表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/50

休憩時間

「いやーなんとか見つかって良かったわい。すまんの、お前さんをみすみすあの場所に行かせてしまって」

宿のベットにアリアを寝かせた後に正影は安堵した。知らなかったとはいえアリアが死にかねない場所に行くのを助長してしまったことに罪悪感があった。

「いえ、私の浅はかが招いたことですから。お気になさらず」

「はあ、そうはいってものぉ...」

どうしても気になってしまう正影を気遣ってアリアは別の話題に話を逸らす。

「そういえばどうやって流刑地に入れたんですか?何か空間を切り裂く能力でも持ってたのでしょうか?」

「いや、儂らにそんな能力はない。そういう系統の力はこの世界では結構特別なんじゃよ」

アリアは初めて聞く話に驚いた。過去に家にあった本を読み漁っていたが、そんな情報は無かった。本棚に抜けている箇所が度々あったので無くなった本に書いてあったかもしれない。

「特別、そういえばその特別な能力を持った人に会いましたよ。助けてくれましたけど、何者なんでしょうか」

「む、お前さんに接触したのか。気まぐれかの?もう一度会うことがあったら下手に刺激するのはやめておいた方が良いぞ。気に入られたら厄介だからの」

「なんでですか」

正影は答えを少し考える。

「そうじゃなー、まず特別と言ってもあくまでこの世界という話じゃよ。他の世界に渡れば空間を操る能力者なんていくらでもおるじゃろう。だがこの世界は強度が最高度なんじゃ、だからある程度力があり尚且つ特化していなければ空間は裂けん。たとえ神でも苦労するじゃろうな、なんでお前さんが会ったそいつはかなりの実力者であり、怒らせれば次元の狭間に置いていかれたり、遥か彼方まで跳ばされるから気をつける必要がある、という話じゃ」

正影は赤い果物、林檎のような果実を切ってアリアに食わせる。兎の形になっておりそのクオリティは一級の料理人に引けを取らない。

「最初の質問に戻るが、入れたのは協力者が来たからじゃ」

「誰の協力者ですか?」

「知らん」

「大丈夫ですかそれ」

アリアは楽観的すぎる正影が信じられなかった。

エピックだって口ではふざけるけれど行動は超合理的で徹底的に調査するというのに。

正影に呆れるものの、でもその姿勢はそんなに嫌いにはなれなかった。

「まあ大丈夫じゃろ、いい奴そうじゃったし。何より同郷っぽかったしの、時代はかなり違ってそうだったが」

アリアは大して興味が無さそうに答える。正直に言って他人の故郷の話なんてどうでもよかった。

「そうですか。で、その協力者は何をしたんですか?」

「見た感じからして遡行じゃろうな、空間を遡行させてお前さんが吸い込まれたゲートを顕現させよった」

アリアは驚きが表情に出た。遡行ということはつまり時間に干渉しているということ、そんなの使いこなされたら勝ち目なんてなくなってしまう。アリアはその協力者に対しての警戒度を最大にした。

「そんな警戒する必要はないじゃろ。なんとなくじゃがあれは、鍛冶に近いものだと感じたわい。で、多分時間を()()()()()()()()、故に存在が強ければ記憶の保持は容易いな、儂等みたいに」

ふむ、とアリアは納得する。確かに展開をやり直しても強者に覚えられては時間遡行はただの延命にしかならない、しかしそれでも警戒に値する能力には変わりないだろう。

「あの者は用事があるからとそそくさと帰ってしまったが教国に居るとは言っていたから、もし教国に行くような事があれば感謝ぐらいしておけい」



アリアはベットで寝ていた。当然だろう、なにしろ激闘を終えた後なのだから死んだように眠った。フレドの予想では二日程起きないだろうという事で、眠る前に二人に別れを言った。旅の目的は違うのでこれ以上邪魔はしてはいけないというアリアの気遣いである。

正影達からしたら二日ぐらいなら全然問題無いのだが、気難しい娘の折角の気遣いを無下にはできないので心配しながら旅立つことになった。

正影は「飯をしっかり食うんじゃぞ」と最後まで孫扱いし、フレドは「精々頑張って」と上から目線でイラッとしたが現状ではフレドに勝てないので飲み込むしかなかった。

そんな事があった現在、すやすやと眠るアリアの横にコソコソと動く影があった。

「へへッ。やっぱりぐっすりだぜ」

彼の名はレスサ、ただの泥棒である。アリアが宿に入る時、疲れ果てた彼女を見たときはチャンスだと思ったレスサは、仲間の二人が街を出るのを見て、深夜に侵入した。

「いい身体してんなあ、顔も一級品。コイツを売ったらどれほど高値がつくか、だがその前に楽しみたいよなぁ」

下劣な考えを持ち、更に股のモノを大きくさせながらアリアに手を伸ばす。

サクッ、とまるでパンをスライスする時のような軽い音が鳴った。

「あ、れ?」

レスサは自分の腕が床に落ちているのを見た。突然の事すぎて痛みも無かったが、認知すると同時に激痛が身体に迸る。

「あ、あああああ!!?なんッ──」

「はい静かに。アリアちゃんが寝ているでしょって」

後ろからレスサの口を手で覆ったのはエピックである。

「んんんんんん!?」

「だから静かにって」

そう言いレスサの足に銃弾をブチ込む。ちなみに銃声が出ないように銃は加工してある。

エピックはレスサの口を閉じながら外まで引き摺る。

「で、分かりきっているけど一応質問ね。君あそこで何をしようとしたのかな?」

「が、はぁはぁ、くたばれクソ野郎!邪魔しやがってぶち殺すぞクソッタレ!」

「うーわ口悪。君って相当なクズやね、こらあきまへんわぁ。どうせアリアちゃんにそういう事するつもりだったんでしょ?ハハッHAッ!笑えるよ、ほんとに」

「ハッ、俺を殺すか?俺には後ろ盾が付いてんだ、俺を殺せばハンドラーの怒りを買うだろうな。そうなれば──」

「黙れよ。不愉快だからさっさと殺すわ」

エピックは虚空から数十本の剣の柄をチラつかせる。

「僕は永く生きていてね、収集癖があったりするんだ。魔剣聖剣邪剣呪剣炎剣風剣etc...これらはその一部だ。勿論剣以外の面白そうな武器も集めているけどね。それはともかく、ここで質問。お前はどの武器で殺されたい?特別に選ばせてやる」

柄だけではあるがその武器達が途轍もない力を秘めていると、特に強い訳でもないレスサでも感じ取れた。

「テメエ何者だよ?」

バンッ!っと勢いよくレスサの横の壁に蹴りを叩き込む。

「質問を質問で返すなよ間抜け。お前は話も出来ない劣等種かよ、ちゃんと人間として会話してくださいよ欠陥品が」

いつもふざけた口調のエピックのマジトーンの煽り。近くにあった木に隠れて聞いていた『騎士』は思わず身震いする。

(あ、これ相当ブチギレてるな)

『騎士』は会話に割って入ることなんて到底出来なかった。だって怖いんだもん

「ん?」

エピックは剣の一振が揺れているのに気付いた。

「そうかそうか、やりたいんだな?ならば君を使おう」

取り出したのは黒く禍々しいオーラを放っている呪剣の一つ。『簒奪剣エルト』能力は斬った対象に追跡出来る呪いを刻むという単純なもの、能力自体に殺傷性は無いが代わりに魔力出力だけなら最高クラスの武器である。

「な、何でもするからさぁ。見逃してくれよぉ!俺はただ欲望に忠実だっただけだぜ!?永く生きてんなら分かるだろ、それが全力生きるってことだってさあ!確かに悪だがここまでする必要があるのかよ!?!」

エピックは魔力を溜めて剣を天に掲げる。月に照らされた黒紫(こくし)の魔力は神秘的だった。

死の前にしてレスサは思わず見惚れた。

(きれいだ)

剣が振り下ろされレスサは灰燼と化した。


「じゃ片付けよろしく。少年」

エピックは宿へと戻りながら『騎士』に指示を出す。それに対して文句を言いたいが、やっぱり頭が上がらないので愚痴に留める。

「はあ、師匠にも困ったものだ」

「おやおや?口答えかい?君も偉くなったもんだね」

「そういうのじゃないですよ。......で干渉しないって言ってませんでしたっけ、『忘却』の件もどうしたんですか」

「『忘却』は観察したけど利用出来そうだったから一旦保留した。監視として『万能者』を付けてきたよ」

「彼も難儀でしょうね。雑に強くて何でも出来てしまうばかりに面倒な仕事が転がり込んでくる。本来の仕事もあるというのに」

「便利なのが悪い」

『騎士』はもう諦めたように答える。

「そうですね、はは」

エピックを見送り、見たくなかったものに目を向ける。

一応民家には当てないように配慮はしてはいたがそれでも大通りは滅茶苦茶だ。『騎士』が防音の結界を張っていたので近隣住民が気付くことはなかったが後始末を一人でやらなければならないのは中々骨が折れる。

(直すのは自分の本分じゃないんだけどなぁ)

愚痴を吐いたところで良くなる訳じゃないのでさっさと作業をするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ