表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瑞国記  作者: Yuki_Mar12
【第一章】動乱の兆し
PR
12/27

(12)

***




 その日の空模様は怪しかった。灰色の雲が垂れ込め、空気はうっすら冷たく、それまで春の陽気に薄着だった人々は、一枚上に重ね、防寒した。


 雨がポツポツ降り出した折、斉の王宮に急報が持ち込まれた。


 南方の農村で、民が武装蜂起したとの知らせだった。指揮するのは孫一で、出張で不在のはずの彼がどうしてかと疑問に思う者がおり、黄宇もはじめ驚いたが、心中で予測出来ていた部分があり、すぐに冷静に戻れた。


 孫一の率いる反乱軍は、すでに活動を起こし、農村の近傍の城砦を制圧したようで、そこに勢力を集中させているようだった。


 黄宇が将軍に命じ、号令によって兵士が召集され、出撃したが、相手の防備が堅牢で、撃破は叶わなかった。


 帰還した伝令によると、反乱軍は日々増員しているようで、数的規模において強く、彼等の多くは農民出身の義勇兵だったが、重税を課す王への反感で一致団結して士気が高く、中々手強いのだった。


「ただの烏合の衆に過ぎんというのに、正規の軍が遅れをとるなど、恥であり、言語道断である」


 王宮の執務室で、床に正座する、立派で厚い鎧を纏った将軍に対し、肘掛椅子にどっしりと座る黄宇は、憤然と言い放った。


 将軍は平謝りし、善処すると告げたが、黄宇の苛立ちは激しく、というのは、彼のもとに、彼の忌み嫌う皇帝の、港湾の改築を急かす催促の通達が来たからである。通達には、催促に応じなければ、国が地方に交付する公共事業用の物資を減らすという警告が付記されていた。


 ふと、「失礼します」という声が聞こえ、黄宇と将軍と、一隅に座る白文はハッとしたが、黄輝が来室したのだった。彼女は不安げに眉をひそめて、一歩父の方に進み出た。


 父は娘の顔を見ると、少し怒気が和らいだようで、「どうした、輝よ?」、と気遣わしそうに彼女に尋ねた。


「父上、僭越ながら申し上げますが、わたくしたちは、すでに四面楚歌かも知れません」


 白文と将軍は唖然として黄輝の方を凝視し、その凛然とした声音に耳を澄ませた。


「なぜだ?」、と黄宇は困惑して更に尋ねた。「相手は猛将の孫一と言えど、思い上がりによってはぐれた愚かしい一将校に過ぎん。そして奴が率いるのは、下らない百姓どもだ」


「確かに、彼等は個人では、単なるしがない耕作者でしょう。ですが、一軍を成せるほど集合すれば、個の力がどれだけ小さかろうと、集積の結果、大軍さえ覆す脅威となり得ます」


「輝よ、我々の戦力に、素性の卑しい弱者どもの力の集積がまさっているというのか?」


「父上は、それだけ民の反感を買ってしまったのです」


「わたしが……」


 黄宇は、娘の指摘に茫然とし、項垂れた。


 黄輝は白文の方にチラッと目を向け、二人の目は合ったが、彼等は半ば共鳴するようで、半ば睨み合うようだった。


 


***

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ