六歩目 本体
街と言っても、フラトゥスは大都市と呼ばれるウェルテクスやその道中に選んできた街とは違い、のどかな辺境の風情がある。
遠くから見た街の中心部には比較的大きな建物が多く集まっているように見え、その一番中心に近い場所に見慣れた、どの街でも同じ造りをしているギルドの建物もあった。
それ以外はフワワの育った辺境よりは栄えている村、と言った雰囲気をしている。
「そういえば、アーリャちゃんのパーティーの人は大丈夫ですか?」
どことなく懐かしさを感じる、故郷に似た雰囲気を眺めてから、ふとフワワが思い出したように尋ねる。
それにアーリャは頷いた。
「うん。大丈夫。うちが本体倒したからね」
「あぁ。分身作るやつだったのか」
「あの猪みたいなのがいくつも居たら大変でしょうね」
異常な大きさにまで大きくなる本体と違い、分身体の場合は今回の『魔』の場合はフワワ達が見る一般的な猪と同じ大きさをとっているだろうことは予測がついた。
それでもそれなりの量の猪が纏まって、しかも攻撃的だと考えるとフワワは小さく「ひえぇ」と悲鳴をあげた。
「そうそう。みんなに分身を対応してもらっている間にうちが本体探してたんだー。でも、まさかあんな跳躍してまで逃げると思わなかったぜ~。追いかけるのが一番面倒くさいよなぁ」
少しうんざりとしたようにアーリャがそう言えば、ソノラもネスタも深く頷く。
少し遅れてこくこくと何度も頷いたフワワは、ふと不思議そうに隣のカナカを見る。
「『魔』が逃げる時もあるの?」
「割と強いのは。こっちの戦い方に対応してきたり、分が悪いと逃げたりは中級パーティー対応の『魔』でもたまに居る」
「へぇ……」
今までフワワが対応した『魔』はどれもただひたすらに攻撃をしてくるようなものだった。
それらはすべて下級が対応できる『魔』であり、フワワだと討伐できないレベルの『魔』はカナカ達が対応していた。
「フワワが見た中だと、ウェルテクスでの花型の『魔』は割と思考力ありましたね。エレメンターを近づけないように葉とかを使って広く攻撃していましたね」
「あぁ。俺がカナカの要望通り遠ざけるために殴った時も、防御のような動きが見えたな。一瞬だったけれど」
「あと、その前のでかいネズミの『魔』も分身で周囲を探って、攻撃して、本体は隠れていた。あれも一応中級レベルだった」
ソノラとネスタ、そしてカナカの説明に思い返したフワワは「なるほど」と納得した。
縦横無尽に動いていた蔓のように振るわれていた葉が明確に攻撃に向かっているカナカを狙うように変わっていた。
ソノラの補助を受けながら、ともに葉を散らすために頑張っていたフワワにもそれはなんとなく感じている。
ネスタの言っていた事は当人の申告通り一瞬だったためにフワワには分からないが、ネスタが言うのならばそうなのだろうとフワワは思う。
ウェルテクスからの付き合いで長いとは言えない間柄でも伝わるほど、フワワ同様にネスタは嘘がつけない。
そしてカナカが言ったネズミ型はフワワとカナカだけの時にカナカが楽々討伐した『魔』のことだ。
あまりにもカナカがあっさりと倒していたためフワワに実感はないが、報告した際のウェルテクスのギルド職員の反応からしてもそのまま放置していたら危なかったという事は分かっている。
「そっか……。あ、じゃあ、分身を作る『魔』は中級くらいになるの?」
「割と中級に多いだけで下級でもいますよ」
「下級の場合は本体も分身もまとまってくるから楽々だよねー」
アーリャの言葉にカナカも静かに頷く。
フワワとしては一度にたくさんの『魔』が居る状況にどうすればよくわからなくなってしまうが、カナカやアーリャとしては探さずに討伐が完了できるので簡単という認識だ。
すごいなぁ、とフワワは目を輝かせる。
「んで、ギルドについたぜ~」
そう言ってアーリャが示す建物は、よく見るギルドの建物だった。
それにフワワは目を見開いて、通って来た道とギルドを交互に見る。
「い、いつの間に!?」
「意外と近かったんですね」
「というか、人の家の庭を平気で通ってた気が」
「うちが居る時ならへいき、へいき~。居ない時はやめた方がいいな」
ネスタが控えめにそう言えばアーリャが笑って流し、目の前の扉を開く。
御覧くださりありがとうございます。
次話の更新は4/11(土)になります。
よろしければお付き合いください。




