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シュナと余命10年の騎士  作者: ぽこ
3章 祈祷師の本懐
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ミネルヴァの心馳せ

『人の子よ、3日ぶりじゃの』



漆黒の梟の口から女神の声が聞こえてくると、辺り一面に馥郁(ふくいつ)たる甘い香りが漂い始める。

やはりこの梟はあの鞘に彫られた梟だったようだ。


シュナやダダ達は居住まいを正すと、梟に向かって頭を垂れた。ガルウィングは女神の心地よい迦陵頻伽(がりょうびんが)な声を聞くと只事ではないと瞬時に悟り、慌ててそれに倣う。



『そう硬くならずとも良い。今日はそこの子狼(チビ)について話に来たのじゃが…既に主従の契りを結んでおったのか。これは僥倖(ぎょうこう)。話が早い』

「女神様はこの子について何かお知りなのですか?」

『其方のそばに置くために、真神一族の長に掛け合って子を1匹貰ってきたのじゃ。迷子になった挙句、人に捕獲された時はどうなることかと思ったが…あっはっは!』



女神が鈴の転がしたように笑うと、子狼は恥ずかしげにシュナの背後に隠れた。



「わざわざ私のためにですか?」

『ふふ、其方を護るにしても、そこの2人も()()があるであろう?子狼であれば末長く連れ添えるかと思ってな、人と暮らしたがる子を連れてきた。ふむ、疎通出来るようにするか。ほれ子狼、何か話せ』

『アォーーーン!』



女神がふぅと子狼に向かって息を吹きかける。



『ミネルヴァ様、なんで迷子になった事バラすの!』

『あっはっは!一言目にそれか。はぐれの石喰蜥蜴なぞ追うから迷子になるのじゃ、このうつけ』

『ぐぅ』

「ミネルヴァ様?」

『妾の名じゃ。そう呼ぶが良い』

「ミネルヴァ様、ありがとうございます!」

『シュナ抱っこ!』



話せるようになった子狼は嬉しそうに尻尾を振ってシュナの膝に飛び乗った。ミネルヴァがわざわざ自分のためにこの子を呼び寄せてくれたことが嬉しくて、シュナはぎゅっと子狼を抱きしめる。


それとは裏腹にガルウィングは頭を垂れながら、知らなかったとはいえ国に献上しようとしていた己の所業に血の気が引いていた。



梟はそのままダダ達に向き直ると「面をあげよ」と促す。声だけではあるものの、その威厳たるや他に類をみない。

その声に一同は粛々と顔を上げた。




『そこの子狼を捕らえた者よ』

「はい!」

ガルウィングは肩をビクリと竦ませる。

『決して口外するでない』

「はい!」

『…禁足地に妾の言うことを聞かぬ()()()がまだ少しおる。石喰蜥蜴は硬いがそう強くもないゆえ、里に降りぬようにするがよい』

「この剣に誓って必ずや討ち取ってみせます!」

『うむ、精進致せ』


チクリと釘を刺されてガルウィングは肝を冷やした。

魔獣討伐やなどの功績が国に認められ、ギルドの長になって早20年。これまでに培った自尊心など、今この時を持ってしてものの見事に砕かれた。国や王など所詮人だ。人智を越える存在を目の当たりにして、畏怖の念を抱かぬ者などいないだろう。

決して逆らってはいけないと、ガルウィングは心に決めた。



刀匠(とうしょう)よ。宿木の柄見事であった。梟も喜んでおる。妾は牡丹の意匠が気に入った故、また何か作ってくれるか』

「ミネルヴァ様に献上出来ることは生涯の誉れ。腕に()りをかけてお作りさせていただきます」

『楽しみにしているぞ』


ドンドは姿は見えないものの、迦陵頻伽(がりょうびんが)な声は真に咲き誇る牡丹のようだと感動に打ち震えた。次は何を作ろうか、この声に相応しい物を作りたい。

生業は刀鍛冶だが、牡丹の意匠を作るために金細工を一から勉強し直そうと志を新たにした。



『2人はこのまま人の子を護るがいい。尽力致せ』

「我らの命に代えても護ることをここに誓います」

『祈らせたくない気持ちもわかるが、それもこの子の定め。この大陸にいる限り、力を貸してやるからそう気負うな』

「はっ!銘肝(めいかん)致します」


ダダとセルムは騎士の誓いを思い出しながら、やがて来るその日までこの命を懸けて護りぬくことを再び誓う。

シュナの命を削るような祈りはさせたくないが、それが定めだというならば、共にそれを見定めよう。

そして何より…10年後も共に居られるようにと子狼を寄越してくれたことに感謝した。




『お節介はこれくらいかのぅ。また何かあれば梟を遣わす。それまで皆のもの息災でおれ』




そう言うと、漆黒の梟は空に消えていった。


馥郁(ふくいつ)たる甘い香りだけが微かに残り、残った物達の鼻をくすぐる。シュナ以外の者達は未だ夢現にいるような面持ちで跪いたままだ。



『ミネルヴァ様行っちゃったね』

「女神様のお名前はミネルヴァ様というのね」

『そうだよ。知らなかった?』

「知っていることの方が少ないわ」

『じゃあ色々教えてあげるからね!』

「よろしくねチビちゃん。あ、チビちゃんなんて名付けちゃったけど大きくなってもチビちゃんじゃ変だよね?どうしよう…」

『僕大きくなれるけど、チビでいいよ!』

「大きくなれるの?」



チビはするりとシュナの腕をすり抜けると、その場でクルリと宙返りをした。

その刹那、軍馬よりも大きく逞ましい白狼の姿に変化したものだからシュナは思わずのけ反った。



「チ、ビちゃん!?」

『僕の本当の姿はこっち。ミネルヴァ様がシュナが驚くだろうからって小さくなってたの。まだ80年位しか生きてないから一族の中じゃ僕が1番小さいんだよ』

「80年!?」

『人より10倍位成長が遅いから、人でいうと8歳位』

「8歳…そっか、じゃあチビちゃんでいいのかな?」

「うん!初めて貰ったモノ(名前)だから嬉しいんだ!」




チビはまたクルリと宙返りをして子犬サイズに戻ると、一目散にシュナの胸に飛び込んだ。

いいねありがとうございますm(_ _)m

リハビリがてらに創作しているので、めちゃくちゃ元気になれます!

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