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劣勢を示唆する黄輝の鋭い意見によって、黄宇において、あるいは孫一の雑兵たちに斉軍が転覆させられるかも知れないというおそれがよぎったが、王としての自負と責任のある彼には、到底認められるものではなかった。黄輝の意見は結局冗談のように一笑に付され、黄宇は自軍の予定調和的勝利を信じた。
だが、徐々に雲行きは、そうであって欲しいと思われたものとは違う方に移ろっていき、反乱軍は強勢で、打ち崩すには、斉軍の力が足りなかった。
その内反乱軍が、必ずしも一人の武将と農民たちから構成された軍ではないことが、おぼろげに明らかになってきた。彼等は単一の軍として動いているのではなく、複数のより小さい単位でまず出来ているようだった。
白文の友人の墨英も、武将として出陣し、城砦の攻略に参加したが、敵軍に対して斉軍の戦略が嚙み合わず、引き上げてきた。
次戦に向けての軍議が王宮で行われ、白文は、解散した後の墨英と、王宮の基壇の欄干のそばで、街並みの方を向いて話した。
「新しい知らせがいくつか入ってきて」、と墨英は言った。「忠誠を破ったのは、孫一様だけではないみたいだ」
夕べになり、月比の街並みは、夕日に照らされて橙色に燃えていた。
「それは要するに、他の武将が孫一様の麾下に入ったということか」
「その事実が、官軍を動揺させて、意気を挫いている。それに、相手の戦略の立て方が多層的なんだ。軍師曰く、そこそこ知能のいい戦略家がいるに違いないって」
「趨勢はどうなんだ? ぼくは宮中の庶務ばかりしていて、詳しいことは分からないんだが」
「趨勢は、よくない」
墨英はきっぱり断じるように言った。
「おれたちの状況はジリ貧だ。追い風は相手の方にあり、おれたちは完全に逆風に晒されている。大義は政変を目論む賊軍の方にあり、圧政をしく王の官軍の方にはない」
今回の騒動に関して白文は、ただの一将校の反乱であり、確かに、共鳴しやすい理念が反乱の根拠にはあるものの、早い段階で鎮圧されておしまいになるものだと、楽観的に思っていた節があった。
ところが、事態は反対の様相を呈しており、官軍が賊軍に負ける見通しは、かなり現実味があり、実際そうなれば、体制は崩壊して革命という劇的展開に逢着するだろう。
白文において、焼け野原になる月比の街が想像された。それは、災害であり、不幸であり、混乱であった。
その陰惨さに顔をしかめた白文は、鼻でスゥとため息すると、「どうしよう」、と呟いた。
「今ある私財を全部持ち出す準備をしておくといい。おれも、ひょっとすると、機を見て寝返るかも知れない」
墨英が、苦渋の面持ちでそう言った。
街並みが、夕焼けの色に染まっていて、その光景は綺麗だったが、この光景が今後も長く続くとは限らず、二人の青年の心中は極めて複雑であり、また、ひどい不安に胸がザワザワして苦しかった。
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