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エデンズエレメンター  作者: 雪梅るり
二章 山麓の街フラトゥス

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十歩目 お話



 「あとは、ネスタさんの前パーティー《燃え盛る陽》に関する情報提供ですね? 俺は他に担当もないからいつでもお伺いできますけど」

 「案内人探しは?」

 「そっちは山隠れしてる『魔』の討伐結果次第かな。あぁ、でも急ぎの依頼があるっていうなら優先しますけど」

 「じゃあ、いい」


 カナカの即答に「あざーす」と軽い謝礼を述べたヴァルに、ソノラがテーブルの上に残された地図と提携している店の一覧の書かれた紙を取って、カナカを見た。


 「ではその間に私とフワワで軽く食事を買ってきます。急ぎで必要なものがあるなら買っておきますよ」

 「必要な生活必需品は予備も常備してるし、足りなければ俺に言って。もし買っても言ってくれたら代金支払いするんで」

 「至れり尽くせりですね」

 「こんな不便な街からしたらエレメンターが立ち寄ってくれる方が大助かりで安心すんだから、至れり尽くせりもするだろ~。本音を言えば常駐してほしいんだよ。まぁ、どこでもそうだけどさ」

 エレメンターに都合が良いほどの気遣いにソノラが微妙な表情で言えば、ヴァルが肩を竦めてあっけらかんと返した。


 『魔』を討伐できるのはエレメンターだけだが、辺境や辺鄙な場所にはエレメンターが中々立ち寄らない事も現実だ。

 依頼がなければ来ない場合もあり、ギルドがない場所はその依頼を出すのにも時間をかけてしまう。

 フラトゥスにはギルドがあるものの、すぐ近くに街や村はなく、山と森に囲まれて移動に酷く時間がかかってしまう。


 「大都市は便利だし、長期滞在するパーティーが複数いるけど、ここはそうもいかない。特に北部との間の山は迷いやすいし足場も悪くて戦い難い。ちょっと滞在したくらいじゃここの山は慣れない。そんな条件も良くない街を拠点にするパーティーなんて………………いや、まぁ、アーリャんとこがあったな。そういや」


 途中まで暗い表情になっていたヴァルがふと思い出した人物に、飄々とする。

 それに辺境の村出身のフワワは特に覚えのある事もあり、真剣に聞いていたものの最後のヴァルのあっけらかんとした呟きにカクリとわずかに傾いて苦笑を零した。


 「ま、今は安心ってこった。それでもアーリャ達でも時間食ってる『魔』が居て、すーぐ隠れて見つけにくいから一応山は危ないから民間人と山慣れしてない奴は基本立ち寄るなってなってる」

 「海路と同じ状態ですね」

 「うーん、一応あっちほどの強さではないから。ただ、逃げ足というか隠れるのが得意らしくて、困ってるのはそこかなぁ。山だし広いし、探すのが大変なんだ。アーリャが見つけたら『手間かけさせやがって~』とか恨み節吐くな、絶対」

 ヴァルが言うたとえのアーリャの言葉に覚えがあるフワワは小さく笑った。

 カナカも小さく「言いそう」と零した。


 「もしわかんなくても誰かに『この店行きたいんですけど』って適当に店名指して言えば案内してくれるよ」

 「わかりました」

 「ただし! 食事買いたいんですとか店指定しなかったら『あっちの店が安い』とか『こっちの店に良いのが』とかって捕まるから、気を付けて。みんなエレメンターには親切にしたいだけなんだけどたま~にお節介過ぎる時あるんだよなぁ」


 腕を組んでどことなく呆れたような困ったような声で零すヴァルに、ソノラは途中で「エレメンターさん」と明るい笑顔で声をかけてきた住民たちを思いだす。

 悪意や敵意などは一切なかったためソノラもさほど気にしていなかったが、ヴァルの言葉が本当なら確かに急いでいる時などは困りそうだと判断して、一つ頷いた。

 「そうします。………おすすめもまとめてあってわかりやすいですね」

 「美味しい飯は大事だろ? 正直この街は不便だけどどの店もご飯はほんっと美味いぜ~」

 「ありがとうございます」

 ソノラが軽く頭を下げればヴァルが笑って手を軽く振る。


 「それじゃあ、買ってきますね」

 「行ってきまーす」

 一度フワワに目を向けたソノラがカナカとネスタに向けてそう言って動き出す。

 フワワは明るい笑顔で手を振って、先を行くソノラに「美味しいご飯、楽しみだね」と笑いかける。

 そんな二人にネスタが「行ってらっしゃい」と声をかけ、カナカは軽く視線を向けて小さく手を振り返していた。


 本当に小さな手の動きにヴァルは小さく笑って、それから切り替えるように咳払いをした。

 そうしてネスタを見る。

 「お話をお伺いします」

 「……あぁ。ありがとう」

 テーブルを示しながら言ったヴァルに数瞬遅れて柔らかく目を細めて微笑んだネスタが頷き返した。



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