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エデンズエレメンター  作者: 雪梅るり
二章 山麓の街フラトゥス

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二十五歩目 追い風

御覧くださりありがとうございます。

次話は7/18(土)の予定です。

もう少しお付き合いいただけると嬉しいです。



 『クラフターのお仕事を見せてあげるよ。フワワさん』


 ―― そう言って器用に結界具を浮かせる魔法を維持しながらヴァルの出した指示通りにフワワが持ち上げたマントの裾に、ヴァルは取り出した魔石を触れさせる。


 クラフターは結界具や防具だけではなく、エレメンターの支給服を製作する。

 エレメンターの支給服の模様の色で製作したクラフターのエレメントが分かる仕組みだ。

 フワワの支給服は翡翠色、つまりフワワと同じ風のクラフターが製作している為、通常よりも分厚く長く重たいマントでも多少他よりは軽くなる。

 支給服の全てにおいてステイタス値の低いフワワの安全を考えて防御性能に特化したものが選ばれており、特にマントはそれが顕著だった。

 同じクラフターのヴァルには『鑑定レンズ』などを使わなくても分かる。


 エンチャンターは装飾品以外では後方支援の戦闘員として戦える。

 魔法によって味方の攻撃や防御に装飾品よりも上の効果を付与できるエンチャンターに近く、けれど同じように後方支援の戦闘員にもなれないのがクラフターだった。


 クラフターにも似たことはできる。

 けれど戦闘の最中でも任意の相手に必要な効果を付与できるエンチャンターに対して、クラフターが戦闘員に向かない最たる理由は、効果を付加する『物』が必要であり、なおかつ触れなくてはいけないのだ。


 エンチャンターは『人』に付与し、クラフターは『物』に付加する。

 この違いが、戦闘員のクラフターが居ない理由だ。


 ヴァルの力だけでは足りない部分を補うために使っている魔石が花が開くように表面から一枚、一枚と丸い塊が剥がれて、マントに落ちるように溶けていく。

 そうしてゆっくりと描かれていく新しい模様にフワワがきらきらと青い目を輝かせて見つめる。


 「クラフターの付加魔法はエンチャンターの付与魔法よりも上の効果を与えられる。けど、こんな風に時間がかかるから、どうしても戦闘員向きにはならないんだ」


 小さく浮かび上がるように描かれる模様がどれほどの効果を与えても、クラフターの付加魔法は戦闘のテンポを崩してしまうし、その間誰かが最低二人は守らなくてはいけなくなる。

 そして強さを、効果を、更に増やせばなおのこと時間がかかってしまう。


 かかる分だけ効果が絶大だったとしても、重ねて付与すれば補えるエンチャンターと比べられて、どうしてもパーティーには望まれないのだ。


 手の中から魔石が無くなって、模様が完成する。


 「俺にできるのはせいぜいが貴方たちの追い風程度だけど、フワワさんがしたいと思った事が少しでも出来るように手伝えると思うんだ」

 ヴァルの見立てでは相当に低いステイタス値だと思われるフワワに、付加した効果はこの場にいるエレメンターの誰も超えない結果になるだろう。


 「俺の追い風を使えば、フワワさんなら絶対もっとすごい追い風になれる。……きっと、カナカさん達の事だって助けられる、はず」


 言い切れないのは、どうしてもあまり高いと思えないフワワのステイタス値が透けて見えてしまったからだ。

 それでもヴァルの言葉を真っ直ぐな青い目で見上げて聞いていたフワワは、新しくマントの裾に芽吹いた新緑の模様を見つめる。

 そうして模様が歪まない程度に強く、マントを握りしめたフワワは、ヴァルへと満面の笑顔を浮かべた。


 「はい! 私、ヴァルさんと一緒に頑張りますっ!」

 「…………うん? 俺は見てるだけだぜ」

 戦えない、と言いたげに軽く手を振るヴァルに、フワワは首を左右に振って、マントの裾の模様がヴァルに見えやすいようになおの事持ち上げる。


 「ヴァルさんの追い風と一緒に頑張ります!」


 言い切ったフワワは、ソノラがメイと話し終えたのに気が付いて「行って来ます」とヴァルに言い残して駆けていく。

 やる気に満ち満ちたフワワを見送ったヴァルは「まぁ、いいか」と笑ったのだ。








 ―――― そうして宣言通りに頑張ったフワワは、本当にカナカの追い風になった。


 『魔』を討伐した後、ギルドと元々担当だったからと《唸る風》パーティーが後を引き受けてくれたため早々に貸し家に戻ったカナカ達はフワワが綺麗に畳んで見えるようにしたマントの、新緑の模様を見つめる。


 「なるほど。だからアーリャの風に押し負けなかったんだな」

 「うん!」

 ネスタが納得したように言えば力強くフワワが頷く。

 フワワの通常のステイタス値ではアーリャが発生させた風に負けてカナカが体勢を立て直す前にフワワの風は散っている。


 けれど何故かそうならず、体勢を立て直し、なおかつ足場となって維持され続けていた事を不思議に思って尋ねられたフワワの説明が、ヴァルとのやりとりだった。


 クラフターではないカナカ達ではその模様を見ただけでヴァルが付加した効果は分からないが、おそらく攻撃を上昇させたのだろう。

 そうでなければアーリャの暴風にフワワの魔法が耐えられたとは思えない。





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