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瑞国記  作者: Yuki_Mar12
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(8)

***




 その時代、民には土地が与えられ、耕作と税としての生産物の納入が義務付けられていたが、官僚や武将などの上位の者は、その義務付けはなかった。従って、武将に自身の土地を譲り渡した民は、武将の特権の恩恵の覆いに入ることで、納税が免除され、それは合法であった。


 武将の戦功に比例してその土地の面積は拡大し、猛将といわれる孫一が、本来より大きい面積の土地を有していても、疑問の余地はないのだった。


 黄宇は調査員たちの調査報告を受け、孫一に不信感を抱き、彼を宮中に呼び寄せて真相を問い質すことにした。


 孫一は護衛兵を伴ってきたが、宮中には単身で入るように指示され、彼は従い、宮中の衛兵に連れられて、謁見室の黄宇の面前までやってきた。襟の高い青い、金の刺繍が施された着物に身を包む孫一は、肩幅が広く、いかにも猛将という出で立ちで、その顔は、目が細くてふてぶてしいのが特徴だった。


 彼は抱拳礼して見せると、言った。


「閣下のお呼びということで伺いましたが、どういった御用でしょうか?」


「まぁ、そこに座れ」


 椅子の肘掛に頬杖を突く黄宇は、どこか胡散臭がる目で、配下の将を見て促した。


 謁見室には、黄宇の侍従の他、白文がおり、彼等は床にそれぞれ一列になり、互いに対座していた。


「孫一よ、ずいぶん民心を束ねているそうじゃないか。よく慕われて、民に忌み嫌われているわたしは、嫉妬せざるを得ないなぁ」


 孫一は初め、何のことかと疑問に思ったが、すぐに土地のこととピンと来たようで、納得した。


「田畑を捨てて失跡する者が後を絶ちません。わたしは、放棄された田畑を回収しているだけであり、他意はございません」


「回収された田畑は、全て放棄されたものか?」


「……左様にございます」


 黄宇が疑うように聞いた後、刹那ではあったが、孫一の回答まで、謎の間があった。


 白文と侍従たちは嘘臭さを感知し、謁見室の中は疑いの空気に満たされた。


「このところ、税収が落ち込んでいてなぁ、困っておるのだよ。もちろん、武将のお前に税負担を強いるつもりはないが」


 孫一は頭を下げ、「ハイ」、と返事した。


「閣下には、戦での武功にて返報する所存にございます。ご心配には及びません」


 黄宇は「フン」、と呆れたように嘲笑すると、「結構だ」と述べ、孫市を退けた。彼は立ち上がり、丁寧に一礼すると退室した。


 静寂の謁見室、黄宇は頬杖を突いていない方の手の指で、どこかイラついたようにトントン肘掛を叩きながら、「そうか」、と一人考え込むように呟いた。


「疑いのためにここでヤツを殺めれば、面倒になろう。屈強で、切るには惜しい将だが、今後の憂いとなるのなら、断つほかあるまい」




 白文、そして侍従たちにおいては、有事の予感が強くするのだった。




***

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