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シュナと余命10年の騎士  作者: ぽこ
最終章
47/54

残り半年

残された2年半の間、私達は色んなところに行った。



みんなで移動し易いようにとダダさん達が自家用馬車を2台も買ってきた時は驚いたが、新生児にも優しい造りのサスペンション付き最新モデルだったおかけで3度も国外旅行が出来たし、アスタネの観光名所はほぼ制覇した。



その間にアンジェさんは双子を産み、我が家はますます大所帯になった。

手狭になった家を「引越しするか?」という案も出たが、慣れ親しんだ思い出のある家を出る気になれず、2部屋の壁を取り除いて広くし、リビングのテーブルを大きな物に買い替えるだけに止めた。




ダダさんは宣言通り休業していつも皆の帰りを子ども達と一緒に待っていてくれるようになり、セルムさんはアンジェさんと一緒に高額報酬の仕事を選んである程度稼ぐと、ダダさんと同じように家にいるようになった。







今日はアンジェさんと2人で買い物に来ている。


たまに女子会と称して、子ども達を預けて息抜きをするが月に1.2度の楽しみだ。結局、自分達のものではなくお土産ばかり買ってしまうのだけれど。


そして、歩き疲れた私達はいつものように『カフェ豆の木』に寄る。家では話しづらい事はここでお喋りするのが常だ。



「もう金は最低限あればいいんだよね。私達に残す金なんか気にするなって言ったの。そんなの後で私が働けばどうとでもなるもの」

「時間はお金じゃ買えないもんね」

「買えるものならいくらだって払うのにね」



アンジェさんはオレンジジュースを飲みながら、少し大きくなってきたお腹を大切そうに撫でながらケラケラと笑う。

かくゆう私も、今2人目の子を妊娠している。



「この子達が生まれるのが()()()()()いいけどね」

「出産の時期まで見えればいいんだけど、こればかりは見えなくて…」



今は6月に入ったところ。

2人に浮かんでいる数字は揃って1()()()()()を示していた。順当に行けば、年越し前の12月にその日は来る。

私達の出産も同じ頃を予定しているので、目標はいかに無事にいかに早く産むかというところだ。



「シュナちゃんはさ、あと何かしたいことある?」

「したいこと…実はあんまりないかも」

「旅行はいっぱいしたもんね」

「うん。皆で一緒にいられれば良いというか、いつもの何気ない毎日が幸せだから()()しているというか」

「あーわかるな。毎日食べるなら洒落たご馳走食べに行くより、ダダの手料理の方が全然いいもんね!」

「ふふ。今が幸せだから十分なの」



このところは悪夢ではなく、今まであった出来事を追体験するような夢をよく見るようになっていた。

アル曰く『記憶の残渣』らしい。これはこれで嬉しいような、切ないような、何とも言えない気分で目が覚める。

そんな時はアルやアンジェさんに浮き輪を投げてもらって、なんとか小さな波を乗り越えているので2人には感謝しかない。



「そう言えばさ、ドンド爺とかは知ってるんだっけ?」

「うん。ドンドさんは知ってる。あとガルウィングさん。でも2人にはいつも通りに接してくれてるから、いつもと何も変わってない」

「腫れ物を触るように扱わない辺り、年の功だね」

「見習わなくちゃね」

「最期の日…どうなるんだろ」

「あいつらの望むようにすれば良いよ。きっといつもと変わらない1日になる気がするけどね」

「たしかに!」



クスクスと笑い合いながら、そろそろ子ども達が騒ぎ出す頃だね、と私達は席を立つ。心を整えるためのこの時間はいつもあっという間だ。






「おかえりシュナ、アンジェ」

「夕飯出来てるよ!今日はダダさん特製スペアリブ!」

「まま!抱っこ!」

「みんなただいま!」



琥珀色した瞳をキラキラと輝かせたラルシュは、シュナの腕の中で今日1日どんなに楽しかったか報告してくれる。今日はルージュ達と一緒にミネルヴァ様の絵を描いていたらしい。



「みねるばさまじょうずに書けたの!見てみて!」

「わぁ!そっくり!上手に書けたね」



壁一面に貼られた子ども達の作品の中に、大輪の牡丹を持って笑う女神の絵が飾られている。ふんすふんすと鼻息を荒くしてラルシュは胸を張る。それを見たダダは「ラーは天才だ」と満面の笑みを浮かべて褒めちぎる。

いつもと変わらない、大家族の風景。

 









『ねぇミネルヴァ様ぁ、なんとか何ないの?』

『ならぬ』



オレンジ瓦の屋根の上、チビは不貞腐れた様子で階下の賑わいを聞きながらいつもと同じ質問を繰り返す。

チビは長い間幾度となくこの質問をしてきたか、いつも答えは同じだった。



『何度も言うが、1人の祈祷師が延命させられるのは1人につき1度だけ』

『でもさ、こんなの悲し過ぎるよ!』

『腰痛のドンドの腰を治すのとは訳が違うのだよ』

『でもさ、でもさ…』

『ならぬ』

『う゛ーーーーーっ!!ケチ!!』






痺れを切らしたチビは捨て台詞を吐くと、軽々と屋根から飛び降り家の中に入っていく。

残された女神は呆れたようにその姿を見送ると、やれやれと言った顔をして微笑んだ。





『時がくればわかるであろうよ』

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