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斉軍の首府としての街『月比』より、港湾に孫一の組み込まれた部隊が派遣されてから、すでに数日が過ぎた。
黄宇は、彼にとって目の上のたんこぶである皇帝の命に従い、このたび部隊を編成し、出発させたのであるが、その進行は、円滑に行かないと見通されていたし、それは彼の狙いだった。
部隊には猛将である孫一がいるが、彼以外にも武将がおり、二人いたのだが、彼等は斉軍の中で腕はそこそこ立つものの、それぞれ素行が悪いことでその名が通っていたのである。
港湾までの短くない道中、黄宇の思惑通り、二人の武将が妨げとなり、部隊の足並みは乱れ、捗々しく進まなかった。彼等は必要以上に寄り道したがり、そこで部隊に与えられた資金を使い込んで遊蕩し、要するに、彼等は人格的に未熟であるか、偏りがあり、戦場以外では、人材としてほとんど有用ではなかったのである。仕事である以上、戦場での血なまぐさい荒仕事は彼等は仕方なくするが、それ以外は無責任で、自己本位的で、野放図だった。
ことに彼等は好色で、自分たちの武芸が優れていることを利用し、繰り返し若い女を無理矢理引き連れてきては、機嫌を取らせようとするのだった。
同行する技術者たちは彼等に対してすっかり呆れていたが、文句を言えるほどの胆力はなく、孫一は、呆れを通り越して、最初は我慢していたが、次第に腹に据えかねるようになっていった。
ただでさえ今回の任務は、黄宇の悪意によって仕組まれた気乗りしないものなのに、下らない武将たちに足を引っ張られ、いよいよ孫一は激昂し、ある鄙びた村で、武将たち二人に話したいことがあると言って連れ出すと、木立の中で、帯びている剣を抜いて彼等をさっと切り捨ててしまった。
そうすることで、孫一の怒気はある程度治まったが、これ以上任務に従事することの無意味さに耐えられず、彼は、かねてよりあった計画に着手することにし、部隊の他の者たちに、一時離脱すると言い渡すと、乗っている馬を転回させ、元来た方へと単身引き返した。
風を切る孫一の頭には、黄宇の像が、荒々しく燃える熱情の炎に浮かんでいた。次なる標的は彼だった。そして、隷従している黄宇への反抗は、決して彼の思い付きではなく、理性によって打ち立てられた計画であり、その下地には、日に日に増していく民の反感があり、彼は、逃げたいと望む民たちの受け皿となり、税の負担からの解放と引き換えに、味方に着くよう彼等に約束させたのである。
孫一は生まれ持った屈強さと努力で成功した武人であり、安定した自信を持っていて、黄宇と違い、皇帝への劣等感や反感に塗れておらず、民と宥和的であり、不必要に民に負担を強いる黄宇の圧政に以前より内心反対で、出来れば打ち倒して自分が新しい王になれればという理想が、元々あったのである。
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