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383.魔物と非常事態宣言。

魔物登場回ということで、グロ描写とちょっとアレでナニな描写がございます。

 そうやって半時間ばかりかけて肖像画をとっかえひっかえ眺めたり術式の話をしたりしていたわけだけれど。

 どかん!!と、大きな音が外から響いてくる。あー、派手に吹き飛ばしたな……


〈皆の者、傾聴せよ!王宮内中央宮殿地下より大型の魔物が発生!王都の民、そして神殿構成員各位、非常事態宣言レベル四を国神ミオラ・ルディアの名に於いて発令。王権の一時停止、軍の指揮権は神殿預かり。軍は一般人民の避難を優先し、近衛部隊及び魔法師部隊は神殿派遣者による魔物の討伐に協力せよ、全ては世界の安定と国家国民の安寧の為に!〉

 高らかに、些か芝居がかった調子で非常事態宣言を行うミオラ・ルディア女神の声。恐らく王都全域に響き渡ったものだろう。宣言の終了と同時に、警戒の為の鐘が、恐らく四方八方で打ち鳴らされ始めている。


「うわぁ、私の代では軍掌握(第四)レベルの宣言は起こってほしくなかったのですが……ランディ師、裁定者様、ご協力を仰げますでしょうか」

 神殿長はうんざり顔でそう述べる。まあうんざり顔ってことは、大分前から予測していた、という事でもある。成程、神殿としては後始末の煩雑さよりも、大義名分を掲げて合法的に宮殿に突撃を掛けられる理由の方が必要だったって事ね。


「超級召喚師としての活動に留まるが」

「可能な範囲で協力はしますが、あたしはあたしの責務がありますので」

 あたしとランディさんの回答は揃って限定的だ。神殿に縛られるのは、お互いちょっと困るんですよね。真龍として神殿の下につく形になるのは、彼らの立場上大変困るし、あたしも裁定者として動いている時限定ではあるけど、神殿の下流には、実は立てないのよねえ。

 仮にも、ええ、本当に仮、なんだけど、裁定者って神様の直属、だったりするものですから。


《……裁定者として神殿に命じる事もできなくはないですが、余りしたくないですよねえ》

 それは最終手段よ?余計な実績は残したくないからね。


〈そこはわたくしからもお願いします、お二方〉

 かーッ、女神様に言われちゃしょうがないわねー!

 ……という事にしますハイ。他国での活動には、お題目も大切なんですよ……好き放題暴れてりゃいいってもんじゃないんです。では席を立って、と。


「……じゃあ行きますか」

「そうだな、取り合えず表に出たら宮殿の適当な屋根の上に転移でいいかね?」

 おいこら真龍、超級召喚師として限定じゃないのか!移動手段が乏しいあたしとしては助かるけどさ!!


(女神に頼まれたという実績が付いたからな、問題ない)

 アッハイ、ランディさんもあたしと同様で大義名分が必要だったというわけね。そして女神様はそれをちゃんと察して『お願い』してくれたと。おっけーおっけー。


「じゃあそれでお願いします。兵は宮殿からの人員避難と離宮方面の警護に当てるのが無難だと思います」

 そう言い残して部屋をあとにする。流石に一般兵士に大型の魔物は荷が重いはずだ。魔獣でしかないヒポグリフにすら、手も足も……いや、あれは明確に神殿の神官服着た人質がいたせいもあるから、過小評価はしてはいけないわね。


《オラルディ国は魔物の発生は元々余り多くないのです。ミオラ・ルディア女神様や、辺境伯家などがそちらを優先的に対処しているお陰ではあるのですが、その結果国軍がやや弱体化、形式化しているきらいがある、と、どこかのレポートにありました。貴方の記憶にないならメリサイトの情報ですけれど……》

 あー儀礼的軍隊になっちゃってるのか。それならなおさら避難誘導を優先して貰わないとね。


 中庭に出たところで、ランディさんがあたしの腰を捕えて屋根の上に飛びあがる。人型でも真龍の身体能力は人間とは大分違う……いや、サーシャちゃんとか龍の王族御一行も、このくらいは間違いなく普通にやりますけどね、どちらも普通じゃないからね!なおカスミさんは普通にぴょん、とついてきた。流石シゴデキ舞狐。

 そしてさっくりランディさんの転移で運ばれるあたしとカスミさん。そうしないと場所の都合で、宮殿がよく見えないので致し方ないのです。ポイント設定してないと目視でしか飛べないそうだからね、しょうがないのよ。


「これはまた、なかなか」

 ランディさんが眉を寄せて、不快そうに意味不明な感想を述べる。


 王宮内の宮殿本殿は、緑青色の屋根にクリーム色の壁の三階建てくらいの、中庭を囲んだ構造の四角い本宮に、同じく三階建ての後宮と公式行事用の礼拝堂が奥側両端にそれぞれ斜めに接続されていて、それらよりも手前の角には、前庭の庭園を囲む両翼とでもいうように、二階建ての緩い半円形の長い建物が繋がっている、といった構造だ。この両翼の建物は、庭園中央にある舞台を囲む形になっていて、観劇の為の建物だそうだ。なるほど、流石演劇の国、といったところね。


 その本殿の奥側の一棟の中央部分が完全に崩壊していて、うん、既に結構な数の死者が出てしまっている。がれきに潰された人たちと、現れた魔物に食われた者達だ。恐らく後者のその大半が警護の兵士と獄吏、前者は官吏たちや女官だろうか。

 その崩れたがれきの真ん中で、今も正に兵士を貪り食っているのは……


 皺くちゃの、巨大な、額が三階の床の辺りにある老人の顔。うん、さっき肖像画でもっと若くて嘘くさい顔で描かれているの、見たね。この老人は、ロベール四世だ。頭の、灰色とも紫ともつかない色の髪のあっちこっちからヒトの白い――死体の手足が飛び出している、人食い魔物らしい姿になっているけどね。ただ、ロベール四世って流行り病で急死したから、年齢はこんな老人って程ではなかったと思うんだけど。いや、魔物化した時点で何があってもおかしくはないんだっけか。

 顎の周囲には髭ならぬ無数の濃灰色の骨ばった手。これを触手として伸び縮みさせては、周囲の逃げ遅れた、もしくは無謀にも挑もうとした人間を捕えて口に運んでいる。口の中には歯がなく、無数の舌がこれも触手のように蠢いて、犠牲者を絡め取り、引きちぎっている。結果、食べ方が、大変、汚い。いやいや、そういうレベルの話ではない。ちょっと現実逃避したな、今。


 そして後頭部部分には、もう一つ、こちらは老人の三分の一くらいの大きさの顔。これは、多分アミーユ王女なんだと思うけど……ぼんやりと白く濁った眼で虚空を見、口をぽかんと開けているだけだ。普通に死んでる感じがするね?うん、判定、アミーユ王女の魂、とっくにここにはない。魔物化したのは、あくまでもロベール四世の魂のほうだけだ。魔物の核になっている身体自体はアミーユ王女のものっぽいんだけどねえ……どうしてこうなった?

 巨大な顔に反比例して、その身体の方は細くてなんだか頼りない。それでも胴部分は建物一階層分くらいの長さはあるけど。腕や足のあったはずの辺りから、黒い、伸び縮みする骨のようなものが何本も飛び出して、その巨大な顔を支えている構図なんだけれど、蜘蛛、いや違うな、これあれだ、バクテリオファージ。この菌類やウイルス類も割と少ない世界にそんなのがいるかどうかは判んないけど。


 ……っていうか、足元を支えている辺りの何かを凝視しようとすると、なんかそこだけ視界が霞むんですが。なんだこれ?


《……乙女的に見ない方がいいものが付いているというので規制中です》

 シエラも指示されてやっているだけ、ってつまりこれボカシ入ってるとか言う奴?十八禁映像なん?いや映像じゃなくてリアルの素の視界のはずなんだけど!


「あまり年若い女性が凝視するようなものではない、さっさと討伐してしまう事だね」

 ランディさんにまで釘を刺されました。そっか、つまり、下半身、無駄にご立派様か……いや、縦横比率的に、太くは、ないな?まあいいや所詮魔物だ。見えもしない形状なんてどうでもいいわ。


「いや、なんか視界がボケて良く見えないんですよ下の方。いちおう趣旨は把握しましたが」

 とはいえ見えていないという主張はしておく。経験がないってだけで、ナカノヒトの年齢的には普通に知ってておかしくないんですけどね、一応ね。実年齢の事思い出したの自体が正直久し振りだけど。


 ロベール四世は、まだこちらには気付いていない。そして、後宮側からその背後を狙ってか駆け寄っていく、恐らくは現王レナール三世の姿にも、気が付いてはいないようだ。あちらもこっちの方は見向きもしないから、気が付いてはいないはず。


 あー、コルネリオ元王子の魂っぽいのも一緒にいるな、でもなんだこの光?死者がこんな光属性持ってるとか、アリなの?

こんなこと書いてるけど作者別にメガテニストではないんですよ。

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