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エデンズエレメンター  作者: 雪梅るり
二章 山麓の街フラトゥス

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七歩目 換金



 「あれ、アーリャ? 討伐終わったの?」


 ギルドにある休憩用のテーブルを拭いていたギルド職員のシャリアがその手を止めて声をかける。

 顎の高さで切り揃えられた青い髪に青紫色の少し釣り気味の目元をしたシャリアは、受付の方を指差した。

 「今、換金する?」

 「わはー。ごめーん。ムルム達と別行動中だから合流してから戻る~」

 「いーよ。じゃ、後でね」

 シャリアの言葉に手を合わせてそう言ったアーリャにシャリアも軽く返して、それからアーリャの後ろに居るフワワ達を見て、首を傾げた。


 「新しいパーティーさんね」

 「そー。討伐中に遭遇して、案内してるんだ」

 「お。なら、受付するよー」

 「シャリアさん、忙しいじゃん。どうせ暇なヴァルでいいぜー」

 「人を勝手に暇扱いしてんじゃねーよ!!」


 申し出てくれたシャリアに申し訳なさそうに手を振りながら断ったアーリャは、受付近くに立っている男性のギルド職員を指差してそう言った。

 その言葉に資料を運んでいたらしい男性 ――― ヴァルが、怒ったような声を上げながら資料をテーブルに置いて手早く受付の席に置いてある『休止中』と書かれた札をひっくり返して『受付中』に変えた。


 「受け付けるじゃーん」

 「今荷物運び終えて暇になったんでしょ。ヴァルくん」

 「アーリャはさっさとムルム達と合流して来いよ!」

 アーリャとシャリアの言葉と、周囲のギルド職員達からの生温かい目を受けながら乱雑に椅子に座ったヴァルがそう声を張った。

 「ほいほい。んじゃあ、うちはこれで戻るなぁ。あのヴァルはうるさいけど仕事はちゃんとするから安心していーぜ」

 言いながら踵を返しながらアーリャがそう言う。

 それに慌ててフワワが声をかけた。


 「あ。ありがとうございます! アーリャちゃん」

 「本当にありがとうございます。とても助かりました」

 「うちも楽しかったよー。またねぇ」

 フワワとソノラの言葉に朗らかに笑って両手を小さく振ってみせたアーリャは、軽い足取りでギルドの外に出て行く。



 「おーい。とりあえずリーダー、【神の雫】見せてー」


 ヴァルの呼び声にカナカとネスタが先にそちらへと向かい、ソノラは近くに居たシャリアに軽く頭を下げた。

 それにシャリアがにこりと笑って会釈するのを見たフワワはカナカを追おうとした足を止めて、ソノラの真似をするように軽く頭を下げる。

 行きましょうか、とソノラに促されたフワワが頷いて、揃ってカナカとネスタの向かったヴァルの待つ受付へと向かう。

 その背中を見送って「いい感じそう」とシャリアが独り言ちてテーブル拭きを再開した。


 受付に着いて、一席しかない場所にカナカが座れば一瞬だけヴァルの明るい空のような色をした目がネスタとソノラを順に見た。

 けれどそのどちらも気にした様子がないことが分かったヴァルはカナカを見る。


 「では、リーダーさんはお名前とジョブ、《称号》の提示お願いしまーす」

 「……」

 どことなくやる気に欠けたヴァルの言葉遣いに金色の目を少しだけ細めたカナカは、けれど何も言わずに【神の雫】を取り出した。

 そうして見慣れた半透明な枠の中に記載された文字を追って、手元の本に記入していたヴァルはほんのわずかに動きを止めて、けれど何も言わず、すぐにカナカの《称号》を記入した。

 そうして、その本を持って一度席を外したヴァルは一番奥の、受付からは手元も見えない場所に棚から取り出した別の本を取りだした。


 それを見ながら、フワワがソノラに囁く。

 「ああやって確認するの大変そうだよね」

 「間違いがあるといけませんからね。本当に大変だと思います」

 ヴァルがしているのは様々な街に点在するギルド間で共有しているパーティーの登録情報からカナカ達のパーティーの実在を確認しているのだ。


 共有した情報と嘘偽ることの出来ない【神の雫】による提示での本人確認になる。

 膨大とも言えるエレメンターのパーティー情報から確認をするのは非常に大変であり、受付担当が新人だった場合、ここで待たされる事もある。

 けれどヴァルはすぐに見つけたのかあっさりと棚に本を直して、戻ってくる途中で記入した本を置いて席に座った。


 「登録情報一致しました。下級2パーティーのカナカさん達ですね。お急ぎの用件はありますか?」

 「魔石の換金。パーティーメンバーが以前所属したパーティーでの問題に関しての追加情報。一番は北部大都市までの案内」

 ちらりとネスタの方を見たカナカを追ってネスタを見たヴァルはその整った顔立ちにくわっと目を見開き、それから渋い顔をして、何事もなかったような顔に戻って武器をサッと確認する。


 「ナイトの方だと《燃え盛る陽》パーティーですね。魔石の換金は早急対応可能です。案内依頼に関しては適任達が山隠れ中の『魔』の対応で出払っているので戻り次第、そちらの希望人物像があったらそれと照らし合わせますので、確認取りいいですか? あ、あと情報提供に関してもおそらく時間かかりますけど、本日の宿とか取りました?」

 「まだ」

 「了解です。うちの町の宿、どこも宿屋っぽくないんでとりあえずギルド推奨をいくつか案内する方式取ってますが換金対応優先して、宿のご提案兼案内。情報提供と道案内人決めはその後でいいでしょーか?」

 とんとん拍子に纏めたヴァルが確認を取るのに、カナカは少し驚いた顔をする。

 「………それでいーや」


 少し考えてカナカがそう言って、自らの腰に付けたポーチを取る。

 それに、ヴァルが受け取り用の籠を足元から持ち上げてテーブルに置いた。


 その中にカナカが持っていた大きめの魔石をいくつか落とし込み、ポーチを戻す横で「失礼します」と準備をしていたソノラが鞄が取り出していた中くらいの魔石を数個ほど丁寧に入れていく。

 そうしてソノラが持っている分を入れ終えると、待っていたフワワが中くらいをいくつかと小さめの魔石をほろほろと落としていく。


 エレメンターの生活に直結する『魔』を討伐して得られる収入源である魔石は資金そのものであるため、ネスタはこの魔石を回収する役割からはずれている。

 当人の希望もあったが、カナカやソノラもどちらかといえばネスタ自身の希望と同じ意見を持っており、フワワは「いっぱい入るから任せて!」とパーティーの役に立てる事を喜んで引き受けていた。




御覧くださりありがとうございます。

次話の更新は4/18(土)の予定です。

お気に召したらよろしくお願いします。

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