冒険者ギルドからの依頼
「タンタ達の件は一件落着したし、これからどうする?」
あの事件から3日経ち、宿屋木漏れ日に帰ってきたシュナ達は朝食を食べながら今後のことについて話していた。
ドンドに依頼した新しい鞘が出来るまで逗留することになったが、タンタ達を追って洗礼式のないアスタネ国に入国したので当面急ぐこともない。
「ダダさん達は行きたいところありますか?」
「剣も譲って貰ったし、特にはない」
「俺も〜」
「うーん、地理がよくわからないので地図でも買いに行きましょうか?」
「それなら冒険者ギルドに行くか。そういえば冒険者登録もしてなかったな」
「着いてから慌しかったっすもんね。地図を買うついでに登録しちゃいましょうかー」
シュナ達がアルタの大きな通りに出ると、そこは石喰たちに食われた石畳や屋根瓦の復旧に勤しむ職人達で活気付いていた。
老匠達がこぞって女神様を讃えている話は既に周知されていて、町は少なからず被害は受けたものの、その女神様の恩恵に感謝している住人や職人達の顔には悲壮感はない。
暫くして市街地の中央に位置する立派な3階建てのギルドに着いた。既に多くの冒険者達が集まっていて、先日の石喰事件の話で盛り上がっている。そんな彼らを横目にしながら、シュナ達は男性職員が待ち受けているカウンターに並んだ。
「本日は私マイルが担当致します。早速ですが、本日は何の御用件でしょうか?」
「俺ら2人の冒険者登録と、大陸地図1枚欲しいっす」
「お2人様の登録は銀貨1枚ずつになります。地図は大判のものとハンドブック版がございます。それぞれ銅貨10枚になりますがどちらに…あの…失礼ですがその剣は…」
マイルと名乗った壮年の職員はダダ達の背負っているグレードソードとファルシオンを交互に見つめながら尋ねてきた。
「これ?ドンド爺ちゃんに貰ったんす」
「貰った?ドンドさんにですか?」
「そうだが、何か問題でも?」
「…登録は奥でさせていただきます。どうぞこちらへ」
そう言うとマイルは若い女性職員にカウンターを任せ、シュナ達を奥の部屋へと案内した。
何故カウンターではなく別室なのかと不思議に思いながらもその後を着いていくと、そこはどう見ても貴賓相手のために用意された立派な調度品が並ぶ部屋だった。
「どうぞお座りください。これからギルド長を呼んで参りますので暫しお待ちを」
「ギルド長?冒険者登録するだけなのだが」
「詳しくはギルド長から説明させていただきます」
一体なんなんだろう?訳がわからない3人は顔を見合わせるが、見当もつかない。
暫くすると、ドカドカと大きな足が聞こえてきたと同時に重厚な扉が勢いよく開き、セルムと同じくらい大柄な壮年の男性が入って来た。
「ドンドの爺さんから剣を譲り受けたっていうのはお前さん達か!?」
「そうっす。なんかあるんすか?」
「あの爺さんのお眼鏡にかなう奴がとうとう現れたんだな!あーすまねぇ、俺は冒険者ギルド長のガルウィングだ。よろしくな!突然だが、受けて貰いたい依頼が一つある」
「俺ら冒険者登録もしてないんすけど」
「一応確認するがここに来る前は何やってたんだ?」
「2人ともキルシュの第一騎士団に所属していた」
ダダの返答にガルウィングは目を丸くしたと思うと、部屋中に響く大声で爆笑した。
「ダーハッハッハッハ!それじゃ最初から上級冒険者登録でいいな!」
「そんな簡単に決めちゃっていいんすか?」
「ドンド爺さんの目利きと、キルシュの第一騎士団だったことだけで十分だ。騎士ギフトも持ってるんだろ?特級は功績がなきゃいけねぇからすぐにはやれないが、お前さん達ならそのうち特級に昇級するだろう」
冒険者登録は【初級・中級・上級・特級】の4段階に分かれており、個々の能力やギフトによって振り分けられている。
上級に昇級するには高い能力と功績が必要なため、分布的には中級が多い。更に特級になる為には高ランクの依頼達成実績が必要になるため、その数は両手で余る程しか存在しないという。
「くれるもんなら貰っておくけど、依頼ってなんすか?」
「アスタネの首都まで護衛をして欲しいんだわ。報酬は大金貨3枚だ。やってくれるか?」
「危険な仕事ならばどれだけ報酬が良くても断る」
「何故?」
「私達は常にこの少女といる。これは絶対だ」
ダダがそう言い切ると、ガルウィングはまじまじとシュナの顔を見つめる。このお嬢ちゃんは一体何者なのかーーー聞いたところでこの男達は答えないだろうことは容易に想像出来た。騎士団を辞めてまで一緒にいることを選んだ覚悟は半端なものではないだろう。
だが、今アルタには上級と特級の冒険者が不在だ。信頼出来る者にしかこの依頼は出来ない。
「危険がないとは言い切れないんだが…」
「それならこの話はなしだ」
「聖獣絡みでもか?」
「聖獣?」
「ああ、ここだけの話だ。この間の石喰事件があったろ?発生源と思われる東の禁足地の調査に行った際に見つけたんだよ。聖獣の幼体をよ。それを首都…というか王家に連れて行って欲しいんだわ。まぁ百聞は一見にしかずだ。見せてやるよ」




