表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/713

80.龍としての鱗。

逆鱗とはまた違うのですが。

 でもそういえば、改めて思い出すと、イードさん達とコンバートの話をしたのって、今の名前を決めたあとだから、名前だけ伝わってないのは違和感あるわね。


 そのあとはメリエン様の神力で、覗き見ていた奴がいたとしても弾き飛ばされていそうではあるんだけど。


「うーん、ここから漏れた線はやはりないと思います。

 ライゼル側からの情報じゃないですかね。その件は召喚事故を解析できるなら、あいつらは知ってるはずだから」

 そうだ、シエラに辿り着いたんだから、あいつらはコンバートの件は知ってるんだった。


 奴らからの情報であるなら、そっちのほうが自然だ。まあ結果としてはあんまりよくないか?

 とはいっても、サンファンの件まで、いや、今だって直接的なアプローチはしてきていないからなあ、あいつら。


 そして、一番大事なメリエン様の件は、恐らくまだ誰にも漏れてない。

 ならば、あたしの方はどうにかなるわ。


「あー、そうか……ひょっとして、イードが〈コンバート〉の仕様の件を問い合わせてた奴」

 カルセスト王子にヒントを与えすぎたわね、正解に辿り着きかけている。

 いや、今の彼はそういう風に警戒する必要はないんだっけ。


「それはさておき、治癒師の件はどっちみちヘッセン辺りから漏れたと思いますよ。

 あそこもあたしたちが行ったときには結構グダグダになってましたから」

 今はそこまで酷くはないはずだけど、影響はまだ残ってる。

 できるだけ早く聖女様との連絡手段だけでもなんとかしないとなあ。


「それでも、あの最悪の事態にはならなかったはずだろう」

 マグナスレイン様が厳粛な面持ちでそう告げる。そうね、そこは否定できない。

 イードさんだけならともかく、あたしがいたら、多分城塞から村々のほうにスタンピードが溢れる前に、半数は片付けられていたろうし……いや、寝入ってたら判んないな?


「でもあれ、あたしが居る場合の想定、一切してませんよね……起きてたら鎮圧、寝入ってたらあたしもちょっと危ないかな、って感じでしょう?」

 正直解せないのはそこだけど……あ、そうか、そこもカルセスト王子経由でばれてたのか。

 ごめん、これは擁護できないわ。


 あたしの表情を見て、カルセスト王子がため息をつき、マグナスレイン様は静かに頷いた。


「一番まずかったのが、そこだ。

 報告書の精査の結果、スタンピード時に、ほぼリアルタイムに居場所を知られていた、という結論に至った」

 マグナスレイン様があたしの口に出さなかった懸念を肯定する。


 つまり、黒鳥にしてやられたってわけだ。奴のほうは、リアルタイムで情報を得ている。カルセスト王子に流れてくるほうにはタイムラグがある。完全に手玉に取られた格好ね。


「判ってる。全面的に俺の落ち度だ。処罰は、何なりと受け入れる。この首でもよければ、差し出すさ」

 噛みしめるように、最初の一言を、そして後の言葉は流れるように。

 空どころか、命さえ。捨てるというのか。


 いや、確かにたくさんの人が、幻獣が、命を落としたのだけれど。


「小僧の首なんぞで何が贖えると?

 陛下の沙汰を申しつける。鱗一枚、そして十年の王族籍停止及び処払い、その間の入国禁止だ」

 マグナスレイン様が厳粛な声で、既に出されていた判決を告げる。鱗?


「一枚?十年?随分な温情だな、普通なら全剥ぎで永久追放じゃねえの」

 カルセスト王子のほうは、呆れたようにも見える顔つき。


「今回の件以外の功績が大きい分の相殺だ。それに、サクシュカリアの報告通りなら、そなた、どのみちもう飛べまい?」

 う、しまった、そうだよね、サクシュカさん巻き込んだら、当然報告が上に行くよね……

 そして、サクシュカさんは、諦めたのか。


 そう思ったところで、自分がまだ未練たらたら、諦めていないのに気が付くなど。

 いやまあこれは性分だからね、しょうがないね。


「嬢ちゃんはまだなんか考えてるようだけど、サク姉は諦めたっぽいな?

 いや、俺もなんでそうなってるのか、ちゃんと聞かされてないんだけど」

 あ、そうだ。目の前でああだこうだ言ってたけど、そういえば理由を明確に伝えてないわ。


「理由は置いといて、あるはずのない闇属性が生えてる。それが消えない限り化身は無理」

 まあ今更勿体付けたり、遠回しな言い方をしていい状況でもないし、そんな相手でもないのですっぱり簡潔に状況を告げる。


「闇、だと?カーラ殿は属性も消せるのかね?」

 無言で固まっているカルセスト王子ではなく、マグナスレイン様が懐疑的な口調であたしに質問する。


「現状無理ですとしか言えないですけど、今回のコレは自然発生ではありえないので、原因を排除できれば、あるいは?というところです。

 まあ正直解決の糸口があの馬鹿鳥くらいしか思いつかないので今は保留ですね……」

 うっかりさっきから馬鹿鳥呼ばわりしてるけど、黒鳥の事、マグナスレイン様がどこまで把握してるか確認してない、通じてなかったらどうしよう。


「馬鹿……契約者、黒鳥の事、かね?

 こいつの報告書にはあまり詳細が書かれていないようだが、貴方とも接触があったのか」

 うん?一方の当事者なのに詳細が少ない?

 それちょっと報告書確認していいですかね、いや流石に内政の機密文書扱いだ、無理ね!


「本体ではないですが、一通り基本情報は押さえたつもりでいたのですけど……」

 基本しか、把握できていない。そこが断言できてしまう。悔しい。


 どういう表情になってしまっていたものか、マグナスレイン様がため息と共に、手にしていた書類をあたしに突き出してきた。読んでいいの?


「不審点がありそうだ。第三者の目で確認してくれまいか」

 なるほど、そういう理由付け。


 許可が出たので手早く読む。

 読むというか字面を覚えてそこから再解釈していく。


 あー、これ、だめだ。契約はきっちり消したはずなのに、なんらかの影響力が、まだ残ってる!

 恐らくは、あの闇属性のせい、もしくは、闇属性が、影響力の残滓。

 どっちだろ、どっちとも、つかないな。


 ぎり、と無意識に唇を噛んでしまったようで、微かに血の味。

 まあいい、外からは見えないわ。


「やっぱこれ、あの馬鹿鳥討滅しないとだめみたいです。影響が残ってる。

 恐らく無意識で、奴の情報を回避してる文面ですね」

 そこらへんだけ、文字が乱れているから、そう判断する。

 でもそれなら、あたしの〈消去〉で消せるはずなのだけど……


「どうせ国を出されるのだ、不始末は自分で付けるべきであろうかね。相手が相性が悪い故、手助けの有無は不問とする」

 マグナスレイン様が即決。他国の守護聖獣倒して来いって命令なんですがそれ大丈夫か。


 いや、あいつもう守護聖獣じゃなくなってるぽいから、力量差問題と相性問題以外は大丈夫、麒麟の子に聞かせるのだけ、禁止だ。


「……化身なしでアレを?

 まあいいか、死刑宣告みたいなもんだけど、それしかないならそうするさ。で、鱗だったな」

 諦めの境地、といった不穏な顔でカルセスト王子がそう答えて、シャツを脱ぐ。

 左肩の少し下あたりに、数枚の金色の鱗が見える。大きなのが一枚、それを囲むように、小さいのが四枚。


 そして、カルセスト王子は真っすぐその一番大きな鱗に指をかけた。


「待て、カルセスト!それではない!!」

 マグナスレイン様が慌てて制止しようと手を伸ばす間もなく。


 ばきり。


 思いのほか重い音で、大きな鱗が割れる。


「あっガッ……ッ!!!」

 声として聞きとれているかどうかも判らない、多分絶叫の直後、その場にくずおれるカルセスト王子。

 いや、王族籍停止食らったんだから、えーと?


「馬鹿者、誰が一の鱗だと言った!!

 自ら、戻る機会を永久に失えなどとは命じておらぬ!カーラ殿、治癒を!命に係わる!」

 馬鹿なことに現実逃避しかけていたら、マグナスレイン様が叫ぶ。


 慌てて直感に従って上位治癒魔法陣で、全力の賦活をかける。鱗一枚のダメージが、本気の〈生命賦活〉じゃないと、足りない?!


 大きな鱗は縦真半分にひび割れて、そこから噴き出していた血が、あたしの魔法で治まっていく。

 でも二つに割れてしまった鱗は、戻らない。他の四枚は、今は血も弾いて、綺麗なままだ。


 カルセスト王子は気を失ったままだ。余程衝撃がきついらしい。

 いやまて、コレ何かがおかしいぞ?


 属性が、減ってる?サクシュカさんと見た時は風大水中光ギリ中に、闇極小、だったのに、今は風中水中光小、そして闇小、だ。

 ランクダウン、致命的な、減少。


 そして光と闇が相殺状態になった。

 いや、元々彼は光は龍の姿の時のブレスしか使えないから、人の身のままなら、支障はない、のだろうけど。


「……我らの一の鱗、生まれて最初に人の身に生える鱗だけは、割ってはならんのだ。

 失えば属性を減少させ、結果、永久に化身することが出来なく、なる」

 気を失ったカルセスト王子を抱きしめて、マグナスレイン様が震える声で告げる。


 俯いていて、その表情は見えないけれど、恐らく、泣きそうになっている。

 龍としての誇りを持って生きている彼らに、それは、死より辛い事なのだと、その声が、態度が、はっきりとあたしに告げているのだもの。



 そして、事此処に及んで、思い至る。

 ああ、彼は最初から、空を、自分を、捨てるつもりだったのか。

72くらいから2回か3回書き直したのに、結局こうなってしまった……

なお闇は増えたんじゃなくて、光が減った分相対的に増えて見えるだけですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ