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瑞という国にとって、斉という郡はその一部であり、斉が危機に晒されることは、自動的に瑞も同じ状態になるわけだが、皇帝は、内乱で不安定になっている斉に一向に援軍を寄越さず、まるで傍観しているかのようで、しかし黄宇は、その矜持のために彼に助けを求めず、自力で鎮圧したいのだった。
斉の丞相は再三、支援を要請すべきと王に強気に進言したが、王が頑迷にはねつけ、けれど、作戦の考案は押し付けるのだった。王の愚昧さに、丞相の忠誠心は次第に損なわれていった。
度重なる出撃で戦費は嵩み、戦のために若い職人や商人が家族の輪よりもぎ取られて動員され、すでにかなりの程度落ち込んでいた民の支持は更に落ち込み、家を捨てて逃げ出す者が出たり、役所への集団での強訴が起きたりした。
街の空気が荒んでいく日々が続き、ある日、他の多くの者と同じく己の挙措に悩む白文は、黄輝に王宮の人影の少ない廊下で手招きされ、何の用かと聞いてみると、こっそり、私兵を持ちたいと相談して来、思わずギョッとした。
「何を仰るのです? そのようなこと、王がまずお許しになりません」
「公の軍ではない。わたしは私兵と言っている」
その場でサクッと話が終わりそうにないと思った黄輝は、付いてくるように白文に目配せし、彼はきっと面倒事が待ち受けているに違いないと確信されたが、仕方なく従うことにした。
黄輝の個室は、勉強のための机と椅子や、天蓋のない寝台など、飾り気のないものばかりでさっぱりしていたが、唯一、机上の陶器に挿してある花束が、姫の部屋に相応しい華やかさを慎ましく醸し出していた。
黄輝は椅子に座り、白文は床に正座した。
「父上は妄執に囚われて、視野狭窄に陥っている。あれでは反乱軍の鎮圧など出来まい」
黄輝が例によって明敏に、予言めかして言った。
「母上は」、と彼女は続けた。「あくまで父上の味方でいると仰る。王妃の鑑と賛嘆すべきだが、わたしはあいにく、心中したくない」
「そのために、姫様は私兵を率いたいと?」
「憂き目に遭いたくなければ、逃げねばならぬだろう。今、各地で安寧に戦禍が取って代わっている。剥き身で行くのは剣呑極まりないというもの」
「ご両親との別離は、おつらくないのですか?」
黄輝は、どこか思い屈するように俯くと、「わたしだって、人の子だ」、とポツリと言い、面を上げた。
「悲しみや躊躇いはある。だが、このまま拱手していて何になる? 父上の政権が反乱によって覆されることは、わたしの目にはほぼ明白だ。そうなれば、わたしの身柄はどうなる? わたしには、暗澹たる展望しか見えないのだが」
確かにそうだ、と白文は同意し、また、この弱冠十二歳の敏さに改めて感心し、更に言えば、どこか空恐ろしくさえ思うのだった。
黄輝は強い自信に支えられているようで、その様はまるで、机上の陶器に咲く花の如く、鮮やかで凛としており、太陽を求め、明るい瞳を健気に煌かせているのだった。
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