人目も憚らずに泣き笑いし、子ども達もつられて大泣きしてしまったのは今ではいい思い出だ。



あれから半年が経った。



シュナはダダのシャツを仕立てながら、いつもの様にそれを思い出して独り笑いする。

すでにセルムの分は出来上がっているので、順調にいけば今日中には渡せそうだ。山の様に積み上がったシャツとボトムを見渡して、シュナは満足そうに頷いた。



今2人ために量産しているのには理由があった。

特級冒険者業に復帰して依頼を受け始めた2人は、怪我こそしないものの、運動不足解消のため大太刀まわりをしているようで服を汚して帰ってくるようになったのだ。


汚れた格好ですまなそうに帰ってくる2人をよそに、シュナは大笑いしながら衣服の量産を決めた。2人のためならなんて事はない。

最近、「笑いのツボがドンドに似て来た」とアルに言われるようになったが、職人というものは得てして似てくるものなのだろうか。



2人が復帰したのは手狭になった家を引っ越し、新しい家の資金を貯めるため。

シュナ家族が4人、セルム家族が5人、そしてダダとチビではやはり我が家は狭い。2人がこのまま一緒に居られるのならば、名残惜しいが新しい広い家が良いだろうと満場一致で決まった。



「シュナちゃん」

「アルおかえり!もう仕事は終わったの?」

「今日は()が終わったから早めに帰して貰った」

「そうなんだ?もうすぐ出来上がるから、そしたら次はアルの分作るから待っててね」

「助かる!今日も火の粉で穴空いちゃったんだよね」

「ふふ、次のシャツは燃えないように祈らなきゃね。アンジェさんが子ども達を見てくれているから交代してくれる?」



シュナも産後半年が経ち、仕立て屋に復職した。

子ども達は誰かしら休みをとって家に残り面倒を見ている。大家族ならではの一家総出の育児だ。

アルは腕まくりをすると、まかせて!とリビングへ向かっていった。階下では「パパ!」と喜ぶラルシュの一際大きな声が聞こえてきたのを耳に、シュナは鼻歌混じりに針仕事に戻る。

2人が帰ってくるまであとひと踏ん張りーーー













『ミネルヴァ様、ありがとうね』

()()()じゃ』



チビがいつものようにオレンジ瓦の屋根の上で子ども達の声を聞いていると、いつのまにかやって来た女神が隣に腰掛ける。

会う度にチビが礼を言うのものだから、聞き飽きたとばかりに女神は耳を塞ぐふりをした。その耳朶には子どもから貰ったピアスがずらりと飾られ、なかなかファンキーな雰囲気を醸し出している。



『似合ってるよ、そのピアス』

『そうであろう?ドンドの作る物も良いが、さすが鍛治神の愛し子じゃ。(アル)もいい仕事をする」



硬度に追随を許さない緋緋色金で金細工を施せる者など、この世にアルしか存在しなかった。

一見ただの珠のように見えるピアスはその創作過程に超絶技巧を要し、ドンドさえ作れない逸品だ。それは祈りを叶えるには十分な代償だった。



『ねぇ、ミネルヴァ様は()()()()()の?』

『妾にわからぬ事なぞないわ』

『ラーが祈祷師だって教えてくれたら良かったのに』



女神はドンドに作らせた牡丹の髪飾りをシャラリと揺らし、クスクスと笑う。



『ほんに偶々(たまたま)じゃ。祈祷師のギフトを持つとはいえ、ラルシュが心から祈ったのは彼奴ら(ダダとセルム)が心から慈しんで育てた結果。妾は介入してはおらぬ。まぁ、他の神々ーーー特に鍛治神が供物(メンツィカツ)を気に入っていたから五月蠅かったのは確かじゃ』

『鍛治神様も?』

『五月蝿いなんてものじゃなかったぞよ。まぁこれからあの子が無駄に祈らぬ様に見張っておくがいい』

『僕、祈祷師(長男)愛し子(次男)の世話で大忙しじゃん』

『愛し子が早く生まれて良かったではないか。これで(アル)とシュナも安泰じゃ』

『まぁね。これでひとまずは一安心だよ』



アルの次男シュルツは鍛治神の愛し子であった。

まるで生き写しの様に父親似たシュルツはまだ1歳半。鍛治仕事を選ぶかなど今はまだ未知数であるが、アルが工房に連れていくと嬉しそうに鍛冶場入り口にある御神像に向かって手を叩いているから可能性は高そうだ。



彼奴(鍛治神)が夜な夜な愛し子のところへ行ってあやしているからの。センコウトウシとかいうヤツらしいぞ』

『げ!いつ夜泣きしてもすぐに寝付くわけだ!』

『うむ、ダダと同じかそれ以上にデレデレじゃ…』

『うわ!それとんでもないレベルじゃん!怖っ!』

『あっはっは!』

『人聞きの悪い事を言うな』



いつの間にか隻眼の鍛治神が女神の隣に佇んでいる。

その手には、先程アルに頼んで作らせた木製の鍛治道具を模した物ーーー火床(ほご)(ふいご)、大槌子槌、玉箸まで箱に納められている。



『え、これもしかしてシュルツにあげるの?』

『先行投資だ』

『2人ともどこで習ってくるんだよそんな言葉…』

朱殷(しゅあん)だ』

『…あの神、なにやってんだよ…』






チビは俗語を覚え始めた2柱に呆れながらも、当たり前のようで当たり前でない今の幸せのために動いてくれた神々に感謝したのだったーーー

あと少し!あと少しだけ続きますm(_ _)m



いいねをありがとうございます。

本当、嬉しいんです!

この場を借りて改めて御礼申し上げますm(_ _)m

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