十三歩目 いただき
ソノラは、ふと今更気にかかった事を思い出して、カナカを見る。
「そういえば、カナカはあんまり不便そうではなかったですよね。足場の悪い戦闘」
「まー。ソロの時は人が少ない方選んでたら大体そういうとこになるし」
「あぁ、なるほど」
極端に人の居る方を避ける傾向のあるカナカらしい理由にソノラはあっさりと納得する。
それに対してフワワが首を傾げた。
「でも、一緒の時は広い道の方選んでたよね?」
「フワワとソノラが相手するし、あとギフト魔法は加減出来ないから、使うと周りもちょっと燃えて危ないし」
「そ、そうなんだ……」
驚きつつも以前に見たカナカのギフト魔法の威力を思い出したフワワは、確かにそうなるかもしれない、と納得する。
基本的に『魔』を倒すためのエレメントは同じエレメンターや人、自然などに対して害はない。
けれどその強さ ―――― ステイタス値で言うところの攻撃力の部分が高く、更に攻撃特化のアタッカーにギフトスキルが重なって強化されたステイタス値と、神から与えられた強力なギフト魔法が揃うと、『魔』以外に影響がないという根本的な決まりから逸脱する。
「アタッカーならなおの事強そうだね~」
「まぁ、そもそもソロで中級2だし。カナカさん」
「えぇっ!? すげぇっスね!」
ヴァルの言葉にファジがカナカを見て目を輝かせる。
そんなファジの勢いにカナカが嫌そうに口を引き結んでネスタのマントを引っ張って自分とファジの間に立たせた。
それによって強制的にファジと顔を見合わせることになるネスタは、きょとりと目を瞬かせてから、ハッと我に返る。
「……す、すまない。カナカは……その、ひ、人見知り……なんだ」
「おい」
「あぁっ、そうなんスね! 気を付けるっス」
「あ、ありがとう」
「……」
言い訳としては微妙な内容にカナカが文句を言おうとしたもののすかさずファジが納得して、明るい笑顔で引き下がっていくのをなんとも言えない顔で見て、諦めたような安心したような息をそっと零した。
ネスタは肩越しにカナカを振り返って、上手くやれた、と言わんばかりに綺麗な微笑みを浮かべる。
―――― ぐぐぅうううううぅぅっ…………
全員の意識を引き付けるほどの大きな空腹を訴える音を発したアーリャは、こてりとテーブルに頭を突っ伏す。
「おなかすいたぁ…………」
「言わなくてもわかる」
「もう言ったも同然なのよ。それ」
悲しそうなアーリャの声に呆れたように細い目を更に細めてムルムが笑ってアーリャの頭を撫で、メイがおかしそうに笑う。
「そういえばすっかりいい時間を過ぎてますね。アーリャちゃん達のお陰でたくさんいただきましたし、ご一緒してもいいでしょうか?」
食べきれないくらいです、と付け加えて言ったソノラがカナカを見る。
それにカナカは一度口を引き結んだものの、フワワが期待に目をきらきらと輝かせて窺っている視線に、そっと息を吐いて諦めた。
「……好きにすれば」
「ということなので、《唸る風》の皆さんもよろしければどうぞ」
「やーったぁ! さいこー! ソノラちゃん、すきぃ~~」
了承が出てすぐに言いながらアーリャの前に食べ物の包みを差し出したソノラの手を両手で掴んだアーリャが大喜びでその手にある包みに頬ずりした。
「カナカくんとネスタくんが好きそうだなって思ったの買って来たよ」
フワワがそう言ってカナカとネスタの前に色々な包みを置いて行く。
まだ数ヶ月の付き合いだが、それなりに食べ物の好き嫌いがお互いに分かって来たものの少し不安そうなフワワに、カナカは手早く包みを解いて、一口食べる。
「……美味い。ありがと」
「本当に美味しそうだ。ありがとう。フワワ」
「よかった! 他に気になるのあったら言ってね! 私説明できるから!」
「んー」
安心したように笑ったフワワがそう言えば、カナカは食べながらこくこくと頷き返す。
ネスタも「その時はお願いする」と言って嬉しそうに笑い返す。
その様子を見ていたヴァルにベティがそっと近づいて囁く。
「良いパーティーね」
「ほんと。全部お前らとか、こういう感じなら良いのにな」
少し俯いたヴァルにベティが一度目を逸らして、それから意を決したようにもう一度顔をヴァルへと向けた。
「あ、ヴァルさん! ベティさん! どれ食べたいですかっ?」
けれどベティが何かを言う前にたくさんの包みを抱えた溌剌とした笑顔のフワワと問いかけに、少しだけ気落ちしていた雰囲気が解けた。
「―― ありがとう。どれでもいいの?」
「はい!」
意を決した言葉を発する機会はなくしたものの、明るくなる笑顔にベティが笑い返して尋ねればきらきらとした目が笑い返す。
「せっかくだけど俺はギルドで手続きあるから。みんなでわけて」
「包んでもらってますから持っていけますけど、大丈夫ですかっ?」
「ギルド職員はギルドの食堂で無料定食をお腹いっぱいいただけまーす」
じゃあね、と手を振ってさっさと出て行ったヴァルの言葉を反芻して、フワワは「そうなんだ」と目を瞬かせて持っているものが落ちないように気を使って小さく手を振り返した。
それにくすくすと笑いを零したベティが手を差し出す。
「いくつか持つよ。冷めないうちにいただきましょ」
「あっ、ありがとうございます!」
お礼を言うフワワに、オレンジ色の目を嬉しそうに細めたベティがいくつか受け取って、揃ってテーブルの方に向かった。
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