第一話
「ファルト。お前は民を救える力を手にしたのだ。だから、毎日10件依頼を受けろ。いいな?」
それが魔法使いになり、初めて言われた言葉だったと記録している。ギルベド前家長の言葉であり、消去と他言をしてはいけない重要な記録であるとされているため、毎日十二時に記憶し直す。
現在、招集命令を受け、指定された街へと向かっている。ファルトを見た人が皆お辞儀をする。記憶済みの事例であるため観察対象外。ギルドへ到着。ギルドマスター、ダンル・ワインズがこちらへお辞儀をした。
「よくぞお戻りになりました。大魔法使い様」
「要件とはなんですか?」
メモに書かれていた文言を伝える。
「……こちらへ」
彼の右頬及び右目が引き攣る。彼がファルトと話す際に見せる行動。
「はい」
カウンター横の通路を案内され奥の部屋へ先導された。部屋の中にファルトの管理者、ギルベド公爵家家長、ジール・ギルベドとグランズリー国国王、カタル・グランズリーを確認。
「ギルドマスター殿、ご苦労であった。あとは我らだけで」
「かしこまりました」
ワインズの行動を確認。部屋を離れカウンターに戻った模様。ギルベドに表情の変化を確認。
「規定時間から三十秒遅れているぞ」
ギルベドが目を細めながら笑う。この際彼は怒っているため、最適な角度でのお辞儀が必要。
「申し訳ございません」
「わかったならいいさ」
「ジール。早速金儲けの話に移りましょう」
グランズリーの発言を確認。マニュアルに則り解析不可。
「そうですな。ファルト」
名を呼ばれたため、姿勢を正す許可と判断し、顔を上げる。
「四大魔のうちの一体が西側諸国で暴れている。民を救うため、いつものように消してこい。あと今回は仲間がいる」
仲間という単語を解析。今回の依頼は共同作業であると推定。終了時、マニュアルの共同作業の章を参照予定追加。依頼内容の概要の解析完了。ギルベド、グランズリー両名への返答が必要。
「かしこまりました」
「わかったら、このメモの場所へ行け」
この場を離れるよう指示されたと判断し、挨拶を実行。
「失礼します」
実行を完了したため速やかにこの場の移動を開始。扉を閉め通路を移動。扉越しに彼らの会話を確認。
「今回の収入分配もいつも通りでよろしいですかな、陛下?」
「ああ、もちろんだとも。今回もずいぶん入りそうですな?」
「私の人形はよく働きますからな?」
「ははは!冗談がお上手ですな」
彼らの会話内容の解析を開始。ファルトの収入の会話であると推定。マニュアルに則りこれ以上の解析不可。
彼らはファルトの収入の九割を使用。規定により彼らの権利であるため問題なし。提示された場所への移動開始。




