↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瑞国記  作者: Yuki_Mar12
【第二章】
PR
29/32

(9)

***




 瑞国の南方に、海に向かって突き出た半島があった。そこに、三つの国があり、互いに拮抗していた。三国はその半島の覇権を巡って争っており、特にその内の一国の『回』が強かった。瑞は、天下の中心としての矜持があり、また、敵対関係にある回と密に接しており、回を打ち倒して国力を顕示することが重要だった。広大なる天下の全き統一こそ、瑞と、瑞に連なる王朝の大望だった。


 季節が春より夏へと変わり、その頃、瑞国が遠征軍を編成し、半島まで、回の征伐のために赴くことになった。遠征は二度目であり、一度目は、瑞と回の間に戦力差があまりなく、総力戦となって決着が付かずに終わったのだが、戦力が回復した上でする二度目の遠征においては、敵国がどの程度回復しているかが肝要だったし、また、攻略するための戦法も同じだった。


 遠征軍には、皇帝である楊権が最高司令官として就任し、長期に渡る遠征の間の国政は、皇太子である楊光が担うことになった。彼は有能であり、勉学や武芸の訓練では才気煥発といった具合だったものの、まだ実地での政務には不慣れだった。


 楊光は気位が高く、他人を頼るのが苦手だったが、政務に関しては援助の手を求めざるを得ず、熟練の官僚に後見人になって貰った。その官僚が陰謀を持っているとは、彼は露も知らず、その太鼓持ち的言動に無邪気に気をよくして、重用してしまった。


 その官僚は、十分に皇帝の信頼が得られたと思うと、ある夜、手下に命じて国庫に保管された財宝を盗ませ、後ほどその件が明らかになると、楊光に対し、捏造した情報を密告して、一人の物腰の柔らかい官僚に、無実の罪を着せた。


 謀略で仲間を陥れようとした官僚は、よくしゃべって明るいが、あまりまじめでない怠け者であり、一方、謀略に陥れられた官僚は、寡黙で不愛想だが、まじめにつとめる働き者だった。


 この件によって、前者は正義の告知者として褒賞され、後者は卑しい盗人として罰が与えられることと決まり、けれど、実刑の前に真実が暴かれた。


 怪しいと感じた黄宇が精査して介入したのであり、彼はまことの罪人を告発した。


 結果、当初正義だった者と罪人だった者の立場は逆転し、善意の第三者によって、危うく失脚しそうになった官僚は事なきを得、謀略を成功させていい目を見ようと企んでいた官僚は、追放されたのだった。


 この件で、黄宇は皇太子の失策を盛んに非難し、その剣幕は、まるで不倶戴天の敵に対するかのようだった。実際黄宇は、くだんの事件においては善意の人間だったが、次の皇帝になりたいという彼の熱意の最大の妨害者である皇太子への非難においては、いささか度を失った、妄執にとらわれた批評家だった。


 失策によって皇太子の声望が堕ちることで、自分がその代わりとして浮上すればと黄宇は期待したが、楊光の失策は、その将来が崩壊するほどのものとはされなかったし、黄宇は、ただ彼のみが皇帝に相応しいと思い込んでいるだけで、誰の支持すら得ていなかったのである。




***

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。