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その時代、民には土地が与えられ、耕作と税としての生産物の納入が義務付けられていたが、官僚や武将などの上位の者は、その義務付けはなかった。従って、武将に自身の土地を譲り渡した民は、武将の特権の恩恵の覆いに入ることで、納税が免除され、それは合法であった。
武将の戦功に比例してその土地の面積は拡大し、猛将といわれる孫一が、本来より大きい面積の土地を有していても、疑問の余地はないのだった。
黄宇は調査員たちの調査報告を受け、孫一に不信感を抱き、彼を宮中に呼び寄せて真相を問い質すことにした。
孫一は護衛兵を伴ってきたが、宮中には単身で入るように指示され、彼は従い、宮中の衛兵に連れられて、謁見室の黄宇の面前までやってきた。襟の高い青い、金の刺繍が施された着物に身を包む孫一は、肩幅が広く、いかにも猛将という出で立ちで、その顔は、目が細くてふてぶてしいのが特徴だった。
彼は抱拳礼して見せると、言った。
「閣下のお呼びということで伺いましたが、どういった御用でしょうか?」
「まぁ、そこに座れ」
椅子の肘掛に頬杖を突く黄宇は、どこか胡散臭がる目で、配下の将を見て促した。
謁見室には、黄宇の侍従の他、白文がおり、彼等は床にそれぞれ一列になり、互いに対座していた。
「孫一よ、ずいぶん民心を束ねているそうじゃないか。よく慕われて、民に忌み嫌われているわたしは、嫉妬せざるを得ないなぁ」
孫一は初め、何のことかと疑問に思ったが、すぐに土地のこととピンと来たようで、納得した。
「田畑を捨てて失跡する者が後を絶ちません。わたしは、放棄された田畑を回収しているだけであり、他意はございません」
「回収された田畑は、全て放棄されたものか?」
「……左様にございます」
黄宇が疑うように聞いた後、刹那ではあったが、孫一の回答まで、謎の間があった。
白文と侍従たちは嘘臭さを感知し、謁見室の中は疑いの空気に満たされた。
「このところ、税収が落ち込んでいてなぁ、困っておるのだよ。もちろん、武将のお前に税負担を強いるつもりはないが」
孫一は頭を下げ、「ハイ」、と返事した。
「閣下には、戦での武功にて返報する所存にございます。ご心配には及びません」
黄宇は「フン」、と呆れたように嘲笑すると、「結構だ」と述べ、孫市を退けた。彼は立ち上がり、丁寧に一礼すると退室した。
静寂の謁見室、黄宇は頬杖を突いていない方の手の指で、どこかイラついたようにトントン肘掛を叩きながら、「そうか」、と一人考え込むように呟いた。
「疑いのためにここでヤツを殺めれば、面倒になろう。屈強で、切るには惜しい将だが、今後の憂いとなるのなら、断つほかあるまい」
白文、そして侍従たちにおいては、有事の予感が強くするのだった。
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