表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瑞国記  作者: Yuki_Mar12
【第一章】動乱の兆し
PR
11/26

(11)

***




 斉軍の首府としての街『月比(がっぴ)』より、港湾に孫一の組み込まれた部隊が派遣されてから、すでに数日が過ぎた。


 黄宇は、彼にとって目の上のたんこぶである皇帝の命に従い、このたび部隊を編成し、出発させたのであるが、その進行は、円滑に行かないと見通されていたし、それは彼の狙いだった。


 部隊には猛将である孫一がいるが、彼以外にも武将がおり、二人いたのだが、彼等は斉軍の中で腕はそこそこ立つものの、それぞれ素行が悪いことでその名が通っていたのである。


 港湾までの短くない道中、黄宇の思惑通り、二人の武将が妨げとなり、部隊の足並みは乱れ、捗々しく進まなかった。彼等は必要以上に寄り道したがり、そこで部隊に与えられた資金を使い込んで遊蕩し、要するに、彼等は人格的に未熟であるか、偏りがあり、戦場以外では、人材としてほとんど有用ではなかったのである。仕事である以上、戦場での血なまぐさい荒仕事は彼等は仕方なくするが、それ以外は無責任で、自己本位的で、野放図だった。


 ことに彼等は好色で、自分たちの武芸が優れていることを利用し、繰り返し若い女を無理矢理引き連れてきては、機嫌を取らせようとするのだった。


 同行する技術者たちは彼等に対してすっかり呆れていたが、文句を言えるほどの胆力はなく、孫一は、呆れを通り越して、最初は我慢していたが、次第に腹に据えかねるようになっていった。


 ただでさえ今回の任務は、黄宇の悪意によって仕組まれた気乗りしないものなのに、下らない武将たちに足を引っ張られ、いよいよ孫一は激昂し、ある鄙びた村で、武将たち二人に話したいことがあると言って連れ出すと、木立の中で、帯びている剣を抜いて彼等をさっと切り捨ててしまった。


 そうすることで、孫一の怒気はある程度治まったが、これ以上任務に従事することの無意味さに耐えられず、彼は、かねてよりあった計画に着手することにし、部隊の他の者たちに、一時離脱すると言い渡すと、乗っている馬を転回させ、元来た方へと単身引き返した。


 風を切る孫一の頭には、黄宇の像が、荒々しく燃える熱情の炎に浮かんでいた。次なる標的は彼だった。そして、隷従している黄宇への反抗は、決して彼の思い付きではなく、理性によって打ち立てられた計画であり、その下地には、日に日に増していく民の反感があり、彼は、逃げたいと望む民たちの受け皿となり、税の負担からの解放と引き換えに、味方に着くよう彼等に約束させたのである。


 孫一は生まれ持った屈強さと努力で成功した武人であり、安定した自信を持っていて、黄宇と違い、皇帝への劣等感や反感に塗れておらず、民と宥和的であり、不必要に民に負担を強いる黄宇の圧政に以前より内心反対で、出来れば打ち倒して自分が新しい王になれればという理想が、元々あったのである。




***

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ