十一歩目 自信
「悲惨」
ネスタから《燃え盛る陽》パーティーの話を聞いてヴァルが纏めた感想に、当の本人は困ったように整った顔に笑みを浮かべるだけだった。
横で聞いていたカナカも顔を思い切りしかめて黙りこくっている。
聞き取った内容を纏めた紙を見直して、ヴァルはそっと息を吐いた。
「そもそもの疑問なんだけど、この扱いで脱退を希望しなかった理由って何?」
「………俺は、その、自覚があるんだが鈍臭くて。……だから、パーティーに入れてくれと言えるような自信が、なくて。俺は辞めてもソロでどうにか出来る実力じゃないからな」
「自信が無さすぎるな」
質問に答えたネスタをなんとも言えない顔で見返すヴァルは、再び零れ落ちそうな息を飲みこんだ。
「東部大都市の担当職員が凄く生真面目な人みたいで、備考欄が丁寧だったんですけど。そこに記載されたネスタさんの報告見る限り、『俺は役に立つから入れろ!』でいけると思いますよ」
「それは………あの人はものすごく親身で、話を聞いて怒ってもくれたから、その、おそらく、気を遣ったものだと」
俯きながら自信の無さが伺える声音で応じるネスタを空色の目でまじまじと見たヴァルは、その横で不機嫌そうな顔で頬杖をついて何もない方を睨みつけているカナカを見る。
それから自分の手元に視線を落としたヴァルはゆっくり息を吸い込む。
「ステイタス値が高いとか、特別なギフトがあるなんかよりも、エレメンターが凄いのは戦うと決めたことだと、俺は思う」
「……ヴァルさん」
少し驚いたようにネスタがヴァルを見返せば、ヴァルはほんの少しだけ自嘲気味な表情を零して、それから真面目な顔で少しだけ逸らしていた視線をネスタに戻す。
「役に立つという自信がなくても、それでも、戦う事を選べるなら、十分すげぇよ」
「………ありがとう」
驚いた表情を緩めて、柔らかな笑みを零したネスタを見て。
その表情に告げた言葉があまり響いていない事を察して。
しょうがないか、という気持ちで紙を鞄にしまい込む。
「そういえば買い出し組遅いな。迷ってる?」
「帰って来た」
ヴァルが話を変えたら即座にカナカがそう返す。
そうして間も開けずに扉が開かれて相変わらずにこにこ笑顔のフワワと凛としたソノラが両手で大切そうに荷物を抱えて入って来た。
「ただいま!」
「ただいま戻りました。本当にお安く買えましたよ」
「おかえり」
「ふぅん」
扉が開くか開かないかで立ち上がったネスタが買ってきてくれたお礼を述べながらソノラの持っている物を受け取る。
フワワが「これがおいしそうだったの」というのを聞きながら物を見る為にその荷物を受け取る。
良いパーティーだ、と小さく零したヴァルは、四人が部屋に入って来ても閉まらない扉からぞろぞろと入ってくる面子に微笑ましい気持ちを霧散させる。
「待って。後ろに不審人物いっぱいついてきてるかも」
「え?」
ヴァルの言葉に律儀に振り返ったフワワは、その後ろに居るアーリャと目を合わせ、目を合わせたアーリャも惚けるように何も居ない後ろを振り返る。
「アーリャちゃんだよ?」
「誰もいないぜ~?」
アーリャが惚けるように言えば一緒に居た青年がチラリと背後を振り返って、呆れたような表情でヴァルを見返して肩を竦める。
「さてはお前、寝惚けてるな?」
「まだ昼過ぎだぜ。ヴァル」
「眠気覚ましにお空まで高い高いしてあげようか? ヴァっくん」
「も~。恥ずかしいんだから」
「すっげー惚け惚けっスね。ヴァルくん」
「ボケてんのはおめーらだろうがっ」
口々にヴァルに対して呆れる面々に対してヴァルが悪態を吐く。
それを肩越しに見たカナカがフワワに目を向ける。
「誰?」
「アーリャちゃんのパーティーの人達だよ。お買い物の途中で会ったの。アーリャちゃん達、街の人にすっごく大人気だったよ」
「すごかったですよね。行く先々でアーリャさん達と仲良しならって更にお安くしていただいてしまって……」
フワワに続いて感心しきった様子でそう言ったソノラは最後に心配そうな視線でヴァルを見た。
その視線に気が付いたヴァルは、アーリャ達に悪態を吐くのをやめて緩やかに笑う。
「強制したわけでもないだろうし、大丈夫」
その返答にホッと安心したようにソノラは笑った。
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5/3(日)と5/4(月) 21:30 に続きを更新する予定となっております。
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