二十四歩目 完了
「ごほっ! ヴァ……ヴァッくん! 見える!?」
「げほっ! い、ごほっ!! み、おえぇっ!!」
「ヴァルくん、きたねーっス!!」
メイの言葉に返事をしようとして思い切り土埃を吸い込んだヴァルのむせる声にファジが辛辣な言葉を吐いた。
「フ、フワワ……! どこですか? 無事ですか!?」
「大丈夫だよー! ソノラちゃん!」
視界不良の中で口元を押さえながらフワワが最後に見えた方向へと慎重に進めていたソノラに、明るいフワワの声が返る。
少しずつ晴れる視界の中で、結界に近い位置に居ただろうフワワは、おそらく近くに居た事でフワワを庇おうと覆いかぶさったティールごと素早く結界内から移動したらしいネスタが暴風と土埃から庇っている。
ネスタの後ろには、ネスタの分の盾を地面に突き立てて背後の三名を守ったムルムの姿があった。
ネスタとムルムのおかげで割と余裕のあるティールが片手をついて軽く咳き込んでいる下でフワワが俯せで頭を守るように抱えていた片手をひらひらとソノラに振って笑っていた。
力が抜けるほどいつも通りの明るい笑顔にソノラは笑みを零した。
「ネスタ。ムルムさん、ティールさん。ありがとうございます」
「ありがとうございますっ!」
「どういたしまして」
「全員無事そうで良かった」
「間に合ってよかった。フワワよりは離れていたから大丈夫だろうとは思ったけれど、ソノラも無事で良かった」
ソノラのお礼の言葉にハッとなったフワワが続けてそう言えば、ムルムとティールがそう言って、ネスタはソノラを見上げて安堵したように柔らかく笑って少し離れた。
そうすれば覆いかぶさっていたティールも離れ、ムルムがネスタに盾を渡して立ち上がる。
フワワにネスタが手を貸して二人揃って立ち上がった。
「討伐はできてるか!?」
ムルムの大声に晴れてきた視界の中でヴァルが片手を上げて左右に振った。
「『鑑定レンズ』では見えない! アーリャ! カナカさん!」
ヴァルの呼ぶ声に唸り声を上げる風が土埃と炎を蹴散らして、鞭を手元で纏めて握ったアーリャがもう片方の手を高らかに持ち上げた。
「討伐、完了~!」
上機嫌にそう言ったアーリャの、持ち上げたその手には魔石が握られている。
歪な半円の形をした魔石は半分以上が緑色に染まり、残りの部分が赤色に染まっていた。
そしてアーリャと同じく、カナカの手の中には似たような魔石がある。
ただしカナカの方は半分以上が赤色に染まり、残りの部分が緑色に染まっていた。
「やったーーーー!」
「よくやった! アーリャ!」
「がんばったもーん!!」
「ほんとーに、アーちゃんってばすごい! 偉い! 大天才~~~~!」
跳ねるようにアーリャに抱き着いたメイに続いてムルムがアーリャの頭を勢いよく撫でる。
アーリャが誇らしげに笑って言うのにメイが重ねて褒めていく。
ファジが跳ねるように近づいて「さっすが、アーリャちゃん!」と褒め、ティールがベティと一緒に遅れて合流し、ホッと安堵したように笑みを零す。
カナカは関わらないように離れてフワワ達の方を目指して足先を向けるよりも早く、駆け寄ってきたフワワが小さく呟く。
「【治癒の花風】」
「……!」
小さな声で呟かれたフワワのギフト魔法が、土埃の最中で新しいグローブに替えて隠したカナカの手の火傷を花開くような柔らかい風で癒し切る。
そして駆け寄ってきた勢いのまま、フワワがカナカに抱き着いた。
「な!?」
「カナカくん! すごーいっ!!」
勢いと、メイ達の雰囲気に釣られたフワワの行動にカナカが金色の目を大きく見開いて驚く。
フワワはすぐに体を離したものの、それでも近い距離できらきらと輝く笑顔でカナカを真っ直ぐに見つめる。
「やっぱりカナカくんはすっごく強くて格好いいね!!」
「べ、べつに普通、だっ!!」
「そんなことないよ! 絶対大変そうだったのに、討伐できたんだよ! すごいよ!」
どことなくぎこちない声を張ってそう言い返したカナカの耳が真っ赤に染まっているのにも気づかずフワワは重ねて「すごいすごい」と褒めていく。
ネスタとソノラはフワワに少し遅れて二人の近くに来て、もはや見慣れて来た光景に顔を見合わせて、そっと笑みを零した。
ヴァルは少し離れた場所で喜ぶエレメンター達を見て、『魔』が居なくなった跡を見回して、そっと息を吐くのとともに『鑑定レンズ』を下ろす。
「後片付け大変そー」
気が抜けたヴァルがそう呟けば、その中でカナカ達との会話の合間にパッとヴァルの方を見たフワワが長いマントを軽くつまんで揺らした。
その裾部分に控えめにきらきらと新緑の若葉のように煌めく緑色の刺繍を見せて嬉しそうに笑う。
そんなフワワにヴァルは笑い返して軽く手を振ったのだった。
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