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シュナと余命10年の騎士  作者: ぽこ
2章 新天地と出会い
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赤くなる日

「シュナちゃんおはよー!」



あれからいつの間にか眠っていたようで、朝シュナが目を覚ました頃には7時を過ぎていた。部屋には何故かタンタがおり、仲良くセルムと遊んでいる。



「ぼくね、みんなにはやく会いたくて、がんばって早起きしたんだよ!」

「おはようタンタ君」

「タンタは6時に来たんだよ。すぐに母ちゃんが迎えに来たけど、そのまんま俺と遊んでたんだよな?タンタ、シュナちゃん起こすの我慢して偉かったな」

「ぼくがまんした!」



ダダとセルムは既に支度を終えており、いつもの軽装とは違って、胸当てや肘当てなど討伐に行く時と同じ防具を身につけていた。タンタにはそれが珍しいようで「かっこいいね!」と目を輝かせながらペタペタと胸当てを触っている。


無邪気なタンタの頭上に浮かぶ『赤い0』を見たシュナはぎこちなく笑い、それをみたダダ達もそれを察してぎこちなく笑った。やはり赤くなってしまった。3人の心境は複雑だった。



「…よし!シュナちゃんも起きたし、飯食いに行くか!」

「よし!くいにいくー!」



そうして食堂へ行くと、朝食を摂っている何組かの宿泊客に混じり、タンタの両親が席を確保してくれていた。「こちらです!」と手を振り合図してくれるトトの隣には、ダダ達と同じように防具を身につけたドンドがいた。


祖父がいることに驚いたタンタは、嬉しそうにドンドの元へ駆け寄って行く。



「じいちゃん!なんでいるの!?」

「おぅタンタ!一緒に朝飯を食いたくてな。今日は店は休みにしたから、目一杯タンタと遊ぶぞ。ガッハッハ!」

「やったー!めいっぱいあそぶぞー!」



トトがにドンドを紹介しようとするが、ダダは首を振って止めた。もう既に昨夜会っていると伝えると、トトは不思議そうに首を傾げる。



「昨夜…あの後工房へ行ったのですか?」

「縁あってお会いすることが出来たのです。その際、工房でこれを譲っていただきました」



ダダ達はその背負う得物を両親に見せた。

見事な彫金が施された鞘を見たトトは目を丸くした。それはドンドが最高傑作として家宝にしていた物ーーー世界でも貴重な緋緋色金製で出来た2剣だったからだ。



「父さん!?あれは家宝だったやつじゃ?」

「おう、兄ちゃん達にやった」

「やった?どれだけ大金を積まれても頑として首を振らずに大切にしてたやつなのに?」

「あれは売り物じゃねぇ。使うべき時に、使うべき奴に渡すために鍛治神様が俺に作らせたもんだ。そん時が来たんだよ」

「その時…?」



ドンドはシュナを見つめる。

タンタの両親もドンドも、そしてこの場にいるすべての者達に浮かぶ『赤い0』を確認したシュナは静かに頷く。ドンドは一瞬眉間を深くしたが、タンタに悟られぬようすぐに表情を戻した。



「おいトト、今日は何があってもタンタを守れ」

「父さん?何を言ってるのかわからないんだが…」

「昔お前に話した聖女の御伽噺を覚えているか?」

「あぁ、山が崩れて魔物が出て来たってやつか?」

「おぅそれだ。何が起こるかは俺にもわからないが、それが今日だ。()()()()()()()()なんだよ」

「まさか。あれは御伽噺だろ?」

「聖女の話を信じなかった村はどうなった?」

「…魔物に襲われて皆死んだ」

「そういうことだ。聖女の言うことは信じろ」

「聖女?」



トトは辺りを見回す。

テーブル席には自分の妻子と父、そしてシュナ達3人しかいない。3人はドンドの突拍子もない話を聞いていても平然としている。「まさかそんな」と言いかけるが、3人の真剣な面持ちに絶句する。


シュナは静かに話し始めた。



「今わたしの目にはここにいる全員の頭の上に『赤い0』が見えます。わたしの家族にその『赤い0』が浮かんだ日がありました。…家族はその日ワイバーンに殺されました」

「ワイバーン?少し前にアドマリンに現れたワイバーンの事件の事かい?」

「はい。あの日、家族3人とも亡くなりました」

「それは…いや…でも…」

「俺ら第一騎士団だったからその話は保証するっす」

「第一騎士団!?」



セルムが横から口を出す。



「実はイドの黒猫亭であなた達親子と会ってるんすよ。その時にシュナちゃんが見た数字が親子揃って残り3日。それを心配してここまで着いてきたってわけっす」

「イドからわざわざ着いて来てくれたんですか?」

「わたしにはタンタ君と同じ年頃の妹がいました。あの日何も出来ずに死なせてしまったけれど…せめてタンタ君に何かできないかって。そうしたら2人が色々動いてくれました」

「…」



タンタの両親は絶句したまま、顔を見合わせた。

こんな荒唐無稽な話を信じろと言う方が難しいだろう。ドンドが信じてくれたことが奇跡なのだ。



「ぼく、シュナちゃんのことしんじる!」



大人の会話を辛抱強く聞いていたタンタが叫んだ。

どこまで意味を理解しているかはわからないが、小さな拳を握りしめながらその目はいつになく真剣だった。





「シュナちゃんのことも、セルム兄ちゃんのことも、ダダ兄ちゃんのこともしんじる!」

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