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シュナと余命10年の騎士  作者: ぽこ
4章 それぞれの選択
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3年後

アルタの町に家を構えてから3年が経った。

中等学校を卒業して16歳になったシュナは、キラの元で本格的に仕立ての勉強を始めていた。

何になりたいか迷った時、ダダ達と話し合い、7年後を見据えて()()()をつけることにしたからだ。



祈りを込めたものーーーダダ達からは『祈祷師の加護付き』と言われるシュナが作った仕立て品の効果は抜群で、あれから暇さえあればキラの元に通っては教えを乞うてきた。

売り物にするにはまだ早いが、ダダ達やドンド、手の届く人達の物を作っては試作品と称して使用して貰っている。

腰痛に悩むドンドのために作ったズボンに『腰が痛くなりません様に』と祈りを込めた時には、すっかり良くなったと喜んで駆け込んできたドンドは記憶に新しい。



今日、そんなドンドはご機嫌な様子で新しいシャツを受け取りに来ている。これは仕事中に着るための『火傷をしない様に』という加護付きだ。淹れたての紅茶を飲みながら、ドンドが嬉しそうにシャツの出来栄えを眺めている。



「祈祷師の仕立て屋なんて世界のどこにもいないな!ガッハッハ!」

「全ての人に行き渡るわけではないから、祈祷師としては偏ってるかもしれないですけどね」

「たまに()()()を送還してるんだから十分だよ。お陰でこっちは仕事は商隊の護衛や盗賊相手の討伐ばかり。こうなると魔物より人間の方がタチが悪いってわかるっす」



ゲンナリする様にセルムが首を振りながら、防具の手入れをしている。とはいえ、加護付きのシャツーーー『怪我をしません様に』と祈られたものを着る様になってからかすり傷一つ付いたことはないのだが。


時折はぐれが出たと言う情報を得ると、3人と1匹、そしてガルウィングと共に討伐という名の送還を行うのが常になっていた。

数をこなす内に光の波のコントロールもつくようになり、今では春1番のように突風が吹き抜ける形で落ち着いた。送還したのだから討伐証拠をギルドに持ち帰られないが、そこは冒険者ギルド長の権限で「いなくなることに意味があるから」と相応の対価を支払って貰っている。



「そういや、うちに新しい弟子が入ったんだわ。嬢ちゃんと同じ歳だから仲良くやってくれ」

「ーーー同じ歳の弟子?」



ダダの顔が一瞬にして曇る。

柳眉を顰めた顔は彫刻の様に美しいが、顔も見たこともないその弟子に心当たりでもあるのだろうか?

機嫌の悪くなったダダの様子にシュナが驚いてると、セルムがいつものようにゲラゲラと笑い始めた。



「年頃の娘を持つ親父の心境っすね!」

「五月蝿い」

『ダダ、お父さん!』

「?」

「なんじゃ、そういうことか。今からそんな警戒しても、内弟子だから嫌でも顔を合わせることになるぞ。うちに来て武具の整備もせんといかんじゃろうが」

「…シュナは家に置いていく」

「なるようになるっすよ!親父さん!」

「?」

「シュナは分からなくていいぞ」



セルムとチビがいつまでも笑い続けるものだから、これまたいつもの様に鉄拳がおろされて静かになるお決まりを済ませると、ダダはふぅとため息をつきながらシュナの頭を撫ぜる。

親心を知らぬはシュナばかりなり。



「そういえば、週末に()()()があるから来い」

「牡丹祭?」

「知らんかったか?牡丹園の開花に合わせて職人ギルド主催でやるから皆で来るといい。500株はあるから壮観だぞ」



すっかりアルタのシンボルになった牡丹は、町の外れの一区画に牡丹園を造るまでになった。苗を植えてから10年程掛かるという牡丹だが、今年蕾をつけたという。



「ミネルヴァ様のご加護もあるのか、スクスク育って3年目で花が咲きそうでな。急遽祭をすることになったんだわ。ふむ、告知板の知らせだけではまだ足りないか。職人ギルドのケツを叩かないと閑古鳥が鳴いちまうな」

「週末絶対行きます!ダダさん達はお仕事ありますか?」

「週末はキャラバン隊の護衛が入っているな…夕刻までには戻れそうだが、その時間までやっているだろうか?」

「夜は夜で出店がやっているから、仕事が終わってから来るといい。嬢ちゃんはチビと一緒に昼間のうちに春牡丹を観においで」

「はい!お昼と、ダダさん達が帰ってきてから夜も行きます。わぁ楽しみだなぁ」



早々にカレンダーに週末の予定を書き込むと、シュナはそれまでに新しい生地を買ってきてワンピースを仕立てようと思いつく。何色がいいだろうか。あとでキラさんのお店に行こう。



すっかり新しい内弟子の話など忘れて楽しそうにしているシュナを見ていたダダはやれやれと胸を撫で下ろすが、その日に運命の出会いを迎えることなど夢にも思っていなかったーーー



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