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シュナと余命10年の騎士  作者: ぽこ
3章 祈祷師の本懐
33/54

日々精進

調子が悪く、更新が遅くなりましたm(_ _)m

『光がバァーーって!そしたら魔物達があっという間に全部いなくなってね!山崩れも元に戻ってね!』

「チビ、その説明はザックリ過ぎるだろう…」

『そう?んと、僕とシュナとお揃いの目の色の光がね、波みたいに広がってバァーーって!森も山も全部バァーーって!』



琥珀の波がひいた後、力を使い果たしたであろうシュナは気絶するように意識を失い、気付いた時には宿屋のベッドの上にいた。

意識を取り戻してからも過保護なダダ達によって未だにベッド上安静を言いつけられている。


興奮したチビがベッドの上で身振り手振りで事の顛末を説明してくれているのだが、如何(いかん)せんザックリ過ぎて詳細がいまいちわからない。



『シュナが僕の背中の上で寝ちゃった後、ダダとセルムなんかダーーって泣いちゃってね!シュナーシュナー!ってうるさくってね!』

「チビ、ストーーーップ!」



とうとう痺れを切らしたダダがチビの首の付け根を掴んでベッドから強制退場させ、そばに座っていたセルムの膝におろすが、それでもまだ興奮冷めやらぬ様子のチビはセルムの手の中で手足をばたつかせながら話を続ける。

セルムはその様子を見てゲラゲラ笑うものだから、結局1人と1匹はダダから鉄拳をくらってようやく静かになった。



「皆に心配かけてごめんなさい」

「シュナが倒れ込んだのを見て頭が真っ白になったが、無事でよかった。魔物達も皆山へ帰って行ったよ」

「ダダさん達が見守ってくれたから、女神様に祈りを届けることが出来ました。ありがとうございます」



随分と心配をかけたようだ。

ダダとセルムの目はいまだに少し赤い。

次はもっとうまくやれればいいな。

うん、()こそはーーー

布団の端をくしゃりと握りながら、シュナはこれから先のことを語り出す。



「あの、わたし、わかった気がするというか」

「うん」

「…皆が生きるべき所で生きられる様にするのがわたしの()()なんじゃないかって。だからこれからまたこういう事が会った時に助けになりたい…そう、思いました」

「うん」

「…反対しないんですか?」

「うん。それがシュナのやりたい事だろう?」

「はい」

「シュナにとってそれが定めというのならば、シュナを護るのが私達の()()だ。やりたいようにやるといい」

『僕も護る!ずっと一緒!』

「俺も俺も〜」



肯定してくれる人達がいる。しかも、そのすべての時間を共に過ごしてくれる優しい人達ーーー

シュナは一度に家族を失ったが、今は2人と1匹がそばにいてくれるその有り難さに胸が暖かくなった。



「まぁどこの国にいても()()()に、というのが大前提だけどな。目をつけられると厄介だ」

「確かにアレ派手だから練習した方がいいかも」

「練習します!気絶しないようにもならないと」

『ダダ達泣いちゃうもんね』

「泣かせないためにも頑張ります!」

「それは、うん、頼む」



2人と1匹はシュナの新たな目標のために、練習方法を思案しながらああでもないこうでもないと盛り上がる。小さな祈りの数をこなしていけばコツが掴めるだろうという結論に至ると、シュナの腹の音がグゥと鳴った。



「食事に行くか」

『賛成!』

「ドンド爺ちゃんに頼んでいた鞘が出来上がったってさっきタンタが伝えに来てくれたから、それも取りに行こうぜ」

「そうしたら、食事前に工房に行きましょうか」

「そうしよう」



ドンドの工房を尋ねると、丁度先客が支払いを済ませているところで、それが終わるやいなや「ちょっと待ってろ!」とドンドは嬉しそうに鍛冶場に戻っていき、直ぐに帰ってきた。



「待たせたな。急ぎで作ったが、この前の梟に引けを取らない出来だぜ。懐にいれるには嬢ちゃんはまだ小さいから、腰に帯剣出来るように留め具も作っておいた」

「わ!牡丹!」



ドンドが手渡してくれた鞘はミネルヴァ様をイメージしたという大輪の牡丹が繊細な彫られていた。朱色に塗られたその鞘はまるで牡丹そのもの。まるでそこに咲いているかの様に生き生きと彫られている。

見事という他ない出来栄えで、シュナだけでなくダダとセルムもその出来栄えに感嘆の声があがった。



「東の国ではその朱色は魔除けの色だそうだ。斜向かいに住んでる塗師のばぁさんに塗りを教わりに行って出来た渾身の逸品なんだぜ」

「すごい…素敵!ドンドさんありがとう!まるでミネルヴァ様みたい!」

「牡丹をミネルヴァ様の化身の姿に見立てたんだ。御姿は拝見してないが、きっと牡丹のように美しい方だろうよ」

「はい!この牡丹みたいに美しい御方です!」



ドンドは大きく頷きながら、嬉しそうに笑う。

刀匠でありながらここまで見事な彫りの技を持つドンドは、更に塗師にも師事して己の研鑽に(いとま)がない。鍛治神さまの神託を授かったのも、技術だけでなくこの絶え間無い努力を見通されたものであろう。



「私もドンドさんみたいに努力し続けるように頑張ります。この牡丹の鞘を見るたびに、ドンドさんを思い出して初心にかえれる気持ちになれる。そんな気がします。素晴らしい物を作ってくれてありがとうございました!」

「そこまで言って貰えると職人冥利に尽きるってもんだ!俺もまだまだ日々精進だ!ガッハッハ!」

「日々精進…いい言葉ですね!」



シュナは新しい鞘に護り刀を納めると、作ってくれた腰下げ金具をベルトに通す。その場で軽くジャンプしてみるが動いても邪魔にならず、至れり尽くせりで快適だ。



「爺ちゃんすげえな。俺にも短刀とその作って留め具貰おうかな…っと、その前に爺ちゃんも一緒に飯行かね?腹減ってんだ」

「おぅ。俺も昼飯まだなんだ。近くに美味い飯屋があるから一緒に行くか」

『飯ーー!』



こうして4人と1匹は職人御用達食堂に向かった。



その一部始終を見ていたミネルヴァ様がドンドの夢に現れて、同じ意匠細工を強請られたのはまた別のお話ーーー

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