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シュナと余命10年の騎士  作者: ぽこ
最終章
46/54

小さな波と浮き輪

最終章になって気付きました…


恋愛ジャンルで登録していましたが…

恋愛要素が皆無に等しいと…!!


ここまで来ましたが、

本日から【ハイファンタジー】へ変更致します_(:3」z)_

「ねぇアル」

「んー?どうしたのシュナちゃん」



今日の食器洗い当番はシュナ夫婦の番だ。

リビングではいつものようにダダ達がラルシュの子守をしてくれているお陰でゆっくりと家事が出来る。

手際よく皿を拭いているアルに向かって、シュナは思い詰めたように声をかけた。



「…最近、悪い夢ばかりみるの」

「…知ってる。いつも飛び起きてるだろ」

「うん。ただの悪い夢ならいいの。所詮夢だもの。だけど…いつも見るのは2人が居なくなった後の夢」

「うん」

「悲しくて悲しくて、それで目が覚めるんだけど、それが夢じゃなくて…近い将来起こる事だから、改めて絶望するの」

「うん」

「朝起きて、いくら目を凝らしてみても2人の数字が変わらないの。苦しいよ…」



キッチンからリビングを横目で見ると、ルージュに馬乗りにされたセルムが愛馬ふぅちゃんの真似をしながら「ヒヒーン!」と鳴き、ダダは眠っているラルシュが起きるだろうと小声で諌めている姿が見える。いつもの変わらない優しい風景だ。


しかし、その2人のその頭上には約2年半分の数字が浮かんでおり、日を追うごとに確実に少なくなってきている。



「7年以上覚悟して来たから大丈夫だと思ってたの。だけどっ、だけど…!その日が近づくにつれて…どんどん怖くなる!」

「シュナちゃん…」

「どうすればいい?頭がおかしくなりそう!」



アルは話しながら拭き終えた皿をまとめて棚にしまうと、布巾を軽くゆすいで流しの横に置いた。シュナの声量が徐々に大きくなるものだから、キッチンの奥にある勝手口から裏庭へと手を引いていく。



季節はいつの間にか初夏を過ぎ、庭の楠は青葉を茂らせて丁度良い木陰を作ってくれていた。その大きな枝にはセルムが作ったブランコが風に揺れてキィキィと音を立てる。



「シュナちゃんの今の状況は()()()()というらしい」

「予期悲嘆?」

「うん。いつも苦しそうに起きてるからさ。そうかなと思って調べた。死が間近な相手のその日を想像して悲しくなっちゃう反応なんだって。変な言い方かもしれないけど、シュナちゃんの心を守るための反応らしいよ」

「わたしの心を、守る?」



アルはブランコにシュナを乗せると、後ろから優しく押しながら言葉を選んでいく。



「例えばさ。海で泳いでいて、突然大きな波が来たら溺れちゃうでしょ?だけど、小さな波が何回も来るうちに海の泳ぎ方がわかるようになるじゃん」

「泳ぐのがうまくなっていくってこと…なのかな」

「そういうこと。大切なのはその何度も襲ってくる予期悲嘆ーーー小さな波を1人で耐えないってこと」

「…助けてって言っていいの?」

「そう。今みたいに「苦しい!」って誰かに伝えて浮き輪を投げて貰えばいいんだよ。そうやって何度もその小さな波を乗り越えていけば泳ぎ方が上手くなって、()()()()()()()に溺れてしまうことはなくなる。…らしい。ごめんね、説明が下手で」

「ううん」

「だからこれから先、小さな波が来たら俺にまた教えて欲しい。うまく浮き輪を投げられるかわかんないけど、絶対助けに行くから。1人で溺れて苦しまないで欲しいんだ」



ブランコに揺れるシュナの髪がアルの鼻先をくすぐる。シュナは暫く黙ったまま風に揺れる楠の枝先を眺めていたが、「そっか!」と言うと勢いよくブランコから飛び降りた。



「私、小さな波に溺れてたみたい。アルの投げてくれた浮き輪、ちゃんと受け取ったよ!」

「俺もその海一緒に泳ぐよ」

「うん。大波が来る日までみんなで一生懸命泳ごう。私だけ溺れてるわけじゃない…きっとダダさんやセルムさんも溺れてるはずだよね。浮き輪を投げてあげなきゃ!」

「ふっ、それでこそシュナちゃん」

「アル助けてくれてありがとう」









窓の外から聞こえてくるシュナ夫妻の会話は、幸か不幸かリビングに一部始終届いていた。



ルージュに馬乗りにされながらセルムは先程から大粒の涙を溢し、ダダは天井の一点をただ見つめながらラルシュを揺らし続けている。アンジェに至ってはソファに丸まって微動だにしない。



「…俺も小さい波ばっかで溺れそうになってたっす」

「…あぁ」

「一生懸命泳ぐっす」

「だな」

「私はでっかい浮き輪投げられるように鍛えるわ」

「アンジェちゃんはいるだけで浮き輪だから大丈夫」

「私の前で惚気るのは辞めろ」

「あはは!」






全員が小さな波で溺れかけていた夏。

アルの浮き輪で助かった夏。






タイムリミットまであと2年半ーーー

◆◆◆


今回は死生観の分かれる少し重ためのとなりました。

元外科病棟看護師として、いつも浮き輪を投げられるよう日々研鑽だった頃を思い出しながらの執筆となりましたが、あの頃誰か助けられたのだろうか…今も後悔することは多々あります。。。

後書きも重めですみません_(:3」z)_


◆◆◆


今更ながら章管理始めました。

今回から最終章突入となります。

引き続き、どうぞよろしくお願いします( ´ ▽ ` )


◆◆◆


本日連投しました分、明日は誕生日会のためお休みさせていただきます。おめでとう私( ´ ▽ ` )

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