83.凸凹セットができあがる。
コンビではなく、あくまでもセットである。
「取り合えずそのでかい図体どうにかならないの?」
高飛車に、無茶振りをしてみる。
守護やるレベルなんだから人化の化身くらいできるんでしょ?という心づもりはあるけども。
【う、大きさは、どうにも。
化身は、今はちょっと問題があって、ちょっと気持ち悪いかもしれない、けど】
なんでだか判らないけど、しょげてる子供みたいな奴ねえ、今の馬鹿鳥。
「でかくなければ不問とするわ、グロは見慣れてるからそっち方向は別に平気」
敢えて言わないけど、ホラー系も前回のヘッセンでだいぶ見慣れてしまった気はする。
(そやつ、サンファンの守護聖獣であったもののようだが、妙に若い個体だな?
代替わりするのは麒麟だけのはずだが)
おおっと、ランディ様から謎情報が。
ずいぶん羽根がぼさぼさだけど、若いんだコレ。
(黒鶴族は長ずるにつれて、羽根の色が濃く、美しくなるのだよ、聖獣系でも希少種だがね)
ほほー、黒鶴族って種族なんだ。
で、その種族自体はこいつだけじゃないのね、把握したありがとう!
「大きさはともかく、最初に会った時より、えらく色がハゲてねえかお前?」
カルセスト君が地味に酷いことを言い出した。
ってなに?最初の頃はもっと黒かったの?
【それも、説明するね】
子供のような言葉と共に、ハイウィンさんが人化するときと似たような煙が立ち、大きな鳥は、カルセスト君そっくりの顔をした、黒っぽさのある灰色の髪に赤い目の……青年じゃなく、少年になった。
麒麟の子のお兄ちゃんかな、くらいのサイズ加減だ。
「あれ、思ったより普通になったな?もっと変になるかと思ってた」
見た目に似合った口調でそんなことを言い出す馬鹿鳥。
あ、神力の楔が見える。
ああそりゃそうか、サンファン国の守護聖獣だったんだから、当然連座で神罰を受けているのよね。
ただ、妙にその拘束が、弱い?
《恐らくですが、本国から余程遠い場所にいたのではないでしょうか。
ですが、それ以外にも何か外部の力が作用してますね?》
なんだろうね、こいつ自身がどうも気付いてないっぽいんだけど。
「いやいや、充分変だろ、前の化身の時は俺と身長も変わらなかったじゃんよ」
カルセスト君のツッコミ。成程、気安い友人同士感がすごいな。
今でも、そうなのか。
「どういう理由か判らないんだけど、暫く前に俺だけ時間が逆行する呪いみたいなの、受けちゃってねえ。
これは神罰のちょい前の話ではあるんだけど。
神罰で逆に進行が止まってくれたみたいなとこはあるんだ。
……四聖仲間にはナメられそうだから、幻影使って隠してたけど」
ふーん?と眺めてみたけど、いやこれ呪いじゃないぞ?
裁定者的にアウトな感じではあるんだけど、効果そのものはプラス補正系、と言えなくはない。
「ん-、それ若返りの儀式魔法らしいわよ。まあ生贄使う邪法っぽいけど。
ただ、なんであんたに掛かってるかが謎ね?
本来のターゲットが死んだか何かで空欄になって、それをひっかぶっちゃってるみたいなんだけど」
見えたものを、そのまま伝える。
解けなくはないけど、まあこいつだし、神罰と競合して効果停止した状態だから、今はまだほっといていいか。
「儀式魔法!それで精神面までなんか子供っぽくなっちゃってんのか、今の俺。
本体の時よりちょっと今のほうがマシっぽいけど。
いや、ほんとにさっきのもごめん、本体だともう感情の制御ができなくてさ」
さっき自分の本体が涙で作った水たまりを避けながら、さらっと自身に重大な問題があることを話す鳥小僧。
まあ確かに、さっきのボロ泣きしてたでかい鳥よりは理性的ね。
「そういや、国元の他の連中とも会ってるのか」
カルセスト君の疑問。
「虎は俺と一緒で外にいたから、割と会う。
蛇は本国にいて、こないだ幻影でだけ会った。
狼は……麒麟が死んでから、ずっと姿が見えない。存在はしてるみたいなんだけど」
素直にすらすら答える鳥小僧。
サンファン国、守護聖獣も半分以上欠けてる状態なのか。そりゃ厳しいな。
「麒麟の代替わりのシステムが他国では判らないのだが、話せる情報があるかね?」
いつの間にか近付いてきていたランディ様が、唐突に話に割り込んでくる。
「ごめんそれは話せない。
今の俺は守護聖獣として不適格だから、余計に。国の根幹にかかわることは喋れないんだ」
ランディ様の存在には気付いていたようで、特に動揺することなく答える鳥小僧。
「にしても、こないだカル君の身体借りた時にも思ったけど、こんなところで真龍の人にまで遭うなんて思わなかった」
まあ普通は真龍が人社会をほっつき歩いてるとか、思わないわね、あたしもそうだったし。
「そりゃあ我らは大っぴらに真龍でござい、と歩き回っているわけではないからな。
お前にだって、覚えはあろう?」
鷹揚な様子で答えるランディ様。頷く鳥小僧。
「それにしても、これなら丁度いいじゃないか。
後ひとりくらい巻き込んで、家族旅行の体で行けないかね」
突然妙な事を言い出すランディ様。は?家族旅行?
ランディ様を見る。カルセスト君を見る。鳥小僧を見る。
まあ確かにカル君と鳥の化身はサイズ以外は似ていて、兄弟か親子か、といった風情に見えないことは、ない。
というか、前に契約を読み解いたときの顔を借りる、って姿を写し取ってたのね。
色味が違うから、恐らく印象はそれなりに違ったでしょうけど。
「お姉さん役ならともかくお母さんとか言ったらぶっ飛ばすわよ?」
あたしの出した結論はこうです。
ランディ様はハハハ、とわざとらしく笑ったけど、どっちを想定していたのやら。
「うわ、おっかねえ。里のかーちゃんでもそんなにクチバシは出ない」
鳥、親いるのか。そういや種族っていったもんな、居ない訳ではないんだろう。
でも鳥だと手が出る、じゃなくクチバシなのね。
でも鶴のクチバシって結構な威力じゃなかったっけ?
「かーちゃん、いるのか」
カル君が興味津々の顔になった。話が逸れるぞー。
「いや、もういねーな。
黒鶴の故地は今はライゼルの領土だ、併合の頃にかーちゃんを含め、皆いなくなっちまったらしい。
俺はそれより大分前からサンファンで仕事してたから、詳しくは知らないけどな」
いなくなったのか。
ライゼル、ほんとに毎度名が出てくるたびに碌な事になってないんだけど、どんだけ?
「って家族云々は置いといて、何処に行く計画なんだ?」
あ、そういえばカル君には直接行く話は言ってないな、ずっとそれどころじゃなかったものね。
「アスガイア。例の麒麟殺しの犯人がそこにいるんで引きずり出してこないといけないって話」
情報は渡してあると前に鳥が言ってたから、そのこと自体は彼も知っているはずだけど、全面的に端的に説明する。
「いやそれは知ってるけど、なんで、よりにもよって嬢ちゃんとランディ師が行く体になってんだ?目立つってレベルじゃねえぞそれ」
まあその疑問はもっともですね。あたしもそう思わないではない。
「だってアスガイアよ?龍の人はまだ入っちゃだめだっていうし。
それにあそこの国神が噛んでるっぽいから、普通の人族には荷が重いのよ、明らかに」
あたしにだって軽くはないけど、今回は裁定者としての仕事っぽいから、多分、おそらく、なんとかなるのだ。
神々は割とスパルタだけど、できない目標は定めない、そんなイメージができている。
「……ああ、そうか。もはや龍ではない、今の俺なら、適格ではあるんだな。
まだちょっとふらつくからすぐには無理だが」
成程納得した、と、あっさりその状態を受け入れているカルセスト君。
本当に大丈夫なのかなあ。あと、ふらつき加減は、ちょっとじゃない。
いや、さっきちょっとふらついた後は、意外と安定しているな?
「うぇ、ほんとに、ごめん……でもそうか、この姿なら俺でも行けるのか。
判った、一緒に行く」
鳥のほうは一瞬また泣きそうな顔になったけど、同行自体は即決だ。
でもこれ、正直に言って、愉快な珍道中にしかならない面子な気がして、仕方がないんだけど!
後ひとり!あとひとり、もうちょっと常識のありそうな方!おられませんか!!
やっと最低編成の骨子が出来上がった感ではあるんですが。
なんだこの呉越同舟。




