旅立ち
「それじゃあメアリーさん、行ってきます」
家族の事故から1週間が経った。
幸いにも今日まで騎士達は誰1人として寄宿舎に戻って来なかったため、3人は人知れず出立することが出来た。
寄宿舎の裏口で、ひっそりとメアリーとダンに別れの挨拶をする。
「あんたたち、ちょっと目立ちすぎやしない?」
見送りに来てくれたメアリーは訝しげに3人を眺める。
美貌のダダや長躯のセルムはその身のこなしが騎士そのもので隙がない。そこに13歳の平民シュナが加わった3人組はどう見てもチグハグな組み合わせだった。
「やっぱりそう思います?」
「まぁ仕方ないっす」
「脳筋がデカすぎるんだ」
「顔面求愛孔雀みたいなダダさんに言われたくないっす」
「なんだその求愛孔雀って」
「顔面くっそ派手ってことっす」
「お前…」
「まぁまぁ!」
シュナは慌てて仲裁するが、メアリーとダンはすっかり呆れ顔だ。
「出発前からこの調子で大丈夫かい?シュナちゃん、こいつらの愚痴でもなんでもいいから何かあったら伝令鳥を飛ばすんだよ」
「はい。何かあったら必ず連絡します。メアリーさん何から何までお世話になりました。父さん達のお墓も、キリコの家終いのことまで頼んでしまってごめんなさい」
メアリーはもう身寄りのないシュナの後見人になってくれ、残していく全ての手続きを代行してくれるという。後見人は確かな身元がなければ出来ないが、騎士団関連に従事しているというのは確かな身元があるという証左なのでその手続きもすんなりと通った。
「シュナちゃんのためならなんて事ないさ。うちには子どもがいないから、娘が出来たようで嬉しいんだよ」
「メアリーさん!」
シュナはメアリーの胸に飛び込む。
いつだって優しかったメアリーとの別れは、やはり悲しかった。泣きそうなシュナをメアリーはぎゅっと抱きしめる。
「シュナちゃんの安住の地が見つけられますように」
「メアリーさんとダンさんがずっとずっと元気でいますように」
すると、ふわりとダンとメアリーの体が琥珀色に光る。
どうやら無意識のうちに祈祷していたようだ。
「あ」
「ふふ、ありがとうね。でも無闇矢鱈に祈祷はしちゃいけないよ。その力は本当に大事な時に使うんだ」
「そしたら今のは正解ですね。メアリーさん、本当にありがとう」
メアリーはおかしそうに笑うと、シュナを抱く手に力を込める。
「行っておいで。わたしの可愛い娘」
こうして3人は、シュナがシュナらしく生きていける安住の地を求めて旅立っていったーーー




